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【農法地図】これから野菜づくりを始める方へ。結局どの農法がいいのか?

慣行農法、特別栽培、有機農法、BLOF理論、炭素循環農法、自然農法、自然農、自然栽培、協生農法、雑草昆虫農法など、それぞれどう違うのか、農法地図を作ってみました。左から右へ色々な分かれ道を通っていきます。

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※()内:提唱者の名前。敬称略。


自分が野菜づくりを始めた頃、どんなやり方でやれば良いのか調べると色々な農法が見つかりました。

しかし、それらがどのように違うのかがよく分かりませんでした。

「どうやら慣行農法と有機農法ってのがあるらしい・・・」
「さらに自然農法ってのもあるのか。ん?自然栽培、自然農、自然農法、、え?どう違うんだ。」
「有機農法もJAS有機っていう制度と、何やら制度ができるより前からあったものもあるらしい。」

など。

今はそれぞれの農法がどういった方針、何に重きを置いているのか多少分かっていますが、これから野菜づくりを始めようとする方は混乱するのではないかと思います。

そこで、今回は農法の地図を作ってみました。これから野菜づくりを始める時の参考にしてもらえると幸いです。

・記事の読み方お勧め

長い文章読むの慣れてるぜ!
→初めからどうぞ

理科得意だぜ
(3)何に重点を置くかの分かれ道(有機肥料分の持ち込みあり)からどうぞ

自然農法・自然栽培・自然農・自然菜園について知りたいぜ
(3)何に重点を置くかの分かれ道(有機肥料分の持ち込みなし)からどうぞ

当園コトモファームの農法について知りたいぜ
雑草昆虫農法からどうぞ

文章とか読んでないで早速野菜作り始めたいぜ
→当園体験農園コトモファームにどうぞ!

おことわり

・農園単位、個人単位で農法は違っており、こだわりも星の数あると思っています。慣行農家と呼ばれる方の中にも、農園によって農法を使い分けていたり、有機農業をやられていたりする方もいます。この記事では、○○農法という名前を入り口に、いろいろな方針、いろいろなこだわりがあることを知ってもらえると嬉しいです。
・認識の間違いがあればご指摘いただけると幸いです。


(1)化学合成物質の分かれ道

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まず、大きく初めの分かれ道になるのは、「化学合成物質」を栽培に利用しているかどうかです。化学農薬や化学肥料などを利用する農法が一般的に「慣行農法」と呼ばれています。

 慣行農法

各地域において、農薬、肥料の投入量や散布回数等において相当数の生産者が実施している一般的な農法のこと。
https://www.weblio.jp/content/%E6%85%A3%E8%A1%8C%E8%BE%B2%E6%B3%95


慣行農法の中で以下の基準を満たしたものが、特別栽培農産物になります。

 特別栽培農産物

その農産物が生産された地域の慣行レベル(各地域の慣行的に行われている節減対象農薬及び化学肥料の使用状況)に比べて、節減対象農薬の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分量が50%以下、で栽培された農産物です。
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/tokusai_a.html
※山田メモ※
よく慣行農法と有機農法の違いを「農薬」「化学肥料」の利用の有無と説明されていることがあります。ここのところちょっと厄介で、JAS有機の基準では「化学的に合成された肥料及び農薬の使用を避けることを基本」とすると書かれています。
参考:有機農産物の日本農林規格(平成28年2月24日農林水産省告示第489号)別表2
http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/kikaku_26_yuki_nousan_160224.pdf
たまに見かける「無農薬」という表記は、有機農法のことを表しているわけではなく、「農薬を使っていないやり方」として別のものになります。JAS有機の基準では「化学的に合成されていない農薬」が使用されていることはあります。

日本の有機農法に関心がある方の特徴として、農薬に強く注目していると感じます。先日読んだ世界の環境保全型農業について書かれている本(土・牛・微生物)では、アメリカなどでは農薬の利用よりも耕起するかどうかに重きが置かれているように感じました。
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続いて化学合成物質を使用していない農法の説明に入ります。

