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不登校対応②いじめではない場合

こんにちは。
臨床心理士・公認心理師の塩むすびです。

今日は昨日の続きとして、
いじめ以外の理由による不登校の原因や
対応の仕方についてお話しようと思います。

はっきりとした理由がある場合


こちらは明らかに、特定の理由があって学校を休んでいる場合です。

私が聞いたことのあるもので言うと・・・

・友達とのトラブルがあった
・先生が怖い
・部活が厳しい
・勉強が嫌い
・夏休みの宿題が終わっていない

まだまだありそうです。


こうした場合、もし聞いていて「そんなもの我慢しなさい」と思うような内容でも、しばらくは話を聞いてあげることが大切になります。

愚痴をできるだけ言わせてあげてほしいのです。

言って言って、言い終わった後になにが出てくるかが大切になってきます。


途中で「そんなのみんな同じでしょ!」と言ってしまうと、子どもが不満を持って反発したり、口を利かなくなったり、解決とは反対の方向に進んでしまうんです…

難しいですよね。。

大概の子は、頭のどこかで自分にも非があることを感じてます。根っから自信満々の不登校の子には会ったことがありません。

自分を否定されるのは怖いことです。
だから一生懸命自分の外側にだめな理由を探します。

皆条件が同じなのはわかっていても、
なんなら自分に多少の非があることも感じていても、
愚痴を言って安心したいのです。


・・・大人もそうではないでしょうか?

職場の愚痴、社会の愚痴、夫婦の愚痴、親子の愚痴。。。

私はたくさん大人からも聞いているのでごまかせません。。


自分にも多少の非があることは理解していても、
みんな愚痴を言うのです。

それはおかしなことではありません。


飲みの場で、「いやー上司がこんなこと言ってきてさー」と言っている人に、「それはあなたの力量不足では?」とは言わないですもんね。

きっとみんな、愚痴を言うことがその人の次にがんばるエネルギーにつながるということを理解しているのではないでしょうか?

