見出し画像

説明しにくいコトバが出てきたら、どうする?

説明しにくいコトバが出てきたら、どうする?

今回は、例文トレーニングでお馴染みの左先生によるワークショップのまとめ記事です。皆さんは、説明しにくいコトバに出会ったとき、どう向き合っているのでしょうか?どのようなプロセスを経て学習者に伝えているのでしょうか。今回は左先生の脳内をちょっと覗いてみましょう。

1. 例文をたくさん作る

「使い方がわからない、使い分けがわからない」「どんな導入が学習者に刺さるのか」このようなシーンにに遭遇したら、まず日本語教師がすべきことは、できるだけ例文をたくさんあげることです。この時点では、なるべく日本人が使う自然な日本語の例文を出します。特に語彙のコントロールをする必要はありません。

2. 例文を観察する

例文をたくさん挙げたら、次にすることが例文を観察することです。

日本人に説明するように辞書に載っている定義(意味)をそのまま学習者に提示するのは非常に危険です。私たち日本語教師ももちろん辞書を使いますが、学習者の立場に立って、もう一歩踏み込んで、また少し多角的に俯瞰的にコトバと向かい合う必要があります。

例文を観察する際には、以下のような切り口があります 。具体例や注意点はコトハジメのブログ記事をぜひご覧ください。

  •  フォーマル ⇔ カジュアル

  •  古い ⇔ 新しい

  •  文語的(書き言葉)⇔ 口語的(話し言葉)

  • 客観的 ⇔ 主観的

  • 他動詞(的)⇔自動詞(的)

  • 意志 ⇔ 無意志

  •  継続 ⇔ 変化

3. 説明しにくいコトバを教えるときのTips


① 例文を駆使する

日本語教師としてはこれが王道で、正解です!

日本語にしかなさそうな概念の言葉の場合、学習者の知っている語彙・表現で例文を作り、場面や例文から意味・ニュアンス・使い方を学習者に類推してもらいます。ここで学習者自身が使うシーンをイメージできるような例文を提示できる教師が、いわゆる「デキる日本語教師」です!

工夫」「やりがい」「きっかけ」などの言葉で是非やってみてください。

② パッと直訳!

学習者の母国語がわかる場合、日本語であれこれ説明するより簡潔でわかりやすいという場合があります。レッスンの流れを止めたくない時に、この方法でパッと済ませることもあります。

<例>本:book  説明:explanation

③ パラフレーズ

使い方やニュアンスが異なることもありますが、簡単な日本語へのパラフレーズ(言い換え)を提示するという方法です。知っている単語を駆使してシンプルに表現する(言い換える)という技術は、日本語教師だけでなく、学習者にとっても必要なスキルです。日本語では書き言葉と話し言葉の文体差があったりするので、それにあわせてパラフレーズが必要だからです。

<例>食事する≒食べる

④ コロケーション

よく一緒に使う語彙、および状況・文脈を提示する方法です。どの語彙とどの語彙がよく一緒に使われるか学習者自身が判断するのは非常に難しいです。先日、ある学習者が「眠い時、強いコーヒーを飲みます」と言っていたのですが、これは英語で味が濃いときに “strong” を使うからです。でも、日本語にはこの組み合わせはありませんね。

コロケーションを知っておくことは、日本語学習においてとても重要です。日本語作文支援システム「なつめ」のような無料で日本語のコロケーションを調べられるサイトもありますので、ぜひ使ってみてください。

<例文>(マンション・土地・資産を)売却する≒売る アイスクリームを売却するとは言いません。「売却する」にふさわしい名詞がありますね!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?