(2)有機肥料分を外から持ち込むかどうかの分かれ道

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慣行農法でない農法の中で大きい分かれ道としては、有機肥料分を外から持ち込むかどうかという点です。

化学肥料を入れないのはもちろんのこと、有機肥料や堆肥も入れないというやり方があります。

ここで厄介な点は、「堆肥を肥料とみなすか問題」があります。(私が勝手に名付けました。)

ざっくり言うと堆肥は「土壌を改善するために使用するもの」くらいに思っておいてください。改善とは土をふかふかにしたりすることです。(土壌物理性の改善と言ったりします。)例えば、ふかふかにしようと腐葉土などを用いたりするのですが、「肥料」とは言われない腐葉土にも肥料分は含まれています。

つまり、「肥料を入れてなくて堆肥だけ」という人がいたとして、「気持ちはわかるけど、堆肥入れてるなら肥料分与えてるわけだし・・・」と思うわけです。

ですので、ここの分かれ道は「有機肥料分を農園の外から持ち込むかどうか」という基準にしております。持ち込まないやり方としては、農園に生える草を刈り敷いたり、土を肥やしてくれる草(クローバーなど)を生やしたりするやり方になります。

※山田メモ※
有機肥料だなんだ言われていますが、そもそも有機の定義が難しいと感じます。ちゃんと理解するには化学や生物学を勉強する必要があるので、栽培分野に限ってどのような意味で使われているかといった説明にします。

有機→ミミズやカビ、菌など微生物によって食べられたりして分解されるもの。炭素(C)を含む。
また、「人と人、地域でのつながり」というような意味として「有機的」と使われたりする。
無機→有機以外。
(※注意※分かりやすくするために作った説明で、正確な定義ではありません!詳しく知りたい方は、高校生物学や化学の教科書を読むなどがいいかと思います。)
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(3)何に重点を置くかの分かれ道(有機肥料分の持ち込みあり)

最後の分かれ道、「何に重点を置くか」。もちろんそこに重点を置いているというのは、他の点を大切にしていないという意味ではありません。

まずは、有機肥料分持ち込みありから。

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 BLOF(ブロフ)理論

栽培技術のコンサルや土壌分析などを行うJapan Bio Farmさんが打ち出しているものになります。以下3つの方針パッケージでまとめられています。

BLOF理論は、3つの分野に分けて科学的かつ論理的に営農していく有機栽培技術です。太陽熱養生処理を大きな土台として、ミネラルの供給、炭水化物付き窒素の供給が重要となります。全てが相互的に繋がり、それぞれを深く理解し、実践することにより、「高品質」・「高収量」・「高栄養」の作物を栽培することが可能となります。
Japan Bio Farm   http://www.japanbiofarm.com/report/entry-354.html


詳しくは上記のURLに掲載されています。この農法(理論)の特徴は、やはり「土壌分析」にあるのかなと思います。土の状態を科学的に調べ、分析し、それを元に対策を講じる。他の農法が非科学的というわけではもちろんないのですが、BLOF理論は他の農法より科学的な分析に重きを置いているものだと思います。

大規模に有機栽培を行っている農家さんが取り入れている農法という印象です。肥料分を外から持ち込まない農法と違い、単一作物で広く栽培することもできる設計になっています。慣行農法で大量に作物を栽培していた農家さんが有機農法を取り入れるときに使うものかなと思います。

 炭素循環農法

次に、炭素循環農法(たんじゅん農法なんて名前でも呼ばれています)

