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2023年春 ウズベキスタン・タジキスタン⑤ ペンジケント→フジャンド

タジキスタンに入りペンジケントで涼しい風に吹かれつつのんびりしていると、天気も情勢も若干あやしげになってきた旅。この日はタジキスタン国内の山を越えて北部の大都市フジャンドへ向かいます。以前の旅行記は下記から。

シェアタクシーで川をさかのぼる(Day 6 AM)

次の朝。相変わらずのすがすがしい風です。朝ごはんも優雅に用意してもらい中庭でいただいていると、ここでも上の子が小学校へ行くところでした。ここでは小学校からきちんと制服みたいです。

朝9時前、宿の方に昨日お願いしていたシェアタクシーが来ました。(シェアタクシー乗り場は昨日行ったバザールのあたりにあるようですが、「連絡して呼んでおきましょうか?」と宿の人に行ってもらったのでお言葉に甘えてお願いしていました)7人乗りの車に先客は2人、この先も町中で数名人を拾って完了。同行者はお母さんと息子・おじいさん・おばちゃん姉妹・若い兄ちゃん・そして運転手の7+1名。スムーズに9時半には町を後にします。

ペンジケントを出ると川幅が狭くなってくる

ここから先の道は、昨日もさかのぼってきたザラフシャン川を東へ遡上していきます。ペンジケントは扇状地の頭。なので、この先はどんどん渓谷のような道になってきます。車窓右手の山々もどんどん高くなってきて、残雪の量も増えてきます。春五月、雪の残り方も、川を流れる雪解け水の勢いも、東北の山あいと同じようなリズムを感じます。

アイニのガソリンスタンド

一時間ちょっと走るとアイニ到着。首都ドゥシャンベからの国道との分岐点に到着しました。交差点のガソリンスタンドで小休止。運転手さんといろいろお話をします。運転手をされてるということで車周りの話題から。車がスタッドレスタイヤだったので、そのあたりから話を振ってみました。「日本も雪が降るのか?」とかいろいろ。なんとなくですが、冬に雪の降る地域の人は「北から目線」が発動するようです。親近感。そして「この季節が一番いい!雪もないし、峠も凍らないし」と、しみじみ同じ季節感で生活していることを感じました。

トンネルを抜けたら(Day 6 PM)

どんどん高度を上げていく道

「この先の道は山をどんどん登っていくので景色きれいだぞ!」と教えてもらい、給油休憩から出発。ヘアピンカーブの連続でどんどん高度を上げていきます。休憩をしたアイニは標高1500mほどですが、みるみる標高を上げ、標高およそ3000mのトンネルに向かいます。カーブを越え、標高を上げていく道中には、ゆでとうもろこしを売ってる屋台が出てたり、なんとなく北海道の石北峠感がありました。キルギスのビシュケクからイシククル湖畔へ抜ける道のようなしっかりした道。片側一車線の国道ですが、タジキスタンの一大幹線道路です。

そして道の横にも残雪が出てくるとついにトンネル。長ーい、照明のない真っ暗なトンネルでした。これを抜けると北側はペンジケント側よりなだらかな山あい。景色も一気に変わりました。そしてここから数10kmおきに料金所が現れるようになり、運転手さんはSUICA的なカードを毎回タッチしていました。

そして急にWFP(国連世界食糧計画)の車を多く見かけるようにもなりました。そういえば昨夜のペンジケントの宿のWifiにも「アメリカの援助で整備しました」というステッカーが貼ってありました。こういう「国際援助」の香りはウズベキスタンでは見なかった光景。アフガニスタンと長い国境を接し、ソ連崩壊後の歩みも一筋縄ではなかったタジキスタン。この国の安定が広い視野でも求められていることを感じました。

いくつか料金所を越えていくと、涼しかった風がどんどん熱気を帯びてきます。標高が下がってフジャンドへ近づいてきました。もう少し走って12時半すぎ、目的地のフジャンド中心部へ到着。タクシー代の150TJSを渡して運転手さんと別れます。

スマホ修理から地下バーまで(Day 6 PM)

フジャンドの宿は中心部の市場、パンシャンべ(木曜日)市場のすぐ隣。相変わらず「Booking.comあるある=場所が見つからない」に苦戦しつつ、周りの人にききつつ到着しました。とりあえず荷物を置かせてもらおうと宿の奥さんとお話。英語が得意ではないらしく、それにしても何かすれ違いが目立ちます。直前に予定変更してたのでなんかあるかなーと危惧していたところ。今朝に「OK」とメッセージが返ってきてたけれど「なんかおかしいな??」となりつつ。結局のところ予約した「シングルは空いてないので、ドミを使ってほしい。ただ、予約がないので一部屋占有してよい」とのこと。まぁ、納得してチェックイン。

