見出し画像

SS『入試会場は嘲笑う』

【強化お題】

1周目×月曜日『初恋×嘘に決まってる』

静まっていた空気が少しピリついた。早くなにか話さなければ。議題は『高校生活に恋愛は必要か』
こんなものが大学入試のディスカッションの議題になるなんて誰が予想していただろう。こういったテストでは社会問題のたぐいが出るのではなかったか。温暖化やらゴミ問題やら。それらへの対策は多少していたというのに、恋愛なんて自由じゃないか。
「高校生の恋愛なんて嘘に決まってます」
ハッとして声の主を探す。停滞していた時間が急に動きだした。
「ので、そもそも高校生活に恋愛というものは存在していません」
彼女は、続けて前を向いて言う。自分の初恋を馬鹿にされた気がした。いや、馬鹿にされたのだろう。偏った意見である。偏った思考であるが、誰もそれを否定できなかった。今きっとみんな心の中でたくさんの言葉が溢れ出て消えていっている。そんな中で彼女はただ一人言葉を紡ぎ、口から出した。とても厳しく激しい意見であった。けれど、確かに自分の初恋は嘘だったのかもしれない。そして、今心の中に浮かび上がった気持ちも嘘なのだろうか。それでもなにか言葉にしないと。
「嘘だったとしてもいいじゃないか」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?