自分のだめなところなんて探したらキリがないです。

隠れた場所で、
ちょっと他のもののせいにしている位がきっと健全
なんでしょうね。


また子どもだって、愚痴を言いたくなります。
子どもだけ言っちゃいけない決まりなんてないです。

なので、愚痴を「そうだね。大変だったね。」
ただ聞いてあげてほしいのです。

いっぱいいっぱい聞いてあげると、
多くの子は少しずつ冷静になっていきます。


ずっと先生や学校を非難していた子が
話を聞いている内に、

「まあ、僕も悪かったんだけど・・・」

なんて言い出すこともあります。

何かを非難したりする時って、それだけ自分に自信がなくなっていたりするんですね。


なので、話をいっぱい聞いてもらって
受け入れてもらって安心すると、
少しずつ自分と向き合いやすくもなるんです。


ここで大人が誤解しやすいこと。

それは、聞く時間についてです。

多くの親御さんや先生は、子どもの話を20分聞いたら、「たくさん聞いたぞ。そろそろいいだろう。」と思いがちです。


・・・短すぎます。

何日、時には何週間聞いて聞いて、ようやくポツポツと本音が出てくることがほとんどです。


よく私がお話させていただくのは、
「聞く9割、伝える1割」にしてください。
ということです。

多くの方は、聞くよりもアドバイスを優先しがちです。


でも、子どもがアドバイスを受け入れる体制になっていなければ、そのアドバイスはほとんど響きません。

本当は聞く9割でも少ないくらいですが、
せめてこれを守っていただきたいのです。


子どもがたくさん話をし、ようやく落ち着いてきたところで、「伝える」の1割の出番がきます。

その「伝える」は、
「じゃあどうしていこうか?」を考える時間です。


一方的に伝える、というよりも、
一緒に考えていくスタンスがベストです。

子どもが何も思い浮かばないようなら、

「こういう手段もあるかなあ・・・」とつぶやいてみたり、「こうしたら、こうなるかなあ・・・?」と相談したり。

提案をしながら、一緒に考えてください。


指導じゃなく、一緒に
。です。


大人が一方的に、
「こうすればいいんだよ。」
「そんな風に考えなくても、こう考えればいいんだよ」
と言ってしまうと、

子どもは「自分の気持ちを分かってもらえない」と感じて、それ以上話を聞かなくなってしまう可能性が高いのです。



もしアドバイスをしたいのなら、
「自分だったらこうするかなあ・・・〇〇さんだとどうかな?」
と、あくまでも一意見として伝えてあげてください。


そうして、本人・家族・先生、で連携をしながら
その子にあった克服の仕方を身につけられると、
その子はより強くたくましくなれるかと思います。


・・・ただ、最初にあげた理由、
本当にそれが原因かはわかりません。


1つの問題が解決しても、
やっぱり学校には行きたくない!
という子はいるのです・・・

そうしたケースは、
下の「行きたくない理由が分からない」と同義になります・・・


行きたくない理由が分からない場合


「どうして行きたくないの?嫌なことでもあるの?」
と聞いても、「わかんない」と答える子がいます。


似たものとして、色々な理由を言うけど、
どれも本質的なことじゃないという場合もあります。

こうした、
はっきりとした理由のない不登校は、
理由のある不登校よりも多い印象です。

こうした不登校の多くは、
「特別な理由はないけど、なんとなく不安で嫌だ!」といった漠然とした不安からきています。


学校にいる間はそこまで嫌な気持ちはしないのに、
学校へ向かう間にものすごく緊張感や不安感が高まる

という子も多いです。


こうした状態を「甘えだ」と判断して無理やり学校へ連れていく親御さんもいるのですが、

高い確率で次第にお子さんの調子が悪くなり
引きずっていける状態ではなくなってしまいます。


親御さんの気持ちもわかるのですが、
できれば避けたい手段です。

「甘え」では片づけられない程の苦しさが
実際に本人たちのなかにはあります。

実際に学校内で起こりうるできごと以上に
頭や心のなかの不安が何倍もふくれあがってしまって、
戦場にでも行くかのような気持ちになってしまうようなのです。


「そんなに学校に嫌なことはないはずなのに、どうしてこんなに不安になるんだろう」と自分で口にする子も何人もみてきました。

個人的には
思春期特有のホルモンバランスの乱れ
も関係しているんじゃないかなと思っています。


こうした時、まず第一に大切なのは、
心のエネルギーを取り戻すことです。


たくさんの子をみてきましたが、
まず元気を取り戻さないと何をしても響かない
ということを実感しています。


休み、遊び、動き、楽しい話をして、
まずは負い目をなくして楽しく過ごすことです。


いずれはやることをやらなきゃいけない

そんなことは子どももわかっています。

でも、そんな負い目を感じながらでは元気が出ません
まずは力を取り戻すことです。


そして大丈夫です。

心に余裕が出てくると、
真面目な話をしても子どもが荒れなくなります。
次のことを考えられるようになります。

これは本当です。


ずっと「不登校なんだから〇〇しなさい」と言われ続けているお子さんよりも、

「今は一回休んで大丈夫だから休みなさい」と猶予を与えられるお子さんの方が、

結果的に回復が早いのです。


傷が癒えない内にリハビリをしても意味がないということかなと思っています。


まじめな話をして情緒が不安定になるうちは、
まだエネルギーが戻っていないです。

エネルギーが戻るまでの期間は人それぞれで、
周囲の方の根気が必要になってきます・・・。

そうした意味では、学校の先生と親御さんと、
時にカウンセラーとが励ましあいながらやれたら理想的だなと思います。


元気が出てきたら、
はっきりとした理由がある場合と同様、
今後どうするかをみんなで少しずつ考えていきます。

不安になりやすかったり、
失敗を気にしすぎたり、
ネガティブになりやすかったりする性格があるなら、

カウンセリングで冷静でフラットな考え方
身につけていくのもよいと思います。


理由ははっきりしなくても、

・完ぺきにできていない状態がとても苦手
・人からどう思われるかが心配になりすぎる
・ばくぜんと不安や緊張が高まりやすい
・決められたことを守るのが苦手

など、なにかしら学校に行けなくなった背景にある課題は出てくるものです。

こうしたものを責めるのではなく、
どうやって乗り越えていくか考えていくのが
不登校のサポートとなります。



おわりに

不登校に関しては本当に色々な情報が飛びかっていますよね・・・。

「不登校を直す方法!」などの過激な怪しい言葉にどうか惑わされず、学校、保護者、お子さん自身、時には病院や他の機関と力をあわせて取り組んでいただけたらと思います。

自分の課題と向き合い、
周囲に支えられて乗り越えた子はその後強いです。

いつか誰でもぶつかる壁が今だった。

今乗り越えることで、その後同じような壁が来てもクリアできると思い、悲観的になりすぎず取り組んでもらえたらと思います。

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