「箔押し加工で海苔表現」
こんにちは、現場の前田です。
今回は、株式会社キギの大坪メイさまにお声がけいただきまして、江戸時代からつづく老舗 山本海苔店さまの、国内外の方に向けたブランドカタログの箔押し加工をお手伝いさせていただきました。
加工を施したのは、この冊子を取り巻く黒い部分。
そう!こちら、箔押し加工によって表現した 「 海苔 」 なんです。
海苔カタログの制作には、とても嬉しいことに、私が以前 note に書かせていただいた箔押し実験の記事を読んでくださったことがきっかけとなって、お声がけくださいました。
■ 箔押し実験から生まれた海苔表現
その箔押し実験とは、版の表面を叩く、削る、別の素材を貼るなど 「 自分で手を加えた版で箔押しするとどんな表現ができるのか 」 というテーマのものでした。その中の、版にシールを貼り付けて押してみるという実験が海苔を表現するのに良いのではないかということで、大坪さま立ち会いのもと再実験。
黒箔でベタ押しをした後、大坪さま自らシールを貼り付けた版で実験してみると…
結果、シールでは耐久性が弱いため、押す回数が増えるごとに凹凸具合が弱くなってしまうことや、熱を加えて押すと箔の色味が変化してしまったり、シールの糊が溶け出し、ベタ押しした黒箔が白くなってしまうこと、海苔としての表現力が弱いなどの問題が起こりました。
やはり頭で想像するのと実際にやってみるのではギャップがありました。今度は、海苔から抽出した海苔テクスチャーの版を使用して校正をおこないました。
■ 目指すは本物の海苔!
箔色は黒のツヤ有りとツヤ無し箔の2パターンに。
紙は厚めのものからペラペラの薄いもの、色は白と黒の2色の紙を使用し、前回の実験を踏まえて黒箔でベタを押した後は、熱版の熱を冷ましてから海苔テクスチャーの版でデボス( 型押し )加工を施しました。
しかし、なんと一回押しただけではまったく海苔の感じがでない…
どうすれば海苔に近づけるだろうかと考えた末、「 同じ版で何度も押してみたらどうなるのだろう? 」 という思いつきから、同じ版で適当な箇所を圧を強めに何度も押してみました。その回数15回!こんなに1枚の紙に何度も押したことはありません。
すると、なんと!
ランダムに圧を強めに何度も押したことにより、海苔の細かな凹凸感とその凹凸による独特の黒い輝きを表現することができ、まるで本物の海苔のようになりました。
特に、海苔に近しいのではと選んだ、光沢感のあるペラペラとした薄い紙、オーロラLが海苔の表現に非常に適していたことも功を奏し、本番の紙もオーロラLを使用しています。
■ 型押し10回!ランダム押し!
本番は黒のツヤ有り箔を使用し、ランダム押しの回数をなるべく少なくするため、海苔のテクスチャー版の大きさを大きくして加工を施ししています。版を大きくしたことにより、デボス( 型押し )加工をなんとか10回程度にまで減らすことが可能になりました。
それでも10回も押すことになるのですが、実はこの10回は海苔独特の凹凸を表現するためにはどうしても必要な回数なのです。
仕上がりの大きさに対して、ランダムに押した時の凹凸のバランスを満遍なく行き渡るようにするには最低10回程度は押さなければならないのです。
■ まずはやってみること
1枚に10回も押す、というのは大変な作業ではありましたが、なんとか本物の海苔に近づけられないかと方法を考え、 「 やってみても変わらないかもしれない 」 という思いつきのアイディアでも、常識や先入観にとらわれずとにかく行動に移してやってみる。
その結果、自分の感覚でランダムに押すという経験したことのない加工に挑戦でき、また、その一手間によって新しい表現方法が生まれ、おなじみの本物の海苔に近づけることができました。
まるで白いご飯を海苔で巻いたかのようなおいしそうなカタログは、その内容も日本人の方でもなかなか知らないことまで掲載されており、中身も外見も楽しんでいただけるカタログになっております。
お手にとって驚かれること間違いなしです!
大坪さま、この度はお手伝いさせていただきありがとうございました!
【 箔押し加工 】
有限会社コスモテック 現場リーダー 前田瑠璃
〒174-0041 東京都板橋区舟渡2-3-9
TEL:03-5916-8360 / FAX:03-5916-8362
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