「組織における強み活用」の5ステップ ~25の厳選論文まとめ~
こんにちは。紀藤です。本記事のお越しいただき、ありがとうございます。
今回の記事は、『組織における強みの活用』の論文のご紹介です。
この論文は
2020年時点での598の強み論文を徹底的に調べた
定量調査・査読ジャーナル・英語などの条件をクリアした25論文を選出
それらの内容から「強み活用の成果と介入方法」をまとめた
レビュー論文となります。
本記事では、論文の「強み活用の介入方法」のまとめについて記載をしています。(「強み活用の成果」についてはこちら)
記事の前半は「組織における強み活用の介入7パターン」、後半は「組織における強み活用の5ステップ」をご紹介いたします。それでは早速みてまいりましょう!
組織における強み開発の介入7パターン
本論文では、主要な強み開発の介入パターンを紹介しています。具体的には、以下の7つが挙げられていました。
(1)『if-thenプランニング』
◯論文:Your strengths are calling: Preliminary results of a web-based strengths intervention to increase calling(Harzer & Ruch, 2016)
◯介入方法のまとめ:
1,VIAサーベイを活用し、自分の4つの高い性格的強みを特定した。
2,日々の活動でどのように使用しているかを振り返った。
3,その後、4週間にわたり、4つの主な強みを「職場で新たな別の方法で使う」事を求めた。
4,「if-then(もし◯◯だったら、XXする)計画」を立てた
◯結果
・1ヶ月後には、天職と生活満足度の向上が見られた
(2)『職場で自分の強みを新しい方法で使う』
◯論文:Harmonious passion as an explanation of the relation between signature strengths' use and well-being at work: Test of an intervention program(Forestら, 2012)
◯介入方法のまとめ:
1,VIAサーベイを活用し、自分の主な性格の強みを特定した。
2,「職場で最高の状態にあるときの自分自身」を記述してもらった。
3,その後2週間にわたって、「職場で自分の強みを2つ新しい方法で使用する」事を求めた
4,2週間後、参加者は「どの強みを使ったのか?」「現在の仕事でその強みを使うことがもたらすポジティブな結果は?」について考えた
◯結果
・2ヶ月後の結果で、強みの使い方の改善がされた
・「幸福感」や「調和のとれた情熱」が高まった
(3)『強みの特定・開発・活用』
◯論文:Effects of a strengths intervention on general and work-related well-being: The mediating role of positive affect(Meyers & Van Woerkom, 2017)
◯介入方法まとめ
1,参加者に進め方(「強みの特定」→「強みの開発」→「強みの活用」の流れ)を説明した
2,特別に開発された「強みカード」と「質問」を使って、3つの「強みの特定」をした
3,専門家による、「強みの開発」と「強みの活用」のトレーニングに参加した
4,参加者同士でパートナーを選び、強みの活用と開発に関して、進捗状況をチェックしあった
◯結果
・参加者のポジティブ感情が短期的に上昇した(介入後1ヶ月でベースラインに戻った)
・心理的資本(自己効力感、楽観性、希望、回復力)も短期的に上昇した。
1ヶ月のフォローアップ期間中も維持された
★こちらの論文の詳細はこちら↓↓★
(4)『発見・統合・行動アプローチ』
◯論文:Facilitating well-being and performance through the development of strengths at work: Results from an intervention program(Dubreuilら, 2016)
◯介入方法まとめ
1,発見:VIAサーベイを使って自分の強みを確認(=発見)した
2,統合:3時間の対面トレーニングを行い、「自分の強み」が「過去・現在の成功(=統合)」にどのように貢献しているかを話し合った
3,行動:具体的な質問を通じて「現在の仕事において自分の強みをよりよく活用するにはどうしたらよいか?」を仲間と共に計画した(=行動)
◯結果
・介入3か月後、ベースラインと比較して 強みの活用が有意に増加したことを示した。
(5)『強み開発とジョブクラフティング』と個人の成長
◯論文:Strengthening personal growth: The effects of a strengths intervention on personal growth initiative(Van Woerkom & Meyers, 2019)
◯介入方法まとめ
1,事前:ストレングス・ファインダーのアセスメントを実施
2,1回目ワークショップ:個人の強みを発見し、職場での強みの活用に関する計画を立てた
3,2回目ワークショップ:4週間後に開催。最初の取り組みのフォローアップと発展を目的に行った。内容は、ジョブ・クラフティングの概念の紹介→ 課題分析演習→ 仕事の一部を自分の強みに合わせるプランを立てるものだった
◯結果
・一般的自己効力感に直接的な効果があり、個人の成長意欲に間接的な効果をもたらした
・なお、特に一般的自己効力感が低いか中程度の参加者が、介入から最も恩恵を受けた。
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(6)強み開発の『リフレクテッドベストセルフ』
◯論文:Composing the reflected best-self portrait: Building pathways for becoming extraordinary in work organizations(Robertsら, 2005a)
◯介入方法まとめ
1,同僚からフィードバックをもらい、強みを特定、開発する
2,「自分が最高の状態にあるときの自分」を記述し、分析する
3,仕事上の目標に関連して、強みを最大限に活用する行動計画を策定する。
※深い内省を行う時間や、個人コミットメントが高い場合に有効な施策であるとされる
◯結果:
本論文には記述なし
(7)『リーダーの強みを発展させるための介入ステップ』
◯論文:Average to A+. Coventry: CAPP Press.(Linley, P. A. ,2008).
