スマホの中では絶対にできない、星空の「本物体験」イベントを作っていく
【仕事の内容】星のおもしろさを伝える!星空体験プロデューサー
星空体験プロデューサーとして、子どもや入門者向けに星空観察会やワークショップを開催しています。
「星空ガイド」として活躍したい人向けて講座のディレクションもしています。
【今の仕事を始めるまで】会社は辞めたけれど、宇宙に関する仕事がしたい!と思った
そうです。広報の仕事でした。
望遠鏡や宇宙のおもしろさを伝えることによって、商品を売るための種まきする部署ですね。そこで、お客様によりわかりやすく面白さを伝えるために、子どものころ好きだった星について、再び学び始めたんです。
望遠鏡で天体を見る技術や星座について勉強することで、自分の中の「星が好き」の気持ちと「誰かに自分の好きなことを伝えたら、すごくハッピーになれるんだな」という実感がありました。
5年弱勤めて、夫が高知にいたので、結婚に伴う転居ということで退社しました。
結婚式を挙げたあと、高知に本格的に移住する前に4カ月間世界を旅したんです。ほんとうは1年間の旅を予定していたんですが、体調を崩してしまいアジアまでとなりました。
その合間に新婚旅行をはさんでいます。
インド滞在中、南部にあるコーチンで夫と合流しました。
日本語ではコーチン、現地語ではコーチ、高知と同じ音だし「インドおもしろそう」ということで現地集合・現地解散しました。
星も見たかったけど、バックパッカーの経験をしたかったんです。
海外に行くことが好きで、違う文化の中での体験、違う常識、違う言語や生活に興味があって。
ただ見聞きしただけでは体験とはいえないだろう、行ってみよう!と思いました。
わたしは人生において「本物体験」に大きな価値があると思っています。宇宙も、宇宙旅行はなかなかできませんが、宇宙についての「本物体験」をしたいと考えていました。
ビクセンは辞めたくて辞めたのではなかったし、やはり宇宙に関する仕事ができないかと思ったんです。会社員時代に培った、星を見せるノウハウをもとに、少しずつでも何かやりたいと。
でも、続けるためにはお金が必要なので、起業という道を選びました。
高知は起業文化がある土地です。自治体の起業支援プログラムに応募して、自分の事業を考えて行くという経験をしました。
その後、出産して子育てが落ち着いたところで、本格的に取り組もうと開業届けを出しました。
開業前にも、高知県立牧野植物園で、夜間のコンテンツを作ったりしました。
1958年に開園した歴史あるすごくおしゃれな植物園で、夜間開園でのコンテンツを探している、ということでご縁がつながりました。ここで星空体験プロデューサーとしてのスタート、最初の仕事となりました。
しばらく続けていくうちに、星のことを伝えられる自由に活動している人=イワシロという認識がされていったんだと思います。
このころ、高知みらい科学館のオープンによって、ずっと県内にはなかったプラネタリウムが県内にできたということで、星に興味を持つ人も増えました。いいライミングだったのかなと思います。星のイベントに足を運ぼうという人も徐々に増えている気がします。
【仕事について】「本物体験」を届けたいからこその行動が基盤に
大変というより工夫していることですが、星を見る人が集まる場所に顔を出すようにしています。
高知には、星を見る優秀な先人がたくさんいらっしゃいます。
コメットハンターの関勉さん、高知天文ネットワーク、芸西村天文学習館で講師をされている方、各地の星空同好会など、星好きさんが集まっている組織があります。
こうした方々とつながるのも、宇宙という共通項があっての賜物。出身地が近ければ親しみが湧くように、「宇宙好きなの? 何やってる人なの?」という感じで話がつながるんです。
行動は大事、「Just do it!」です。植物園の件も起業支援プログラムからの紹介でしたし、そもそもプログラムに応募したから実現したわけです。
