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"Half in Love with Elizabeth" - Mystery Jets【和訳】

イギリスのエリザベス女王陛下が崩御されました。
わたしは大学でイギリス文化を学び、イギリスという国やその国を象徴する存在である女王陛下に憧れと親しみを感じていましたので、なんだか寂しい気持ちでいます。
バッキンガム宮殿の空に架かる二重の虹の写真には涙を誘われました。

他国の人間ながら、イギリスという国やその文化に惹かれ、多少学問としてもかじった経験のある者として、深く哀悼の意を捧げたいと思います。
フィリップ王配殿下とともに、安らかにおやすみください。


エリザベス女王陛下は、70年という長きにわたりイギリス(英国)と英連邦王国に君臨され、とりわけイギリス国民にとっては尊敬の対象でありながら、親しみのある存在だったことでしょう。

その証拠に、女王陛下が登場する作品や、陛下をモティーフやテーマにした作品が数多く生み出されてきました。

Sex Pistolsの"God Save the Queen"とか有名ですね。
国歌と同じタイトルに当時のイギリス社会への不満や怒りを乗せた楽曲です。
女王陛下の肖像に安全ピンを刺したアートワークが衝撃的。

そのピストルズのジョン・ライドンも追悼のコメントを発表しています。

安全ピンなしの肖像とともに。そんなところにもなんだかグッとくる。
こういうのを弁えるのは、ライドンさんの好きなところです。

敬意をもって描かれた作品もあれば、ネタにしたりイジったりする作品もありますが、どちらにせよ、それだけイギリス国民にとって近しく親しみやすい存在だったことの現れではないでしょうか。




さて。そんなエリザベス女王陛下に思いを馳せるこの機会に、陛下をテーマにした楽曲の中から1曲、聴いてみたいと思います。

イギリスのバンド Mystery Jets (ミステリー・ジェッツ)の "Half in Love with Elizabeth" です。
2008年に発表された2ndアルバム『Twenty One』の3曲目に収録されています。

Half in Love with Elizabeth  -  Mystery Jets

And he's half in love with Elizabeth
And he's half in love with you

彼は半分エリザベスに恋している
そしてもう半分はきみが好き

Some things are too painful to say out loud
Well, they live behind a veil and see through a shroud
Words fly through his mouth, like paper butterflies
They flutter around and burn holes in your side

口にするにはあまりに痛々しい
彼らはベールの後ろで生きていて、とばりの向こうから見ている
彼の発する言葉はまるで紙の蝶のように軽々しくて
飛び回りながらきみの心を燃やして穴を空ける

And he's half in love with Elizabeth
And he's half in love with you

彼は半分エリザベスに恋している
そしてもう半分はきみが好き

I knew that you were thinking of him last night
Cause I saw the blood seep down to your toes
Turn away if you must
But how can you put your trust
In a man who always sleeps in his clothes?

ゆうべは彼のことを考えていたんだろ
つま先まで血が染み出しているのを見たらわかる
必要なら背を向けなよ
だけどどうして信じることができる?
常に服を着たまま眠るようなやつのことを

And he's half in love with Elizabeth
And he's half in love with you
Yes, he's half in love with Elizabeth
And he's half in love with you

You're the sweet scent on an envelope
A folded photo in his purse
But if you pin your hopes to his back my dear
I'm afraid the bubble will burst

きみは封筒のあまい香り
財布の中の折りたたまれた写真
だけど ねぇ きみ。もし彼の背中に希望を託すなら
泡ははじけてしまうんじゃないかな

The bubble will burst
(8x)

泡がはじけるように
ぜんぶなくなってしまうよ

And he's half in love with Elizabeth
And he's half in love with you
(2x )

彼は半分エリザベスを愛している
そしてもう半分はきみが好き

shroud:(埋葬する遺体を包む)白布、包むもの、覆い、とばり、幕
seep:染み出る、漏る、少しずつ染み込む、行き渡る、広がる



半分はきみが好きで、もう半分はエリザベスが好き。
いろんな解釈ができる曲だと思います。

2番の「But how can you put your trust / In a man who always sleeps in his clothes」(服を着たまま寝るような男をどうして信用することができる?)の部分はあんまりピンと来なかったのですが、歌詞サイトに解釈が書いてありました。
きみが寝ている間いつでもベッドを抜け出して他のひとに会いに行けるよう、(裸や寝間着ではなく)ちゃんとした「服」を着込んで寝る、ということみたい。なるほど。


「エリザベス」というのが単に彼女以外の他の女性のことを指すのか、それとも世界で一番有名なエリザベスを指すのか……どっちにも取れるのは面白いです。

ミュージックビデオでは女王陛下その人を指していますが。
女王陛下に心酔し、異常なまでに愛する男性。今風に言うと「推し」通り越して「ガチ恋」。女王陛下はある意味偶像。生身の女性じゃ偶像には勝てない。
彼女の心を慮るとつらくなってしまいます。

が、このMVの彼氏はほんとにいい表情しますね。
最後に彼女を慰めながらも、向こうに「エリザベス」の姿を認めてニヤリと笑うあの顔、ゾッとします笑

あるいは、エリザベスというのは、女王陛下の肖像が描かれたポンド札、つまり「お金」の暗喩ではないかとする説も。
半分はきみのことが好きだけど、半分はお金が好き。それもなかなか辛辣です。


さすがに女王陛下にガチ恋して彼女を蔑ろにする男が現実にそうそういるとは思えませんが、女王陛下が多くの国民から愛される存在であったからこそのMVだと思います。


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