予定を1泊に詰めたので、午後いっぱいでフジャンドの見どころを回ることに。とはいえ、パンシャンべ市場とシルダリア川の2か所ぐらいなのでゆっくりと回ります。

パンシャンべ市場の正面

パンシャンべ市場は広々としたバザール。クラシカルな食料品、日用品に加えて現代的な品ぞろえも豊富でした。とくにスマホまわり。ケースに始まり充電器、自撮り棒、自撮り用ライトなどamazonもびっくりの品ぞろえ。さらにスマホ修理屋さんも複数。はんだごて+実体顕微鏡の最強装備で基板を修理する手つきは素晴らしいものでした。技量半端ないって。表面実装のチップ抵抗、めっちゃ簡単にはんだ付けするやん。そんなんできひんやん、普通。

そして、webで見つけていた情報をもとに、ワルいおやじのたまり場を探します。市場正面を前に見て左手(北側)のシャシリク屋街の奥にひっそりと、地下への入り口がありました。スムーズに吸い込まれていきます。中はコンクリ打ちっぱなしの空間にベンチと机。奥にはサーバー。はい、生一丁(6TJS)。酸味が少し強めの一杯を楽しみました。

地下世界へのいざない。Beer Barと書いてる

その後はしばらく宿で休憩。ニュースを見ていると、例のプリゴジンが激怒している動画が回ってきました。数日前のクレムリン攻撃しかり、町中に飾られた5月9日対独戦勝記念日のパネルしかり。いよいよ来週に控えた5月9日に向けた動きが活発化してきていて、注視のレベルを上げる必要を認識しました。

宿での夕方「"今は”いい時ではないけどね」(Day 6 PM)

夕方になって夕食をかねてシルダリアの河畔にお散歩。ここフジャンドはフェルガナ盆地の入り口にあって、盆地から流れ出るシルダリア川が町の主軸になっています。河畔公園に18時過ぎに行くと、ほとんど人がいません。川を渡るゴンドラも回っておらず。暇そうに店番してたアイス屋台の店員さんに聞いてみると「あと1時間ぐらいしたらゴンドラ回るし、人も来ると思うよ」的な感じだったので、先に夕食をとってから再訪。
川を渡るゴンドラは、夕日の時間にばっちりでよい景色でした。ですが、さすが風の街フジャンド。吹雪のスキー場ばりに揺れました。復路ゴンドラは止めにして、その辺を走ってたミニバス(マルシュルートカ)でパンシャンべ市場に戻りました。

ゴンドラから見るシルダリアの夕焼け

宿に帰ってのんびりキッチンの談話スペースで過ごしていると個室に宿泊している男性(20代後半か?)が買ってきたサクランボを洗い始めたのでおしゃべり。英語が堪能な方で、今回の旅の概要などいろいろと情報交換しました。曰く、もともとはロシア出身でロシア国内に住んでいたのだけれど、"最近になって"カザフスタンのアクタウ(カスピ海沿いのカザフ西部の都市・ロシアのアストラハンからも近い)に住んでいるとのこと。当初は鉄道でアクタウから東へ東へ向かってぶらり途中下車の旅行するつもりだったが、途中の駅から列車に乗るのが難しいことが判明し、「結局フライトを使う旅になっちゃった、残念」と悔しがってました。ノリが私に似てて楽しい時間でした。
一方で「ソロ旅人らしからぬ」雰囲気をまとっている方でもありました。流暢できれいな英語を操り、いわゆる「バックパッカートーク」でよくある、他の国の話にはならず。実はこういう雰囲気の方、ブハラの宿でも出会っていました。ブハラ宿の朝食をご一緒した方なのですが、年齢層も似た感じ、出身はロシア・シベリアのトムスクながら、"今は"ニューヨーク在住。何となく国際情勢が透けて見えてきます。洗ったサクランボをいくつか摘まませてもらいつつ話をしていると「おっと、そろそろZoom会議の時間なので失礼しますね」と別れる。

「ロシア、今まで行ったことないんですよね。"いつかは"行ってみたいです」
ー「そうだね、"今は”いい時ではないけどね。」

サクランボをつまみつつ、どこか寂しそうな表情の彼とかわしたやり取りの余韻に浸りながら、この日は終わっていきました。

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