炭素循環農法 (略称:たんじゅん農法)
ブラジル在住の農家・林幸美さんが本誌に執筆した記事をきっかけに広まった。一般的な栽培では主な肥料はチッソだが、炭素循環農法では圃場の微生物を生かすためにチッソより炭素の施用が必要だとする。C/N比(炭素量とチッソ量の比率)の高い廃菌床やバーク堆肥、緑肥、雑草などを浅くすき込むだけで、その他の肥料はいっさいなし、それだけで虫も病気も寄らない極めて健康な作物が育つという。

微生物によって有機物が分解されるときは、C/N比によって分解のされやすさが変わる。炭素循環農法ではC/N比四〇を境に、これ以下ならバクテリア(細菌類)が、これ以上ならキノコ菌などの糸状菌が主に働くと考える。糸状菌は、いったん縄張りを確保し有機物をガードしてからゆっくり分解する性質をもっているので、一度に大量のチッソを必要とせずチッソ飢餓を起こさない。逆にC/N比が低い有機物は、急速な分解のためにチッソを一度に必要とするのでチッソ飢餓を招く原因になる。そのため炭素循環農法では、微生物などの土壌生物がもっているチッソ以外の無機態チッソは過剰と考える。一般にはこの無機態チッソが作物の肥料と考えるが、C/N比を下げて糸状菌の働きを邪魔するもとであり、病害虫発生の直接原因になると見ている。
ルーラル電子図書館 http://lib.ruralnet.or.jp/genno/yougo/gy197.html

炭素循環農法はC/N比に重点を置いた農法となります。
C/N比というのは、土中の炭素(C)分と窒素(N)分の割合になります。正確性に欠けますが単純に言うと、普通の農法は窒素(N)が多くなってバランスが悪いから炭素(C)をいっぱい含んでる廃菌床やバーク堆肥、緑肥、雑草などを入れてバランス良く栽培しようぜって農法です。

重点をC/N比にしぼったことで方針が分かりやすいですし、略称のたんじゅん農法って名前もキャッチーだなぁと感じます。

これまた詳しくは生物学や化学を知っているとより理解できます。当園のスキルアップコース(上級者コース)を受けると理解できるようになります。(ちょっと宣伝。。)

 有機農業(一楽照雄・日本有機農業研究会)

続いて有機農業(一楽照雄・日本有機農業研究会)

ここで、JAS有機と分けて書いている訳がありますので、そちらは④で説明いたします。

日本有機農業研究会のHPにある有機農業のめざすもの

1 有機農業のめざすもの
【安全で質のよい食べ物の生産】
 安全で質のよい食べ物を量的にも十分に生産し、食生活を健全なものにする。
【環境を守る】
 農業による環境汚染・環境破壊を最小限にとどめ、微生物・土壌生物相・動植物を含む生態系を健全にする。
【自然との共生】
 地域の再生可能な資源やエネルギ-を活かし、自然のもつ生産力を活用する。
【地域自給と循環】
 食料の自給を基礎に据え、再生可能な資源・エネルギ-の地域自給と循環を促し、地域の自立を図る。
【地力の維持培養】
 生きた土をつくり、土壌の肥沃度を維持培養させる。
【生物の多様性を守る】
 栽培品種、飼養品種、及び野性種の多様性を維持保全し、多様な生物と共に生きる。
【健全な飼養環境の保障】
 家畜家禽類の飼育では、生来の行動本能を尊重し、健全な飼い方をする。
【人権と公正な労働の保障】
 安全で健康的な労働環境を保障し、自立した公正な労働及び十分な報酬と満足感が得られるようにする。
【生産者と消費者の提携】
 生産者と消費者が友好的で顔のみえる関係を築き、相互の理解と信頼に基づいて共に有機農業を進める。
【農の価値を広め、生命尊重の社会を築く】
 農業・農村が有する社会的・文化的・教育的・生態学的な意義を評価し、生命尊重の社会を築く。
日本有機農業研究会 「有機農業に関する基礎基準2000」
http://www.joaa.net/mokuhyou/kijun.html


