ショートショート05 「とあるカップル」
閑散とした数ヶ月が過ぎ、週を追うごとに、人通りが戻り始めた夜の繁華街を、一組の男女が身を寄せ合って歩いていた。別段、行くあてがあるわけでもなく、二人は、出歩いていること、そのものを楽しんでいるように見えた。
「楽しいね。」
『ええ。』
「皆、マスクを付けてるから、僕らがこうしてマスクをしていても目立たない。」
『そうね。でも、夜中にサングラスは目立つわよ?ふふ。』
「いいんだよ。このご時世、マスクさえしていれば、些細なことは、そう気にされないさ。」
『それもそうね。あぁ、不謹慎だって分かってるけど、わたし、この状況が、続けばいいな、って、そう思ってしまうの。』
「そうだね。僕らは、こうやって人目を気にせず、歩けるのだから。」
『ねぇ』
「ん?」
『わたし、キレイ?』
「あぁ。」
『これでも!?』
「あっ、ダメだよ!マスクを外しちゃ!」
『だって…あなたが、わたしを見てくれている気がしなくて…時々、怖くなってしまうの。いつか、あなたが、わたしに興味がなくなって、どこか遠くへ行ってしまうんじゃないかって、ごめんなさい。わたし、イケナイな女ね。。』
「…ごめんよ、不安にさせて。確かに、僕は、無表情とよく言われるし、目線だって、どこを見ているか分からないと思う。けど、心は、君を見てる。世界で一番愛してるんだ! 口裂け女さん!!」
『あぁ…わたし、馬鹿だった。わたしも、世界で一番あなたが好き。…大好き。
愛しているわ。
・・・・・のっぺらぼうさん。』
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