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【エッセイ】しがない新年の憂鬱


新年明けましたね。
おめでたいことなのでしょう、きっと。
こんなおめでたい日なのですが
あえて白状したいことがあるのです。

私、この艶やかな赤と白に
神々しい金色のあしらわれた
年末年始の華やかな数日間が
どうにも少し、苦手なのです。

ええ、ええ、分かっております。
なんと寂しい心の人なのだろう、
素直に楽しめばいいのに。
そんなだと、神様にそっぽ向かれて
罰当たりな年になっちゃうわよ、
だとかなんとか言いたいのでしょう。

だけどやっぱり私にとって、
この日々は憂鬱なんです、どうしたって。


地元の懐かしい顔ぶれが揃う忘新年会。
昔はただただ、馬鹿みたいに
お酒を飲んで騒いでいるだけで良かったのに
いつからか、それぞれが描く
幸せの形や目指す場所や方向が
違っていくのがよく分かって
何を話しても少しちぐはぐなのが分かって。
ああ、もう昔とは違うんだなって、
一人勝手に切なくなる。

親戚たちが集う新年のささやかな宴会。
いとこたちの結婚相手や子供も一緒に
連れてきてくれたりなんかして、
自分で家族を増やしていく彼らのことが
たくましく羨ましく見えて仕方なくて。
誰かの何気ない「次は小雨ちゃんかな?」
なんていう言葉に愛想笑いするのも
正直疲れてしまう。

そんな宴から逃げ込むように
スマホを開いてSNSを見れば
家族とあたたかな料理を囲む人
友達と楽しくカウントダウンをする人
寒空の下、深夜の初詣に繰り出す人
山に登って初日の出を見に行く人
綺麗なおせち料理を作る人
立派な新年の決意を綴る人たちがいて。

私にはそんな、新年の幸せの最前線に
躍り出て楽しむ行動力なんてなくて
ちょっと虚しくなっちゃったりしてる。


世間の流行とか大きな波に乗るのが
いつも下手な私の劣等感は
1年のうち、この数日間に最もえぐられる。

あぁもう。
暦が変わったからって
好きな人たちと一緒に喜ばなくいちゃいけない?
決意を新たに新年の努力を誓わなくちゃけない?

どうせ、新年の決意もおみくじの教えも
良くてせいぜい2月の末頃には
頭の片隅に追いやられて
日々の暮らしに埋もれていくじゃない。


はぁ……失礼。
こんな日にため息なんて。
まあここまでつらつらと書きましたが、
この数日で蓄えた小さな劣等感をお土産に
私はまた大人しく
変わり映えない日常に帰って行きますので
ご安心ください。


私思うんですけどね?
1年のうちのたったこの数日間を
無理に特別な日々として演出できなくたって
別にいいと思うんです。

それよりもっと、
その他360余日の日常を
慎ましく丁寧に生きることの方が
ずっとずっと大事な気がするんです。
違いますかね?


だからどうか神様。
まだ初詣にも出かけず、
すっぴん眼鏡でこたつに足を突っ込みながら
こんなエッセイを一人綴っている
ひねくれ者で出不精の私ですが、
今年も日常を大切に生きますので
そっぽ向かないでくださると嬉しいです。

謹賀新年。

今年も飾らず等身大で
慎ましやかに物を書き続けたいと思います。
こんな小雨を2023年も
何卒宜しくお願い致します。


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