子どもが目を輝かせる瞬間は、なにものにも代えがたいですね。月を見せているときに、子どもが望遠鏡をのぞきこんで「やばっ! 超見えるんだけど!」などと言われると嬉しいです。さらに、「お母さん、これやばいよ!」と言っていたりすると、「よしっ!」って思います。
親子で同じものを見ると、帰ってからも会話が続くはず。
その場の感動だけでなく、あとからも語ってもらえる体験を目指しています。「お母さん見てみて!」から広がることが嬉しいです。
体験を共有してほしいという思いは、自分自身の苦い経験があるからかもしれません。
小学生のころオゾンホールの話題がニュースになったときに、わたしは宇宙が好きだったし、地球という星にも興味があったから、「やばいじゃん!」と思ったんです。
でも、夢中になって友だちにオゾンホールの話をしたら、「なにそれ」と言われてしまったんですね。
共感してもらえないというのは、とてもさみしいことです。そんな経験があったから、子どもに芽生えた宇宙への興味を摘み取らないであげたいと思っています。
宇宙のことって「よくわからない」と言われがち。
だから、子どもの話し相手となるときに、「こんな星も知ってる、ロケットの事も知ってる」と子どもが話してくれたら、「すごいね!よく知っているね」と言ってあげたいです。
おうちに帰ってからも、周りの大人が話を聞いてあげたり、本や図鑑を買ってあげたりといったことから、興味の芽が育つといいと思います。
そこから新たに、すごい技術や芸術、小説や音楽が生まれてくるんじゃないかと。子ども=未来ですから。
色々な体験をさせてあげたいと思っています。まずは星から。(笑)もうすぐ3歳ですが、0歳のころから、一緒に星を見ています。
娘がなかなか寝付かない夜に抱っこで散歩して、「あれなにー? 光ってるね」と星や月を見たり。最近は、本できれいな星雲の写真などを見つけると、「これ見て、うちゅ!」と言ったりします。
イベントは土日が多いので、夫に子どもを預けて出かけます。本番は夜ですが、昼間から準備があります。
朝4:30に起床して、2時間くらいイベント準備。
7:00に子どもが起きるので食事をさせて着替えさせて、家事。
10:00くらいから車に荷物を載せたりなどして昼には出発します。仕事はだいたい日没後1時間くらいから始まります。冬は18時くらいから、夏は20時以降。
イベントが終わって帰りは遅くなると22:30とかになるから、子どもはもう寝ていますね。
【星が好きになったきっかけ】子どものころ好きだった星の世界を、就活で思い出した
星に興味がわいたのは、小学生のころ。小学校5年生のときに、ニュースで皆既月食があると知って、両親に望遠鏡を買ってもらったんです。
ビクセンの50㎜屈折式・経緯台、今も現役で使っているんですよ。土星の輪が見えるくらいの精度です。
月が欠けていくのを見たり、家族で流星群を観に行ったりといった経験を積み重ねて、だんだん星が好きになっていきました。
でも、中学校からは勉強や部活が忙しくなって星どころじゃなくなり、高校も星に関係ない部活に入っていました。大学2年生になって天文同好会に入ったんですが、かろうじて籍を置いている幽霊部員で、合宿とかイベントのときにしか行かない人でした。
大学は政治・経済学部で、理系と文系半々の場所。
早稲田大学に行きたくて、都会に行きたい!という気持ちがあって、とにかくおもしろい人がいる環境に身を置きたかったんですよね。
大学卒業が近づいて、就活中に自分が好きなことを考え直したんです。
「そうだった、星が好きだった」と。買ってもらった望遠鏡は、確かビクセンという会社だったと、ホームページを見て応募した…というのが、就職までの流れです。
【仕事のスキルの積み方】宇宙好きな先輩たちと、チャレンジさせてくれる上司に恵まれた会社員時代
星に関する技術は、社内にたくさんいる望遠鏡や星が好きな人たちから教わりました。
