雑草昆虫農法とは
こんにちは!スタッフの山田です。
最近、当園の行っている農法に名前がつきました。
「雑草昆虫農法」と言います。
当園代表の小島が「こういうこと考えているんだよね」と雑草昆虫農法にかける思いを先日スタッフに説明したのですが、その辺りのことを少し紹介させてください。
・目的
いきなりで驚かれるかもしれませんが、当園の大目的は「世界から飢餓をなくす」ことです。小さい農園ですが、大きな野望を持っています。
「飢餓をなくす」ことを目的とすることになったエピソードなどは代表の小島が色々なところで話しているので割愛します。ここ↓とかで取り上げていただいています。
農法を説明する上で、目的から話すことは大切だと思っています。というのは、目的によってやり方がある程度決まってくるからです。
例えば、バリバリ大量に野菜を作って販売し売上を最大化することを目的にするのと、自分や家族の食べる分だけ作り続けることを目的にするのでは、選ぶ手法は異なってくると思います。
雑草昆虫農法は、世界から飢餓をなくすための一つの手法という位置付けです。現在神奈川県で行っている体験農園コトモファームでのやり方が基礎となっております。
当園が行っている他の活動に関しても、方向は飢餓をなくすという目的に向いています。
(目的から離れているように見えるかもしれませんが、、)
当園のやっている活動まとめ
・定義
まずは定義を簡潔にまとめますと、
「雑草昆虫農法とは、自然にそこに生えてくる雑草や生まれてくる虫を生かした農法。具体的には、雑草や虫を増やし、その中で多品種を栽培するという方法。その結果、生物多様性が高まり、それらの生命体が最終的に土に還り、土壌の有機含有量を増やしてくれるというもの。」
となります。
・農法の3つのポイント
雑草昆虫農法は大きく3つのポイントがあります。
ポイント(1)多品種
まず雑草昆虫農法では、多品種の作物を育てた本人たちが食べることを想定しています。単一の作物を大量に作りそれを売ってお金を稼ぐというやり方を想定していません。
単一作物大量生産だと、すでに大量に生産できる設備を持った企業に価格で勝ることができないと考えるからです。その場合お金がなければ生きていくのに必要な作物を手に入れることができません。ですので、まずは栄養も考えた上で自分たちが食べていけるだけの作物の生産を目指します。
ポイント(2)簡易的
次に、雑草昆虫農法は、簡易的な設備や手法で行えるものであります。
雑草昆虫農法は、化学合成された農薬や肥料、ビニール資材なども利用しません。これは、環境負荷を考えてということもあるのですが、何よりそこに住む人がそれらを自分たちで作り出していない点が重要だと考えます。
もちろん化学合成された農薬や肥料、ビニール素材によって生産性が上がり、作物がたくさん栽培できるというのは大切なことだと思います。しかし逆に、それらがないと栽培ができないようになってしまうと、そこに住む人たちの自立を妨げてしまうことになるのではないかと考えます。
道具は、基本的にスコップや鎌、クワなどで行えるものとなります。大型機械設備などに頼らずとも、特殊な技術や知識を長い時間かけて学ばなくても栽培が行える形が大事だと思っています。
(長い時間学ばなくてもできることも大事、学ぶことも大事、と考えています。)
種も在来種など、その土地で長く栽培され種を取られてきたものを使えるのが良いと考えております。
また、最終的には農法を伝達する人がいなくなっても現地の人だけで栽培ができる形が理想だと考えます。
ポイント(3)干ばつに強い
三つ目は、干ばつへの強さを重要視します。そこにある資材だけで干ばつに強い農法を行うので、主に草を抜かず、刈ったものはそこに敷きます。
雑草が水を吸い上げ蒸散によって土地から水が奪われるという考え方がありますが、長期的な目線で見ると雑草があることで土壌の流出が防げ、土に水分が保たれるようになります。また、雑草を刈って畑に敷くことを続けると土の中の有機含有量が増え、それにより畑が干ばつに強くなります。
