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カウンセリングの悩み①【話を聞くだけ?】

こんにちは。
臨床心理士・公認心理師の塩むすびです。

カウンセリングを受けていると、
きっと色々な疑問・不安・不満が生まれますよね。

こうしたものについて、今後少しずつ私なりの解説をさせていただこうと思いました。

色んな考えの方がいるので一意見にはなりますが、
ご参考になれば幸いです。


今日はそのひとつめ、
カウンセリングではアドバイスをもらえないのか
についての解説です!

何もしてもらえない不満について


何もアドバイスをくれないのか!」
「聞くだけで何も解決しないじゃないか!」

カウンセリングについてのこうしたご意見を
時々耳(時々は目)にします。

クライエントの方からそう言われてしまった
という話も耳にします。


正直個人的には、
「そうだよな~。それは不満になるよな~。」
つい思ってしまうのです。

悩んでお金を払って、何も解決せずもやもやして帰るのでは、クライエントの方(患者さん)からすると
ストレスが増えるできごとになってしまいます。


なのでちょっと解説です。

まずはなぜこれが起こりうるか、
私なりの見解をお話しますね。



聞くだけになってしまう理由


①カウンセラーのスキル不足


臨床心理士は大学院で実習を経験します。

ただ修士課程までだと、
カウンセリングを自分で行う機会は少ないのです。


どちらかと言えば、理論を学んだり、実習先でカウンセリングの陪席(カウンセラーの横で一緒に話を聞きメモをする係)をさせていただくことの方が多いです。

自分でカウンセリングを行うようになっても授業に出たり修士論文を書きながらの実習となりますので、
担当するケース数はたかが知れています。


何が言いたいかというと、他の職種と同様に
社会に出たからすぐに一人前になるわけではない
ということです。

心理士として社会に出て、実際に多くのケースを担当し、先輩カウンセラーの指導を受けながらだんだんとスキルを上げていきます。

またどの職場に就職したかによってカウンセリングの経験値は異なってくるので、年齢とスキルは必ずしも一致しません。

心理士はカウンセリング以外の業務をすることも多々あるからです。


そこで考えられる理由の1つに、
カウンセラーのスキルが低いという可能性もあり得えます。

これはあまり言いたくなかったのですが
実際に可能性がゼロなわけではありません。

クライエントとカウンセリングの意味や目的をきちんと共有できていないという意味では、スキル不足もやはり考えられてしまうのです。


こう思うのには自責の意味合いもありまして、

私も慣れない内は「聞くだけのカウンセリング」をしてしまっていました。

何もアドバイスはせず、口は挟まず、ただ聞くカウンセリングです。

それを求めてくれる方のカウンセリングは継続しましたが、もちろん不満を持たれる方もいらっしゃいました。


他にも似た経験を持つカウンセラーがいるかは分かりませんが、個人的にはスキル不足による「聞くだけのカウンセリング」はありうるのではないかと思っています。



ただ誤解は避けたいので2つほどお話させてください。

ひとつめに、どの職種の方も最初からスキルが100%あるわけではありません。

お客様、クライエントの方、患者さんに育ててもらい、社会人として1人前になるしか道はないかと思います。



ふたつめに、カウンセリングをきちんと習ったことのある方はご存じかと思いますが、

カウンセリングの基礎は「受容と共感」です。

つまりカウンセリングとは、相手の話をきちんと聞き、
それを評価せずありのままに受け入れることなのです。


日常の会話では自分の話をなんの評価もせずありのままに受け入れてくれる人ってめったにいませんよね。

「もっとこうした方がいいんじゃないの?」と言われたり、「えーそんなことするんだ?僕だったらね・・・」と言われたり、

何かしら相手の考えで判断される、
というのが自然かと思います。


ただ、カウンセラーは判断をしません。

「そんなことがあったのですね。」
「そう感じたんですね」

と、ありのままを受け入れます。

そして
その時の気持ちや考えに理解を示そうとします。

これがカウンセリングとしてまず習うことなんです。


思い返すと大学院では、

「口を挟まず、とにかく相手の話を聞きなさい。
間ができても自分からは話さないようにしなさい。」


と習った覚えがあります。

こっちから話題提供をしようとすると、
むしろ指導員から怒られました(笑)

