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『 箔押し加工立ち会い 』 のススメ

コスモテックの青木です。

コスモテックの新サービス 『 箔押し立ち会い 前田屋 』 を開始するにあたって、コスモテックと馴染みの深い4名の皆様から 「 ( コスモテックの ) 箔押し立ち会いとは? 」 について語っていただきました。

津田淳子さま( デザインのひきだし 編集長 )
小玉文さま( グラフィックデザイナー )
西谷浩太郎さま( 平和紙業 販売推進本部 )
原田郁子さま( ミュージシャン・クラムボン )

4者による 「 加工現場に立ち会うこと 」 とは?

コスモテックは今まで数多くのお客様と加工現場での立ち会いを行なってきた中で、僕も職人たちも 『 お客様の求める形をつくる  』 『 お客様に喜んで頂きたい 』 その一心で取り組んできました。 ただ、そのような中、ふと立ち止まって考えてみた時、『 どうしてみなさんご多忙にも関わらず、わざわざお時間を作って下さるのか 』 という問いが突然コスモテックの職人たちの頭に浮かんできたのです。

「 僕等にとっては日常の出来事。
しかし、お客様にとっては当たり前ではない、特別なお時間なのでは!? 」


蓄積された今までの加工現場立ち会いの経験。
「 なぜ、わざわざ ? 」 を掘り進めて行った時、お客様の目に映る、今まで僕等コスモテックが見えていなかった・意識もしていなかったコスモテックの現場の姿・在り方が見えてきたのです。


◉ 津田淳子さま( デザインのひきだし 編集長 )

私がコスモテックで箔押し立ち会いさせていただいたのは、もう何回になるのだろう。

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写真 『 デザインのひきだし13 』 青焼き表紙の箔押し立ち会い時


だいたいは 「 こんな素材に押せるものでしょうか? 」 とティッシュペーパー10枚重ねを持って行ったり、紙になる前の原料であるパルプシートを持って行ったり( でっこぼこで、ふつう印刷加工できるような代物ではない )。

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写真 『 デザインのひきだし26 』 の表紙はパルプシート!


一番最近だと、前田さんが開発した 「 テープスタンピング 」 を 『 デザインのひきだし 』 表紙に加工してもらいたくって、そのテストのときに立ち会いに伺いました。

テープスタンピングは、それまでに前田さんがさまざまな素材 × テープでテストしていたサンプルをもらっていたものの、「 こんな感じにしたい! 」 という表紙イメージを実際に加工してもらったとき、その通りになるのかがわからなかった。もちろん頭のなかで想像しているんですが、特殊印刷加工は、その想像とは違う結果になることも多いのを、経験上、知っていたので。

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テープスタンピングの加工立ち会い時も、まさにその通り。
用意していた、印刷を入れたチップボールに加工してもらったものの、なんだかピンとこない。もっとテープと地の紙との質感差がでると思ってたけど、そうならない。

急遽、印刷していないチップボールの裏面にテープスタンピングを押すテストをしてもらったり、またテープの絵柄を天地逆に変えてテストしてもらったりと、こちらが思いつくまま、 「 こうしたらもっとおもしろい仕上がりになるのでは? 」 という提案に、嫌な顔ひとつせず、すばやく対応してくれる。

そうして行ったテストの結果、当初思っていた効果以上の仕上がりになり、本番のテープスタンピングの仕様が決定できたのだった。


現場に立ち会わせてもらい、そこで自分が思っているイメージを伝える。

そうすると、箔押しや加工でそれに応えるべく、現場の方々がシュッと対応してくれる。

立ち会いで意思すり合わせができたからこそ、箔押しや特殊加工の効果を最大限生かしたものができあがるのだと思います。

◉ 小玉文さま( グラフィックデザイナー )

デザインデータが完成した後でも、実際に立ち会いをして現場で気づくことが沢山あります。

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写真『 竹尾淀屋橋見本帖の展示 ポスター 』 エンボス加工立ち会い時