一楽氏が提唱する有機農業が他の栽培などと一番違う点は、「提携」に重点を置いているところだと思います。

誰と誰との提携かというと、主には生産者と消費者になります。農業にまつわる問題を考える時、生産者だけでなく消費者、流通や農政も含んだ構造全体を考えないと改善はない、という考えになります。

詳しくはこちらをご覧ください。
日本有機農業研究会 生産者と消費者の提携

一楽氏・有機農業研究会の提唱する有機農業は、栽培に加えて社会運動という側面に重点を置いているのが他と違うポイントだと思います。
社会運動という側面では、イタリアのスローフード運動などが近いのかなと思います。また、提携のあり方は1980年代辺りに始まったアメリカのCSA(Community Supported Agriculture)にも近いとされています。

※山田メモ※
日本有機農業研究会の設立は1971年、国が「有機農産物等の特別表示ガイドライン」を設けたのが1992年、有機農業推進法(有機農業の推進に関する法律)が成立したのが2006 年。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/joas/9/2/9_6/_pdf/-char/en
有機農業とは何なのか、という説明が難しくなっているのは、制度としての出来上がる「有機農業」より前から、その言葉や取り組みはあったことが理由だと思っています。他にも海外で有機農業が生まれた背景と日本で生まれた背景が違ったりもして、一言に「有機農業」と言っても意図していることや重きを置いている点が違うなんてことも。
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なぜJAS有機を「有機農業」と一つの農法として位置付けなかったのか。

 ④制度上のラインとしてのJAS有機

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まずJAS有機と表示されている農産物は、登録認証機関に検査され、認証されたものとなります。

有機食品のJAS規格に適合した生産が行われていることを登録認証機関が検査し、その結果、認証された事業者のみが有機JASマークを貼ることができます。
この「有機JASマーク」がない農産物と農産物加工食品に、「有機」、「オーガニック」などの名称の表示や、これと紛らわしい表示を付すことは法律で禁止されています。
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/yuuki.html

JAS有機は認証制度であり、一つの基準です。JAS有機の認証を取った方の中にも一楽氏的な有機農業をやってない方もいらっしゃるでしょうし、逆に有機農業をやっている方の中にも、認証を取らない方もいらっしゃいます。

ここでは、理念ややり方である「農法」と認証であるJAS有機とは別ものとして整理しています。

(3)何に重点を置くかの分かれ道(有機肥料分の持ち込みなし)

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私が野菜づくりを始めた頃一番よく分からなかった、自然農法について。

大きく提唱者は2人いて、岡田茂吉氏と福岡正信氏になります。

他にも有名な川口由一氏や木村秋則氏、最近では竹内孝功氏などがいらっしゃいますが、こちらの3人は福岡正信氏から影響を受けたとプロフィールやインタビューで書かれているので、農法地図上ではまとめさせていただきました。

ちなみに各々が挙げている名前が、自然農(川口氏)、自然栽培(木村氏)、自然菜園(竹内氏)となっています。

まず時代的には岡田茂吉氏が「自然農法」という言葉を作られたようです。
当時人肥や化学肥料などを利用して野菜を栽培していた時代に無肥料での栽培を打ち立てたそうです。

 自然農法(岡田茂吉) 

昭和10年に説いたこの農法の根本原理は「人肥や厩肥また化学肥料などを一切使用せず、 出来るだけ土を清浄にし感謝して栽培すると、土本来の素晴らしい力を発揮し、その地域に住んでいる人間や家畜を養うに十分な、美味な作物が豊富に収穫できる」という画期的なものでした。

以後、約300坪の畑で実験に取り組み始め、無肥料での野菜作りは、味の良いこと、虫のつかないことなどを発見しました。昭和17年には無肥料の米作りを試し、花、果樹、野菜、 水稲、小麦、大豆など、数年にわたって実験と研究を続けました。昭和23年に『無肥料栽培』と題する論文を発表すると徐々に全国に広がり始め、昭和25年には『自然農法』と名称を統一、自然農法は「農業の芸術」である、と説きました。
NPO法人 秀明自然農法ネットワーク http://www.infrc.or.jp/about/
(メモ:昭和23年→1948年、昭和25年→1950年)
こっちの論文も詳しいです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arfe1965/42/1/42_1_54/_pdf

