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「組織における強み活用」の成果の一覧 ~25の厳選論文まとめ~

こんにちは。紀藤です。本記事にお越しくださり、ありがとうございます。
さて、本日の論文のテーマは、2020年発表の『職場における強みの活用』についてのレビュー論文のポイントを解説いたします。

この論文では、強み活用における合計598の論文から選抜した論文25本を読み解き、強み活用の結果や、介入手法をまとめているという、なんともありがたい内容となっております。ということで、早速みてまいりましょう!

<ご紹介の論文>
『職場における強みの活用:文献レビュー』第5章 強み活用の結果
Miglianico, Marine, Philippe Dubreuil, Paule Miquelon, Arnold B. Bakker, and Charles Martin-Krumm. 2020. “Strength Use in the Workplace: A Literature Review.” Journal of Happiness Studies 21 (2): 737–64.


本論文の目的

「職場における強み活用」は、2010年頃から多くの研究がされるようになりました。その中で、本論文の目的は、以下のように掲げられていました。

【本論文の目的】
1)「組織における強み活用」の成果の要約を提供すること
2)「職場における強み開発」に関する文献で言われる主な介入マップを提示し、統合モデルを提案すること

とのこと。要は、多くの文献で言われる「強み活用の成果」と「強み活用の介入手法」をまとめる、ということですね。

そしてこの記事では、1)「組織における強み活用」の成果の要約を提供することについて論文のポイントをお伝えします。

25の論文はこうやって選びました

まず、この論文では”システマティックレビュー”なる、過去の研究をレビューするプロセスを用いて調査しました。
利用可能な科学文献を調べ、「強み・仕事・組織・職場」などの検索キーワードで洗い出したところ、合計598の論文が見つかりました。
その中で、

a)査読付きジャーナルに掲載されたもの
b)英語で書かれたもの
c)ポジティブ心理学の分野が確立された1998年以降に発表されたもの
d)定量的アプローチを用いたもの


の基準を満たしたものを対象論文とし、「25の論文」が選出されたのでした。

組織における「強み活用」の成果一覧

まず、全体的な成果として言えることは「強みの活用と開発は仕事のパフォーマンスと職務満足度と正の相関がある」ことでした。

そして25の論文からみる「組織における強み活用の全体像」としては、以下のようにまとめられました。

具体的な成果と対応する論文

(1) より積極的になる
・従業員が職場で自分の強みを特定し、利用し、開発すると、業績が向上し、職場でより積極的になる傾向があることが示されている(Cable et al.2013; Dubreuil et al.2014; Harzer and Ruch 2014; Van Wingerden and Van der Stoep 2018; Van Woerkom et al.2015)

(2) より多くの「援助行動」を示す
・より多くの援助行動を示し、より少ない望ましくない行動を示す(Kong and Ho 2016; Lavy and Littman-Ovadia 2017; Littman-Ovadia et al. 2017)

(3)「創造的な解決策」を見つけるようになる
・問題に対するより創造的な解決策を見つける。これはポジティブな感情やエンゲージメントによって媒介されることが多いことが示唆されている(Lee et al, Lavy and Littman-Ovadia 2017; Littman-Ovadia et al.)

(4)「仕事の満足度」と「ウェルビーイングの増加」と関連する
・強みの使用と開発は、仕事における満足度とウェルビーイングの増加と関連する傾向があることを示している。
・強みの使用は、一般的に仕事における意味の 感覚と関連している(Harzer and Ruch 2013; Littman-Ovadia et al. 2017; Littman-Ovadia and Steger 2010)

(5)強みは「仕事を天職」として認識させる
・強みの識別と開発が仕事を天職として認識することを促す可能性を示唆する研究もある(Harzer and Ruch 2016)。
・職場における強みの使用は、一般的に満足感、喜び、コミットメント(Harzer and Ruch 2013 )などのポジティブな経験や、 喜び、誇り、熱意( Cable et al. 2015; Littman-Ovadia et al. 2017)などのポジティブな感情に関連しており、ひいては幸福感にポ ジティブな影響を与える可能性がある(Meyers and Van Woerkom 2017)。

(6)「ワークエンゲージメント」を高める
・職場における強みの特定、使用、開発は、ワークエンゲージメントを高める(Cable et al. 2015; Littman-Ovadia et al. 2017; Van Wingerden and Van der Stoep 2018; Van Woerkom et al. 2015)

(7)「強みの活用に対する組織的支援(POSS)」は成果に影響を及ぼす
・強みの活用に対する組織的支援が、成果に重要な影響を及ぼすレビューで示された。
・強みに基づく心理的風土は、特にマネジャーが従業員の自律性を促進する場合、個人の強みに依存する(Kong and Ho 2016)
・強みの活用に対する 組織の支援は、役割内および役割外のパフォーマンスと正の相関があり(Van Woerkom and Meyers 2015; Van Woerkom et al. 2016b)、特に従業員が高負荷や感情的な要求に直面している場合には、欠勤率の低下とも関連している(Van Woerkom et al.)

8)一方、「強みの過度な使用と過小使用は逆効果」である
・強みの過度な活用や過小な活用は逆効果であり、パフォーマンスに悪影響を及ぼすようである(Harzer and Ruch 2012; Kaiser and Overfield 2011)。


25の論文の一覧です。小さすぎで豆粒みたいですが、、、

まとめ

さて、今日の論文は「組織における強みの活用」について、その論文と成果について、まとめてみました。

強みの活用の25の論文も、北米、北欧、中東、アジアなど様々な文化圏で研究されているようで、その調査された国もアメリカ、オランダ、ドイツ、南アフリカ、カナダ、ベルギー、イスラエル、インドと多数に渡っています。

そして、文化圏を超えて強みを活用することが

・より「積極的」になる
・より「支援的」になる
・より「創造的」になる
・より「仕事の満足度」が高まる
・より「ワークエンゲージメント」が高まる
・より「仕事を天職」としてみなせる

とポジティブな効果が数多く示されていることから、「強みの活用」は一つの科学として認められてきているように思いました。

ポジティブな介入=自己啓発とみなされがちで、明確な効果を示せないように思われることが悔しく思っていました。「強みって自己啓発でしょ?」と流されないように、こうしたエビデンスを元に語れるということをしっかりと伝えていきたいと思います。

より多くの人が強みを活用できるよう、私も微力ながら発信していきたい、と思いました。


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