見出し画像

「『 物語が本になるまでの物語 』全面箔押しポスター」

こんにちは、現場の前田です。

今回は青森・八戸市にある八戸ブックセンターにて開催される、造本家 新島 龍彦さまの 『 物語が本になるまでの物語 』 展示会告知ポスターをお手伝いさせていただきました。

画像1


紙は2種、ハンマートーンGA(スノーホワイト)・ハーフエア(アッシュ)。箔色は3種、黒ツヤ箔・P-7白箔・銀消し2B箔を使用しています。

1版で5パターンのデザインを1枚1枚押し位置を合わせながら、合計10種類以上の全面箔押しポスターを生み出しました!

加工の際には新島さまがコスモテックへ足を運んで下さり、7〜8時間もの立ち会いのお時間をつくってくださいました。1パターンずつ、目の前で箔の色や押し位置を吟味しながら加工をおこないました。

画像2

どちらの箔色がよいか検討中の様子
左は私・右はコスモテック営業の青木


新島さまデザインによる全面文字で構成されたポスターへの箔押しは、印圧を強めに加工しており、見る角度によって箔押し部分の凹凸や箔の光沢を感じることができます( 顔料の黒箔や白箔も印刷とはまた違った光沢を感じることができます! )

画像3
画像9


一見シンプルに見えるポスターからは、新島さまのこだわりと箔押しの味わいが感じられる仕様になっています。

番外編として、箔押し位置をランダムに押すバージョンも加工させていただきました!ランダム押しによる不規則な文字の重なりは、躍動感があり通常版とはまた違った雰囲気のあるポスターとなっています。

画像4

紙面上を躍るような、漂うような、
箔押し表現された文字・文字・文字・・・


ポスターはこれだけではありません…!
和紙の豪華版ポスターにも挑戦させていただきました。

画像13


脅威の箔押し16回押しを実現

無題

新島さまの和紙・豪華版ポスターの設計図。
大きさは約650×970mm。 箔押し回数は全16回押しのデザイン。


こちらの和紙は柳川杏美さま( https://www.instagram.com/yanagawa_azumi/ ) 製作による美濃楮紙で、大きさは 約650x970mm と大きめのサイズに、重さが3.5匁( もんめ )もあります。 ※ 1匁( もんめ ) = 3.75g

美濃の和紙は他の産地に比べ、和紙の繊維同士をしっかりと絡ませるように漉くことで、薄くても繊維の密度が高く、強度も強い和紙になります。

薄く、且つ均一な地合いの良い( 抄きムラがなく平滑性に優れた )紙をつくろうとする意識が高いそうです。加工に使用された和紙を広げて持てばエアコンの風で優雅になびいてしまうほどの極薄な紙の厚みですが、紙のムラがなくとても美しい紙だと感じました。

加工には、顔料の黒ツヤ箔を全面に使用しています。
正位置の文字と反転した文字で組み合わされたデザインを、こちらも1つの版で一箇所ずつ、丁寧に位置を合わせて加工しています。

画像6


非常に折れやすく繊細な和紙への加工。
慎重に箔の位置を合わせながら加工させていただきました。


注目していただきたいのが、この反転されている文字。

画像7


通常、箔押しは押す対象物の上に箔のロールを通して、その上から版で熱と圧をかけて箔を圧着させるのですが、新島さまから「 和紙の下に箔を敷いて押すとどうなるのか? 」という驚きのご提案が。

こちらも「 やってみよう! 」の精神で実験( 紙の表面を裏返し、その下に箔を敷いて熱圧着させる )を試みた結果、なんと反転された状態でしっかり箔をのせることができました。

画像13


和紙が非常に薄いものであったため、下に敷いた箔にも熱が伝わりやすいことが反転押しを可能にしたと推測します。

反転技法によって加工されたポスターは、繊細で美しい美濃和紙に交差する文字が層のように見え、平面でありながら奥行きを感じとることができるポスターとなっています。

画像13
画像11

展示会キャプションより( 文 新島龍彦さま )
Foil Stamp Art Work 2020
限定一部販売( 制作に使われた金属版付き )
¥150,000-

本展覧会のために制作したグラフィック作品。
岐阜県美濃市で制作された手漉き和紙に、本展覧会のグラフィックを箔押し加工で全面に施している。

通常一つの版では同じ向きの箔押し加工しかできないが、今回の作品では正面と反転の2種類の箔押しを1つの版で行うという反転箔押しを試た。箔押し加工は有限会社コスモテックの青木政憲・前田瑠璃に依頼している。

美濃は障子紙に使われる和紙を多く生産していた産地で、光に透かした時のムラが少なく、細く長い繊維同士をしっかりと絡ませるよう丁寧に漉くため、薄い紙でもしっかりとした強度があることが特徴。使用した和紙は職人の柳川杏美によるもの。

和紙が持つ自然な白の上に、深い黒で箔押しされた文字が整然と並ぶ。言ってしまえばただそれだけのことなのだけれど、何故だか、じっくりと見つめていたくなる。

箔押し:有限会社コスモテック
和 紙:薄美濃紙 3.5匁 柳川杏美


新島さま、この度はコスモテックでの加工立ち会いに足を運んでくださいましたこと、また反転押しという新たな技法に挑戦させていただき、ありがとうございました!


新島さまの展示は2020年3月28日(土)~6月14日(日)開催になります。
みなさま足を運んでみてはいかがでしょうか。

ギャラリー展 「 造本家 新島龍彦展 物語が本になるまでの物語 」
期間 : 令和2年3月28日(土)~6月14日(日)
場所 : 八戸ブックセンター ギャラリー
入場料 : 無料
主催 : 八戸ブックセンター

造本家 新島龍彦さまプロフィール

1991年生まれ。
多摩美術大学卒業後、株式会社竹尾にアルバイトとして勤務。
2014年に有限会社篠原紙工に入社し、手加工部門のオペレーターとして勤務。大学卒業後も会社に所属しながら個人としての造本活動を継続。

物語を紙に宿して形作ることを造本と捉え、形態やジャンルに捉われるのではなく、内容にどこまで本が寄り添えるかを思考の軸として本作りを行っている。

本の生まれ方・作られ方・売り方までを本作りの営みと考え、これからの本の在り方を日々模索している。

WEB : https://tatsuhikoniijima.com/
Instagram : https://www.instagram.com/book_tailor/

画像8
画像14


【 箔押し加工 】
有限会社コスモテック 現場リーダー 前田瑠璃
〒174-0041 東京都板橋区舟渡2-3-9
TEL:03-5916-8360 / FAX:03-5916-8362

この記事が参加している募集

私のイチオシ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?