怒られたのは、相手が話したいことを私の言葉がさえぎってしまう可能性があるからですね。


カウンセリングは日常会話ではないので
時間がかかっても相手から出る言葉を待ち
クライエントの方の内省を深めるお手伝いをさせていただく、というスタンスが基本なんです。

今の私はこうした指導をあまり守れていない気がしてそれはそれで反省なのですが、

「聞くだけ」のカウンセリングをしている方は、
こうしたカウンセリングの基本を忠実に守っている。

つまり、カウンセラーとしての仕事はきちんとされている方でもあるのです。

スキル不足の可能性を申し上げたのは、
その先のもうワンステップ(クライエントさんとの目的共有や動機づけ)がまだ身についていない可能性があるという意味でした。



②カウンセラーがそれを必要だと判断したため


また別の可能性として、カウンセラーがあえてその手法を用いている可能性もあります。

どちらかというと、
こちらの可能性の方が高いかと思います。

時と場合によってその目的は違うので

よろしければカウンセラーに

「カウンセリングではどうして聞いてばかりでアドバイスをしてくれないんでしょうか。」

と直接尋ねてみるのが良いかと思います。

カウンセリングでの不安や不満は
カウンセラーに言葉で直接伝えてみると、
より有意義なものになると私は思っております。

基本的にカウンセリングでは
一方的なアドバイスを行いません。


カウンセリングは、クライエントさんが自分で考えて乗り越えることをお手伝いさせていだだく場だからです。

医師や他の職種の方は、指示やアドバイスをくれるかと思います。

カウンセラーはそれを受けて、
クライエントさんがどう思ったのかを一緒に整理して、じゃあどうしていきたいか、を一緒に考える役割です。

心の支えや応援もします。

また、自分で判断したり行動したりが難しい方には、
判断材料を提供することはあります。

・こうしたい気持ちもあるけど、こんなところで迷っていらっしゃるんですね。

・こう考えるとこうなりますし、こう考えるとこうなりますかね。

・こういうやり方もあれば、こういうやり方もありますね。

といった感じでしょうか。


最終的な判断はクライエントさんに委ねて、クライエントさんの決めたことを全力でサポートします。

あえてアドバイスをしない目的として、
「苦しいかもしれないけど、この先は自分で考える練習をしたほうがいいだろう。」
「ここの決断は人にゆだねると後悔してしまうだろう
といったことも考えられます。


〇〇が解決する方法!などの手段を求めやすい方には、

答えのない場面があることを知ってもらう経験、
曖昧な状況に耐える訓練
として、

あえてアドバイスは避けるかもしれません。


クライエントさんが自分の言葉やこれまでのことを冷静に振り返る時間、つまり内省する時間として、ただクライエントさんの聞くというスタンスを大切にされるカウンセラーも多くいます。


「聞くだけしかしてくれない」という不満が自分のどんな気持ちから生じているのか、深く深く振り返ること自体が治療につながったりもします。

ちょっと難しい心理療法の話なので、
このくらいに留めておきます。

「聞くだけ」にもどかしさを感じていること自体が、
カウンセリングを深める材料になっている
ということを頭の片隅に置いていただけたらと願います。


おわりに


カウンセリングも色んな手法があるので、一貫してほとんど話をしないカウンセラーもいれば、割と話すカウンセラーもいます。 

どちらも意図や目的はありますので、モヤモヤとしたら直接尋ねてみていいと思います!

まずは、「聞くだけ」にも意味があることを知っていただけたら幸いです。

それでも辛い、意味がないと思ったら、
遠慮せず直接カウンセラーに言ってくださいね。


カウンセリングについての質問や疑問については今後も取り上げていきたいと思いますので、よろしければコメント等でお寄せください。

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