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『TENET』ネタバレなしで率直にレビュー

 9月18日(金)日本公開のクリストファー・ノーラン監督最新作『TENET』を見てきた。コロナが拡大してから初めての試写。2席空けという贅沢な空間だった。

 公式サイトから引用したあらすじは、以下の通り。

主人公のミッションは、人類がずっと信じ続けてきた、〈時間のルール〉から脱出すること。時間に隠された衝撃の秘密を解き明かし、第三次世界大戦を止めるのだ。ミッションのキーワードは〈 TENETテネット〉。 「その言葉の使い方次第で、未来が決まる」。突然、巨大な任務に巻き込まれた名もなき男は、任務を遂行する事が出来るのか!? 7か国を舞台にIMAX®カメラで撮影、驚異のスケールで放つ極限のタイムサスペンス超大作!(公式サイトより)

①ドッと疲れた

 上映時間は、150分。『インターステラー』が169分、『インセプション』が148分、『ダークナイト』が152分なので、ノーラン作品では平均的な長さだ。

 しかし、これまでとは訳が違うほど疲れる。凄まじい映像と音を提供してくるノーラン。『ダンケルク』が、戦場の煙の香りすら漂ってきそうなほどだったのは記憶に新しく、これまでにも緻密な演出で、観客を臨場感のある場所に誘ってきた。

 後で書くが、かなり難解な展開の中で、目の前に広がる映像のみならず、音楽・効果音・環境音が、いわゆる〈時間のルール〉を見極める際の手掛かりになる。

 あっという間に進むストーリーに置いてけぼりにされないためには、1秒たりとも目が離せないだけでなく、1秒たりとも音を聞き漏らすことはできなかった。『TENET』にしがみつくのは、まるで高速で走る電車の屋根につかまるかのような感覚で、椅子に座っているだけなのに、かなりの体力を消費する。絶えぬ銃撃戦もあり、150分ノンストップで交感神経がビンビンだった。聴覚過敏などがある人は、ちょっとオススメできない。それくらいド迫力だ。

②初見じゃ、良くて4割くらいしかわからない

 Netflix難解ドラマこと『ダーク』で、SF耐性を培ってきたから、かなり自信満々で挑んだんだが、4割くらいしか説明ができない。英語を読めるけど話せないのような感覚のごとく、「どういうことなの?」と聞かれたときに言葉に詰まる。

 『TENET』は、とにかくジョン・デヴィッド・ワシントン演じる"主人公"に課せられるミッションが多い。1個終わったら、即移動。まるで、ゲームのシナリオのようだ。

 しかも、次の移動が秒。ご丁寧に移動を説明する飛行機や電車のインサートなんてない。セリフを聞き逃すと、いつのまに国変わってたの!?ということがあるだろう。ただ、映画の扱う物理的な概念はよそに、ストーリーは意外と単純で、勘のいい人は、早々に展開に気づくはず。

③冷静になってから伏線に鳥肌

 鑑賞直後は、『TENET』を無事に見られた興奮でいっぱいいっぱいだが、冷静になって噛み締めていくと、その伏線に色々感心させられる。とくにタイトルは、鳥肌モノだ。

 “TENET”は、教義や信条を意味する言葉。しかし、鑑賞後は、もっと単純なことに気づく。小学生でもわかる言葉だ。このシンメトリー、感動せざるを得ない。

 初回を終えて感じたのは、「もう1回、いや、2回は行こう」ということ。ノーランの功績は、映画的挑戦は言うまでもないが、「ノーランをわかる俺」に価値を植え付けたことにもある気がする。相変わらず、上流階級大好きおじさんで、女性の撮り方のドライっぷりは健在だったなあ~。

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