岡田氏が重点を置いているのは「無肥料」というところで、これは時代的にトラクターや農薬が一般的に使われてなかったからなのかなと思います。

※山田メモ※
岡田茂吉氏は1882に産まれ、1955年に亡くなられたそう。農業機械のクボタさんの歴史(https://www.kubota.co.jp/rd/evolution/agriculture/detail/detail.html)を読むとトラクターなどの普及が広がったのは1960年代ですし、化学合成農薬の歴史としては戦後に登場したとあるので(https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_tisiki/tisiki.html)、岡田氏が当時、耕起や農薬にあまり言及をしていなかったのは、まだそれらの問題が一般的になっていなかったなのかなと思います。
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今ではMOA世界救世教という宗教団体が主に引き継いでやっているようです。ちなみにMOAはなんの略かというと、Mokichi Okada Associationだそうです。
(私は以前まで、Mountain Oceanだと思っていました・・・)

 自然農法(福岡正信)

続いて福岡正信氏の自然農法。

地元・愛媛県に戻り農を通じて自然と向き合いながら、「不耕起 無肥料 無除草」を特徴とする福岡正信流の自然農法の体現化を始めた。

なにもしないのではない。引き算の農法
大自然の循環サイクルで「生かされている存在」の動植物にとって、
現代的な思考で物事を捉えると、時として「自然との対話」は、困難を極める事があります。

人間が大自然を相手に、「あれこれと足す・加える事」により、本来のありき自然の姿からは、かけ離れていく事を意味しています。
「人智の範疇で足して補おうとはせずに、極力意味をなさない・必要でないものを減らしていく=引く事」で、よりシンプルで、
より深く本質的なステージに繋がります。それは、人為的作業を極力少なくして、自然との調和を図る事を意味しています。

決して無駄ではないが、よく考えると「本当に必要な事とそうでない事」が、日常生活の中にもあるかもしれません。

“あの剪定作業はしなくてよいのではないか”
“この摘果作業もしなくてよいのではないか”
作業を引く為にどうすれば良いかと創造的思考を働かせ、
少ない所作で限りなく自然の傍らに寄り添う・・・。

それが福岡正信自然農園で紡いでいる「引き算の農法」です。
福岡正信自然農園 https://f-masanobu.jp/about-masanobu-fukuoka/

福岡氏が提唱した自然農法は耕さないことや除草しないという特徴を持っています。ただ、言わんがしているのは「耕さないことや除草しないことを厳格に守る」ということではなく、「それらが必要ないならやらない、やることを引き算していく」という考えなのかなと思います。

川口氏もインタビューの中で、田畑の状況、作物の性質は皆違うのでそれぞれに応じて手助けをするが、自然に任せることが大事だと述べています。

 自然農(川口由一)

現代農業は、本当に「効率的」か。「耕さない」「草や虫を敵としない」「肥料や農薬を持ち込まない」を三原則とする「自然農」を独自に確立し、実践してきた川口由一さんは、そう疑問を投げかける。
(中略)

とはいえ、田畑の状態も、作物の性質もみな違いますから、それぞれに応じた手助けをします。大切なのは、自然を支配しようとせず、添い従い、任せることです。例えば作物よりも草丈が高くならないよう、周囲の草は刈り取ってその場に敷きます。刈り草や虫や小動物の亡骸(なきがら)はその場に積み重なり、微生物により分解されることで、やがて豊かな土壌ができあがります。養分を多く必要とする作物の周囲には、畑でできた野菜のくず、稲わら、麦わら、米ぬか、小麦のふすま(小麦をひいて粉にした際に残る皮のくず)、菜種の油かすといった暮らしの中から出た不要物を畝の上にまき、自然に腐植してゆくのに任せます。
nippon,com “楽園”をつくる自然農法家:川口 由一 https://www.nippon.com/ja/people/e00120/

