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ショートショート90 「適材適所」

 本日は、私どもの刊行するビジネス誌「日財ワークマン」のインタビューにお時間を頂戴し、誠にありがとうございます。

「お役に立てるといいのですが、どうぞよろしくお願い致します」

 御社は、日本初の妖怪を社員として採用された会社ということで、業界の注目を集めてらっしゃいますよね。

 しかも、当の社員は入社半年にしてトップの営業成績を上げられているとか。

「ええ、彼を採用した私の目に狂いはなかったと、ホッと一安心しております」

 日本初の英断に踏み切ったポイントはなんだったのでしょう?

「そうですね、彼……天邪鬼さんの熱意に心を動かされた次第です。面接時、必死に罵詈雑言をたて並べてアピールする彼の姿勢に、これは本物だと確信しました」

 罵詈雑言……ですか、それは通常ご気分を害されるのでは?

「いえいえ、天邪鬼という妖怪は本音と逆のことしか言えません。一生懸命罵倒してくれるということは、それだけ弊社を愛してくれているという事実に他なりませんから」

 なるほど。その懐の深さが、当の社員の目覚ましい活躍につながっていると言えるのかも知れませんね。

「そう言っていただけると恐縮です。……まぁ、そうは言いましても、彼の活躍の場を作れると直感的に確信したというのも理由の一つなのです」

 ……と言いますと?

「ええ、取引先と言っても付き合いやすい方ばかりではありません。中には意地悪な性格をされている方もいますし、どうにも馬が合わない、そんな方だっていらっしゃいます」

 それは、もちろんだと思います。

「まぁ、そこで、いわゆる面倒な顧客担当として彼は使える、とそう思ったのです。それは正解でした。他の社員があそことは無理だ、と匙を投げた顧客に対しても、相手が嫌な方であれば、あるほど、熱の入ったホメ殺しを行える稀有な営業、というわけでして……」


<了>

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