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おすすめの一冊『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか “ゆるい職場”時代の人材育成の科学』
こんにちは。紀藤です。本記事にお越しくださり、ありがとうございます。
本日は、最近読んだ本の中から「おすすめの一冊」をご紹介させていただきます。今回ご紹介の一冊はこちらです。↓↓
<おすすめの一冊>
『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか “ゆるい職場”時代の人材育成の科学』
古屋星斗 (著)(日本経済新聞出版)
https://amzn.asia/d/ceWgTFO
若手を育てるのが難しくなっている?
「最近の若手はわからない」とか「最近の若手は◯◯型」などなど。
世代間の考え方の違い、時代に紐づく労働市場の変化などを背景としつつ、いつの時代も聞くような既視感を覚えるのは、それくらい職場でのコミュニケーションは、多くの人にとって普遍的な課題である、ということなのでしょう。
ただ、確かにここ最近の、今の状況を見てみると、特に近年の「若手を育てるのが難しい」という変化には共感できるものもあります。
たとえば、ハラスメントやブラック企業というキーワード。若手にどこまで要求してよいかわからない、どこまで耳の痛いことを伝えて良いかわからない、という話。
あるいは働き方改革で残業が難しい、またリモートワークが常態化する中で、面と向かって育成する機会が少なくなっている、という働く環境の変化。
あるいは、100年時代やキャリア自律という言葉が浸透して、「会社に自分の人生を預けることは難しい」と考える若手が増えてきており、かつ採用市場も売り手市場となっており、辞めやすくなっている、というのもありそうです。
いずれにせよ、本書ではそれらの考えられる要因はあるとして、「実際に、若手を育てるのは難しくなっているのか?」だとすると「今の若手と呼ばれる人(20代)の意識はどのようなものなのか?」は気になるところです。
そんな中、本書では、それらの疑問についデータ収集&分析を行い、現状解き明かそうとしています。具体的には、2022年リクルートワークス研究者によって実施された「大企業に務める29歳以下の若者への仕事・キャリアについてのアンケート調査」合計2985人のデータから解き明かしていったものとなります。
もちろん、このデータだけで「若手はこうである」と断ずることはできません。しかしながら、大いに参考になりそうです。ということで、早速見てまいりましょう!
20代の若手の特徴
本書でば、多くのデータが紹介されています。その中で、それらのデータから伝えられる本書の主張について、興味深く感じたものを一部紹介させていただきます。(ちなみに、ここでいう若手は「20代」と認識ください)
1)Z世代の価値観は「二極化」が著しい
今の若手は、これまでの若手と違う価値観を持っているのわけではなく、データからみた結果だと「二極化している」というのがキーワードのようです。
アンケート調査では若手に対して、「仕事に関する5つの質問」をしたのでした。例えば、今の会社で長く勤めたいか ↔ 転職したいか、ゼネラリストか ↔ スペシャリストか、などそれぞれ傾向を聞きました。すると、わかったことは、「他世代に比べて、回答が真ん中によることが少なく、どちらかによっている傾向が高い」ことがわかりました。
<仕事に関する5つの質問>
(※「現在のあなたのお考えについて伺います。次の質問について、どちらの考えに近いと感じますか」と聞いた)
1,【A】現在の会社で長く勤めたい ↔【B】魅力的な会社があれば転職したい
2,【A】会社でいろいろな仕事をしたい ↔【B】会社で専門分野をつくりたい
3,【A】家族・配偶者とはしっかり相談してキャリアを決めている ↔ 【B】家族・配偶者とはほとんど相談せずキャリアを決めている
4,【A】忙しくても給料が良い仕事がしたい ↔ 【B】給料は低くとも落ち着いて働きたい
5,【A】仕事をメインに生活したい ↔ 【B】プライベートを大事に生活したい
唯一偏りがあるプライベートを重視したい、は傾向が出ていますが、これは30代も同じであり、おそらく上司・先輩世代も同じような傾向があるようです。(24時間働けますかの的価値観はどの世代でも減っているかも)
いずれにせよ、上記以外の質問でも中間回答は少なくなっており、「今の世代は〇〇である」と傾向を括れなくなっているのが、今の世代の特徴と言えそうです。
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2)「人からどう見られるか」という視点を強く持つ