福岡氏も川口氏も大事なのは自然や、微生物の働きに任せることだとおっしゃっています。これは自然農法や自然栽培を一躍有名にした奇跡のリンゴの木村さんも述べていることになります。

 自然栽培(木村秋則) 

1 農薬や化学肥料を使用しない。
2 自然の摂理そのままを受け入れ、土壌のバクテリアや虫たちと共存する。
3 農産物と雑草の関係を研究し、農産物が成長するための「自然の声」を謙虚に聞き取る。
4 農産物のために、何をするべきかを素直に判断できるようになる。
フェリシモ https://www.felissimo.co.jp/contents/lp/?cid1=51296&cid2=51297
自給のために育てた他の作物での無農薬・無施肥栽培において良好な成果をあげつつ、木村は少しずつりんごの栽培方法に改良を重ねていった。最終的に木村を助けたのは、大豆の根粒菌の作用で土作りを行ったかつての経験だった。
土の中の根張りをよくするため大豆を利用した木村のりんごの木は年々状態が上向いていった
木村秋則オフィシャルホームページ http://akinori-kimura.com/profile/

自然に任せる中で、竹内氏は特に相性の良い組み合わせなどに注目したのかと思います。

 自然菜園(竹内孝功) 

自然菜園とは、野菜の里山です。農薬や肥料を使わずに野菜が自然に育つように、野菜と畑の生き物同士が良い関係になるよう、最低必要限のお世話で野菜を自然に育てる農園づくりです。たとえば、野菜を単一で育てるのではなく、野菜どうしの相性を知り、相性よい野菜(コンパニオンプランツ)を混植して、草や緑肥など立体的に、少量多品目の野菜を仲良く育てます。
草と虫と共に調和しながら、ミミズや草と野菜が一緒になって土を耕し土づくりします。自然にゆっくり育った野菜は、滋味に富み、風味豊かな野菜本来の味わいが特徴で、とても美味しく育ちます。 自然菜園スクールのビジョンは、「育てる楽しみ・食べる幸せ・豊かさを分かち合う」ことです。地域風土と自分の暮らしに合った自然菜園を学び、そして、持続可能な農的暮らしをサポートいたします。
自然菜園と自然菜園スクールについて http://www.shizensaien.net/


 協生農法

次に協生農法

比較的最近有名になった農法になります。あの有名なソニーが進めているというのはびっくりします。

協生農法は、株式会社桜自然塾 大塚隆による原形を元に、ソニー CSLリサーチャーの舩橋真俊による科学的定式化と検証を経て、実践と改良を重ねています。
https://www.sonycsl.co.jp/tokyo/407/

どんな農法かというと、

「無耕起、無施肥、無農薬、種と苗以外一切持ち込まないという制約条件の中で、植物の特性を活かして生態系を構築・制御し、生態学的最適化状態の有用植物を生産する露地作物栽培法」
生態学的最適化とは、与えられた環境条件で可能な範囲で、複数種が競合共生しながらそれぞれ最大限の成長を達成する状態を言う。これに対して、慣行農法が依拠する生理学的最適化は、一般に単一種の生育条件を最適化するために環境条件を変えることを指す。
協生農法 実践マニュアル 2016年度版
https://www2.sonycsl.co.jp/person/masa_funabashi/public/2016%e5%b9%b4%e5%ba%a6%e7%89%88%20%e5%8d%94%e7%94%9f%e8%be%b2%e6%b3%95%e5%ae%9f%e8%b7%b5%e3%83%9e%e3%83%8b%e3%83%a5%e3%82%a2%e3%83%ab.pdf