◯介入ステップ
1,自分の強みと弱みを知り、それを受け入れること
2,チームメンバーの強みと弱みをしり、どのようなものであれ尊重すること
3,最も適切な強みを持つ人に仕事を割り当てること
4,ポジティブなフィードバックを与えること
5,受容と進歩を可能にするために、純粋かつ適切に弱みを開示すること
6,「黄金平均」の原則(適切な強みを、適切な量だけ発揮すること)
7,「組織風土エンジニア」としての役割を認識すること(リーダーは組織文化を作る)
組織における強み開発の5ステップ
さて、上記の7つの介入ステップを含めて、複数の論文で語られる
「組織における強み開発の介入方法」をまとめてみると、いくつかのパターンが見えてくるようです。
それを本論文では、『強み開発の5ステップの統合モデル』として提案できそうだ、といいます。この内容がわかりやすく、私自身、強み介入に携わる実践者として見ても整合性が取れた実用性のあるモデルと感じたのでした。
その5すテップは、
1 準備とコミットメント
2 識別
3 統合
4 行動
5 評価
の5つです。
以下、この5ステップが具体的にどのようなものかをまとめてみます。
ステップ1:準備とコミットメント
*「強みのアプローチと介入方法について参加者に教育する」こと。
・アプローチの価値を理解し、プロセスに関わるステップを理解し、介入に積極的に関わってもらうために極めて重要である。(Clifton & Hartner, 2003)
・このステップにより、肯定的な情報よりも否定的な情報に注意を向ける人間な自然な傾向である「否定性バイアス」を軽減することができる。
ステップ2:識別
*「参加者の強みを特定する」こと。
・強みの特定方法としては、以下の手段がある
a, 心理測定のツール活用(VIA、ストレングス・ファインダー、Strength Profile)
b, 自分自身を観察する(パフォーマンス・エネルギー・自分らしさ、フローに関わる活動を特定する)
c, フィードバックを収集する(同僚や上司などから自分の強みについてフィードバックをもらう)
・異なる手法を組み合わせることで、個人の強みのより正確な全体像を得ることができる。(Dubreuli and Forest, 2017)
ステップ3:統合
*「個人のアイデンティティに強みを統合する」こと。
・このステップにより、個人が新しい情報(強み)を把握し、吸収し、自分の行動の理由をよりよく理解することができる。
・具体的には、本人が強みをより深く認識できるようにするために、「強みを過去の成功体験と関連付ける具体的な質問」を考えることである。
ステップ4:行動
*「強みを活用するための”具体的な変化”を決定する」こと。「本人が意図した”変革を実行”する」こと。
・理論を行動に移すためには、「強みの活用」を具体的に個人、グループ、組織の目標は取り組みに投資する必要がある。
・そのためには、上司、同僚、コーチがフォローし、サポートして提供して進捗を促す必要がある。(Linley, 2008)
ステップ5:評価
*進捗の測り方は「本人の主観」(強みの認識と活用、目標達成、幸福感など)、あるいは「客観的な指標」(介入前に測定した、仕事への満足感、モチベーション、仕事への取り組み、職務遂行能力)によって決めることができる。
・介入の影響を測定することで、手順の有効性を確認し、再調整を行うことができる。
まとめ(論文の限界と個人的感想)
最後に、本論文で紹介されていた論文の限界の紹介と、個人的な感想についてお伝えしたいと思います。まず、「論文の限界」として、以下の3つが挙げられていました。
強みの開発は最近のアプローチであるため、明確な結論を提示する前に、さらなる理論と研究の必要性がある。
ほとんどの研究で自己評価尺度を使用している。また、自己申告による業務遂行能力を用いているため、結果も社会的望ましさのバイアスも受けやすい。
強みの分類手段の妥当性に関するエビデンスが不足している。完全な因子分析の結果が得られているのは、VIAの1つだけである。
とのこと。
やはり、まだまだ研究の妥当性は道半ばのようです。自己評価だけではなく、他者から見た強みってなんだ?というのも、まさにその通りですし、それらの結果も含めて、より探求する必要がありそうです。
また、レビュー論文を読むと、すでに読んだ論文とそうではないものも明確にわかるので、100本ノックの道半ば感も感じた次第。未知の論文、もっとありそうです。