BULLET Inc. の代表で、グラフィックデザイナーの小玉 文です。

日本酒 『 人と 木と ひととき 』 のラベルや、竹尾淀屋橋見本帖の展示 『 PAPER & TRIAL 』 でのエンボス作品制作、弊社年賀状の制作などなど、コスモテックさんと前田さんには、さまざまな箔押し加工・エンボス加工でお世話になっています。


コスモテックさんの魅力は、デザイナーの 「 こういうものがつくりたい! 」 という希望( 無茶振り? )に対して決して嫌な顔をせず、前向きに( むしろ前のめり気味に )応えてくださるところ。

難しい加工に共にチャレンジしてくださり、作品の完成度を高める画期的な提案をいただくこともしばしば。たった一艘で敵艦隊( 数々の難題 )に挑むデザイナーにとっては、側面から援護射撃してもらえる戦友のような存在です。


デザインデータが完成した後でも、実際に立ち会いをして現場で気づくことが沢山あります。圧を強めてグッと押し込むとデザインが更に映えることに気づいたり、想定外の色の箔を使うことで、予想以上の仕上がりになったり。

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写真 小玉さまデザインの加工と向かい合うコスモテックの前田


地道な調整のため、何度も繰り返し機械に向かう寡黙な前田さんの後ろ姿に、惚れること間違いなしです。

◉ 西谷浩太郎さま( 平和紙業 販売推進本部 )

誰にとっても一目瞭然の加工現場を目指しているから実現できること。

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正確に数えたことはありませんがこれまでコスモテックさんに立ち会いに行った回数はまちがいなく100回以上、もしかしたら200回を超えているかもしれません( もしかしたら立ち会い回数だけでみると第1位? )

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写真 デザイナー × 西谷さま × 青木(コスモテック)の
数多くの立ち会いから生まれた製品・作品を
一挙公開した展示会 『 謝恩会 』(2014年)


私の勤める会社からコスモテックさんまでは電車で片道約1時間、往復2時間くらいかかるため、そこまでしてわざわざ立ち会いに行く理由をこれまで改めて考えたことはなかったのですが、今回 「 コスモテックの箔押し立ち会いとは 」 についてコメントを考えるのを機に振り返りながら考えてみました。

そして数ある箔押し立ち会いの魅力や重要性の中から 「 一目瞭然 」 をキーワードにご説明したいと思います。

コスモテックさんの箔押しの機械はとてもシンプルです。

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最近は印刷機も加工機もデジタル対応になっていて、パソコンの 「 Enter 」 を押すと次の瞬間には、例えば16ページの写真集が製本された状態で仕上がって出てくるというのが一般的です。機械の中を開けて説明して頂いても、全く何がどうなっているのかがわからない( 実際のところ機械の中を開けてもそのほとんどがカバーで覆われていて見えません )。

画像、映像などで印刷や加工の原理は詳しく説明して頂くので、頭の中では 「 こういうことなんだろうな 」 という想像は多少つくのですが、やはり、体感というか肌感覚みないたなことがわからないのです。

一方でコスモテックさんの機械は非常にシンプルです。
上下する箔押し機の上部分に金属の版を取り付けて、下部分の天板に紙を置いて、金属版と紙の間に箔のフィルムを通してスイッチオン!

動画 西谷さまによる画集 『 宇宙人 』 の加工立ち会い時


目の前で金属版が下がってきて紙に圧をかけて押されているところを見ると、言葉や画像で説明するまでもなく、体感として何が起きているのか理解ができるのです。そして、むしろ上手くいかない場合に、目の前で起きていることをよく観察すると、原因が見え、その場で現場の職人さんと会話をし、調整をすることで解決することもあります。


さらにもう1つ、コスモテックさんでは上手くいかない時にこそ 「 チャンス 」 が潜んでいることがあります。箔押しの現場で、上手くいかない場合の一つに 「 想像していた仕上がりと異なる 」 ことがあります。

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写真 特殊紙 × 箔押しの展示会ポスターにコロコロをかけて、
箔のバリを除去している西谷さま この連帯感も立ち会いならでは。