マニュアルを読んでいくところ、重点を置いているのは「生態学的最適化状態」というものみたいです。始めにその状態を作るのに、いろんな種や苗、木なども植えるそうです。この辺りの考え方が上記した自然農法とは少し違うのかなと思います。

HPにも書いてありますが、協生農法は環境破壊をどう乗り越えるかに重きを置いているようです(「生産性と環境破壊のトレードオフを乗り越える」という言い方をしています。)

株式会社桜自然塾の大塚隆氏の農法が原形とも書いています。その大塚氏の経歴を見ると農業をやってきてではなく、自然環境を考えて農業に行き着いたと書いてあります。

実際、アフリカのブルキナファソなどにこの農法は導入されており、砂漠を緑に戻すという形で成果を上げています。


当園コトモファームでも協生農法に挑戦されている方がいらっしゃいます。

 雑草昆虫農法

最後に雑草昆虫農法。

初めて聞いたよ、という方が多いと思います。というのは、当園コトモファームのやっている農法に最近代表が名前をつけたものがこちらになります。

その名の通り雑草や昆虫を敵視せず、仲間として考え、それどころか食べれるものなら食べちゃおうという農法となります。主な方針としては、農法地図上にもありますが、化学合成農薬や肥料を使わず、さらに有機肥料も外から持ち込まず野菜を育てます。

しかし農園によっては有機肥料(堆肥)を使用しているところもあります。
ここがポイントなのですが、当園は体験農園を運営しており、大きな方針は決めていますが(①化学合成物質はなし)、何に重点を置くかは会員様各々に委ねています。そして、農業を仕事にしていない人でも誰でも参加できるやり方を作り上げてきました。

ですので、先ほども言ったように協生農法に挑戦される方もいますし、各々の会員様が有機農法、炭素循環農法、自然農法と様々な農法で取り組んでします。誰もが取り組むことができる形、農法自体の多様さが雑草昆虫農法の特徴と言えます。
実際農法によってそこにいる生物層も変わるので、より雑草や昆虫の多様さが豊かになるのではないかと考えています。

スクリーンショット 2020-01-28 10.32.17

(調査者 日本大学生物資源科学部暮らしと生物学科)

さいごに

題名に結局どの農法がいいのかと銘打ちましたが、いかがでしたでしょうか?

我々は生活に農を取り入れていく人がちょっとでも増えていくといいんじゃないかと思って活動しています。そしてその中に雑草や昆虫も仲間に入れるとより楽しいのでは?とも思っています。

週末になったら畑に行き、近くで畑をやっている人と話をしたり、収穫した野菜を交換したり

知らないと無駄と思える雑草や気持ち悪いと感じる虫も、いろいろ知っていくと観察するだけで楽しくなったり
(畑の雑草・生物の勉強会を毎年開催しています)

これからやってくると言われている昆虫を食べる社会の備えをしたり
(昆虫食の会を開催し始めました)

野菜づくりを学ぶことで、色々と農業の知識が身につき、農家さんのこだわりを理解でき、より食を楽しめたり

すごく生活が豊かになるし、しかも環境に良い農法を選ぶことで次世代のためにもなる。めっちゃいいことだらけじゃないっすか?

ぜひ、多くの人に野菜づくりをはじめて欲しいです。
楽しいですよ。
興味ありましたら、農園のご見学へどうぞ!

それでは!

書いた人:山田直明
岡山県出身。北海道大学卒業。弓道参段。卒業後大手メーカーにてマーケティング部に所属。会社に勤めながら体験農園に通い、野菜作りの面白さを知る。会社を辞めた後、神奈川県藤沢市の有機農家相原農場にて農業研修を受ける。その後、株式会社えと菜園、NPO法人農スクールに所属。現在は、首都圏の農業を使った就労支援プログラムの講師を務める。

#農業 #農法 #有機農業 #自然農法 #環境 #昆虫食 #SDGs

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