しかし、一度砂漠化した土地に雑草を生やし継続的に栽培を行える状況を作るのに、初めはどこかから有機物を持ってくる必要があるかとは考えております。このような活動に期待しています。
西アフリカサヘルにおける 都市ごみと家畜を使った砂漠化問題の解決 大山修一
・今後の発展 トータルでの価値を最大化できないか
(畑の生物勉強会などでお世話になっている日大のコジマ先生が描いてくださった絵)
雑草昆虫農法ではさらに、農園の生産する価値のうち、「作物を生産するという価値」以外の価値にも着目し、農園全体としての価値を高められないかと考えます。
農園の持つ様々な価値を高めることは、食糧の生産のみならず、所得向上の手段にもなりえます。また、食糧生産での価値のみを突き詰めると、他の草や昆虫を排し、単一作物を大量に植えるやり方に近づくと思います。
そこで、作物だけでなく、栽培の現場では敵視されることの多い雑草や昆虫にも注目してもらい、別の価値を模索できないかと雑草昆虫農法という名前をつけました。
雑草は段々とその価値が認められるようになってきましたが、主に作物の生育を助けるという点が注目されています(土壌流出を防ぐ点など)。しかし、雑草昆虫農法ではそれに加え、雑草自体を食べたり、インテリアにしたり、何か別の価値を見出せないかと研究しています。
そういったこともあり、毎年雑草など農園にいる生物の勉強会を開催しています。
また、農園には植物だけでなく、たくさんの生き物がいます。
当園には41科75種の生き物がいると日本大学の学生さんが調べてくださいました。(調査期間2018年8月22日〜2019年8月25日)
調査者 日本大学生物資源科学部 くらしの生物学科 住まいと環境研究室
他にも昆虫は、最近では昆虫食などの広がりなどで価値が見出されてきました。当園も昆虫食には注目し、こちらも研究を始めました。
さらに、食べるという価値だけでなく、体験農園など、その場所で野菜作りを楽しむという体験価値を高める活動も考えられます。
(ちなみに体験価値を最大限高めるために、農園の大きな方針は決めながら体験エリアでの栽培は多様な価値観を持つ会員様それぞれのこだわりに委ねているというのも大きな特徴です。)
農作業を活用した企業研修や、就労支援という形の農福連携なども、農園の価値を高めるための取り組みとして考えられます。
もちろん、これらの活動は「日本だからできる」など地域性もあるかと思います。しかし、場所が変わっても、その土地々々の農園が持つ栽培以外の価値もあると思っています。
・終わりに
正直なところ私は、代表が「世界から飢餓をなくすのよ」と言っているのを聞いて、数年前はやや聞き流しておりました。
(いや、だって田舎のくまモンの看板がついた小屋の中で言われて本気に受けとります?笑)
当園の事務所
しかし、ここ数年間続けてアフリカの方が農園に視察に来るようになったり、
台湾での貧困に関する学会に呼ばれて小島が発表に行ったり、昨年はアフリカで活躍する方々との接点が増え、実際にアフリカに行って農村や農地を見せていただく機会をいただいたり、
と、なんだか大目的の「世界から飢餓をなくす」という方向に進んでいるように感じています。
大目的に向かいながらも事業を続けてこられたのは、当園のサービスを利用してくださっている会員様や様々な機会を運んできて下さる皆様のおかげです。
正直、まだまだ道半ばも半ばですし、農法も形を変えていくこともあれば、飢餓をなくすために取れるより良い手立てがあるようなら、そちらに舵を切ることも考えられます。
それでもその時々で考えられる最善のアプローチで大目的に向かって進んでいきます。
これからもご指導ご鞭撻、よろしくお願いします!
書いた人:山田直明
岡山県出身。北海道大学卒業。弓道参段。株式会社えと菜園、NPO法人農スクールに所属。現在は、首都圏の農業を使った就労支援プログラムの講師を務める。アフリカ体験としては、一度ケニアに行ったことがある。食べたことある昆虫、バッタ、コオロギ、イナゴ、蜂の子、ざざ虫、蚕、ワーム(何の幼虫だったんだろう・・・)。
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