例えば、紙との相性が悪く、箔が定着しないなどもその1つですが、そうした想像とは異なる仕上がりが、今回の加工では使えなくても、次、別の機会の加工時に使える 「 新しい発見 」 に繋がるのです。

コスモテックさんの機械や加工そのものがシンプルであるため、目の前で起きていることを観察することで、解決策はもちろん、新たなクリエイティブのヒントを見つけることができるのだと思います。

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こうした現場での立ち会いは、コスモテックさんが全てをオープンにして、その場で箔の種類を変更したり、会話をしながら圧や熱など機械をその場で微調整することで、誰にとっても一目瞭然の加工現場を目指しているから実現できることではないかと思います。

コスモテックさんでの加工立ち会いの経験は、その他の印刷や加工の立ち会いにも共通することだと思っており、デザイナーやクリエイティブな人たちは、デジタルでのものづくりが更に広がる中で、今後こうした肌感覚を持っておくと強い武器になると思います。

◉ 原田郁子さま( ミュージシャン・クラムボン )

初めてコスモテックさんに伺った時の興奮をまだ覚えています。

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打ち合わせに通してもらったお部屋にはこれまでのお仕事、本の装丁や、パッケージ、ラベルなどがズラッと並んでいて、新しいことがはじまる予感に満ちていました。

手にとると、大胆でかっこいい、掟破りとも言えるような見事な箔押しが施されていて、「 わあ!これも?こんなことも?できるんですかー!? 」 と驚きました。

一つ一つ、実現することは簡単なことではないだろうこと、これまで培った技術を踏襲しながらも、何か業界全体を変えていこう、面白いことをやろう、という力強さ、パンクの精神も感じられました。

私たちは、長らくお世話になってきたメジャーレーベルから離れて、自分たちでレーベルを立ち上げてやっていこうという矢先のこと、武道館の会場で販売する自主CD 『 Slight Slight 』 のジャケットをコスモテックさんにお願いできることになりました。

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加工現場で見つけた脚立にカメラを置いて撮影する原田さま
写真提供 : 松見さま(トロピカル)
※ トロピカルはクラムボンのマネージメント事務所・レーベル


それは、音楽はもちろんのこと、楽曲をくるむビジュアルにおいても、より面白いものをつくる、そしてそれをどう届けるか、という探求が一気に広がった瞬間でもありました。

これからの道すじを照らすように、角度を変えるとプリズムのようにいろんな色に光る紙に刻印のように箔押しをしていくデザインとなり、デザイナーの高橋くん共々、実際に作業行程を見せてもらえたことは大きな喜びでした。

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スタッフの皆さんの顔をみて、手元をみて、こんな機械で、こんな風に、本当に1枚1枚押していくんだと実感することができました。

この出会いを機にモメントツアー( 新曲を演奏してサイン会をしながら手売りして廻るツアー )、モメントシリーズ( 篠原紙工さん × コスモテックさん × 東北紙業社さん というタッグでつくる、手触りや遊びを含んだパッケージCD。 現在も販売店を募集中です )へと広がっていきました。

『 モメントe.p. 2 』 ではコスモテックさんの圧巻のデボス加工( !!! )をお楽しみいただけます。

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写真 表面がもっこんもっこんの型押しなのだ!


どんなものでも、それがどんな風にして生まれたのか、過程を知ることは、そのものにより愛着を持つこと、一人ではできないこと、たくさんの関わりの中で奇跡的に成り立っていること、ものづくりの真髄へ近づいていくことでもあるんじゃないかなと思います。

いつもありがとうございます。
コスモテックさんの静かなる情熱に、ぜひ触れてみていただけたら、私も嬉しいです。

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『 Slight Slight 』 の箔押しで使用した金属版
写真提供 : 原田郁子さま(クラムボン)

Special Thanks
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◉ 『 箔押し立ち会い 前田屋 』 ご依頼はこちら

 販売するものは 『 コスモテックの箔押し体験 』 です。


【 箔押し加工 】

有限会社コスモテック 現場リーダー 前田瑠璃
〒174-0041 東京都板橋区舟渡2-3-9
TEL:03-5916-8360 / FAX:03-5916-8362

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