次の特徴が30.40代と比べて「周りからどう思われるか?」というスコアが高くなっていることが現在の世代の特徴のようでした。
たとえば、「自分が行動するか否かを決める際、友人にどう思われるかが重要な判断材料になる」や「人から羨ましがられることは、自分にとって重要である」は10代は一番高い傾向がありました。
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3)若手の離職リスクがあるのは「ゆるい」か「きつい」か
次に「離職のリスク」についてです。会社から見て「若手に離職して欲しくない」というのは、当然の願いでしょう。採用はますます難しくなり、採用にもお金がかかっています。若手は希少です。ゆえに、丁寧に育てている印象もあります。
現に、働き方改革で、今回のアンケート調査をしている大手企業では特に残業は少なくなり、上司からも丁寧に対応され、そして実績より承認が増えている傾向があります。
それなのに、年々若手の離職率はあがる一方というデータがあります。会社は待遇が良くなっているはずなのに、若手が辞めてしまうのはなぜなのか? このことについても示唆するデータがありました。
結論からすれば「会社に不満はないが、キャリアに関する不安がある」ということのようです。会社に頼れなくなった今、自分で経験を積む必要があるが、ゆるいと「自分の市場価値がなくなっていくのでは?」という不安が出てくるようです(いわゆる「ゆるブラック」もこうした感情を揶揄した言葉なのかもしれません)
そして、「ゆるいと感じる」または、「ゆるいと感じない」のどちらかに当てはまる回答をした若手が、3年以内の離職意向が高いことがわかりました。
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4)心理的安全性と「キャリア安全性」がエンゲージメントを高め離職を下げる
さて、次に3)の離職リスクに続くお話です。若手には、”ゆるくて”離職意思が高まる場合と、”きつくて”離職意思が高まる場合があるとお伝えしました。
この背景にある概念が「キャリアの安全性」と「心理的安全性」です。心理的安全性はここでは割愛して、ここでは前者の概念についてお伝えします。
以下の、引用いたします。
「キャリア安全性」については、以下の3つの逆転項目から測定することができる。
1)「このまま所属する会社の仕事をしていても成長できないと感じる」(時間視座)
2)「自分は別の会社や部署で通用しなくなるのではないかと感じる」(市場視座)
3)「学生時代の友人・知人と比べて、差をつけられているように感じる」(比較視座)
これらのキャリア安全性の下位尺度が逆の状態になることが、キャリア安全性を高め、そしてそれぞれがワークエンゲージメントにも影響を与えることがわかりました。
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上記を踏まえて考えると、若手を取り巻く職場の状態として望ましい状況とは「心理的安全性」と「キャリア安全性」のどちらも高い「secure」な状態を目指すことが、若手のエンゲージメントを高め、離職意思を低下させる職場環境となることが推察される、とのことでした。
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まとめ
その他にも若手に関するさまざまなデータが紹介されており、実に興味深い内容でした。(例えば「第5章 若手を育成できる管理職、できない管理職」とか、「第7章 優秀な人材ほど辞めるを食い止めるには」など)
いずれも、データと数字を元に論じられているため、納得感のある書籍でしたし、パッと見て〇〇をしましょう、という話ではないのですが、その背景にある事実から何をすべきか考える材料を与えてくれる本でした。
つい「近頃の若者は・・・」と、レッテルを貼って把握したつもりになることを、安易に選択してしまいがちかもしれません。しかし、そうしたレッテルを貼ることや世代を一括りにすることは思考を停止させ、問題や課題が何かを見つめることを妨げるようにも思います。そういった意味でも、こうしたデータを元に読み解くことは大きな意味があると感じたのでした。
一方、大企業に就職ができる若手を中心のデータであるため、より広範囲でのデータ(中堅・中小・地方など)を含めると、また違った傾向が見えてくるかもしれません。ここは、どのようなものになるのかを見てみたい、とも思いました。
採用や若手教育に携わる方には参考になる一冊かと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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