星を見る旅行にも行きましたが、そこで防寒着はこうしたほうがいいとか、望遠鏡を見せるときにはこうしたら、といったことを教えてくれる文化の会社でした。
仕事のやり方、進め方を学べたのは、上司に恵まれたおかげですね。
小さい会社だったので、大きな展示会の箱作りを入社1年目でいきなり任されたんです。そのときに、「失敗してもわたしが責任取るから大丈夫」と言ってくれる上司で、恐れずにチャレンジさせてもらいました。
女性は営業部に1人、広報もわたしとデザイナーのみでした。
ただ、当時「宙(そら)ガール」を会社が提唱していたことや、そこから数年間はたまたま女性の入社が多かったことから、女性は増えていきました。
【プライベートについて一問一答】
キャンプに行くこと、コーヒーを飲むこと。
アウトドアが好きなので、植物園でお弁当食べるとか。自然の中でのんびりすることですかね。
学研のひみつシリーズでした。
「宇宙のひみつ」「星座のひみつ」など、夜中にこっそり見て窓の外の星と見比べていました。親がいろいろな本を買ってくれていたんです。
ナショナル・ジオグラフィックスのキッズ版 も購読していました。
父がアウトドア好きで、家族でキャンプに行ったりしていたので、自然科学が好きなのは、親からの影響ですね。
大学3~4年のころに旅に目覚めたんですよね。
初めて行ったのはウユニ塩湖。星が湖面に映ると聞いて。
でも、雨期じゃないと映らないらしいんですが、わたしが行ったのは乾季。理由は、地面に寝ころがれるから。
シーズンオフで、夜は誰も来ないような環境で、寝転がって南半球の星を堪能しました。
星がきれいといえばインド。ミャンマーとの国境の電気も水道もない村で、天の川の写真を撮りしました。
それから、キルギスのだだっ広い草原が月に照らされる様子を見たり。星を全身で浴びるような体験をしています。
【これから宇宙を目指す方へ】
ビジネスとしてもう少し活動できる範囲を大きくしたいです。今はひとりでやっているためイベントの数も限られるので、一緒に働く仲間がほしいですね。
わたしは平日の夜は活動できないので、平日夜に動ける人と、プロジェクトベースでコラボしたいです。
新しいサービスや事業をどうやったら実現できるのか、ということに取り組んでいる最中なので、うまくいくといいなという感じです。
「好きなことをやっている人は強い」ということは思いますね。
たとえば星に関することだったら事務作業であれ何であれ、苦に感じず働けるという人は強いなと思います。
好きで体験したことは全部つながっていきますよね。
スマホの中ではなんでも検索できるけれど、それは検索したら出てくる与えられたもの。自分が経験したものは誰も奪えない。
わたしが「本物体験」を重視しているのは、そういうところです。
大きな目標を立てて、ここでこうしなきゃいけないというのではなく、できることから始めるといいですよ。動いてみたら、いいことあるかも、と思います。
自分が好きなことや、夢中になったことを大事にしてほしいです。
UchuBizで「コスモ女子 宇宙のお仕事図鑑」の連載が2023年12月から始まりました!
イワシロアヤカさんの最新の記事はこちらからご覧ください。
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〇宇宙のお仕事図鑑とは?
このプロジェクトのきっかけは、「宇宙関係の仕事につきたかったけど、宇宙飛行士や天文学者しか知らなかった。」という声がコスモ女子のメンバーからたくさんあがったことでした。
宇宙のお仕事図鑑では、宇宙関連のお仕事をされている方々に取材をした記事を発信していきます。
文系の職種も理系の職種も(文理で区分する必要もないかもしれません)、大きな組織の中でのお仕事から、宇宙ベンチャーや個人でのお仕事まで、「宇宙のお仕事」をこのnoteで発信していきます。
〇コスモ女子とは?
「コスモ女子」は、宇宙業界で活躍したい女性中心のコミュニティです。
宇宙に関する知識を身につける「宇宙の基礎講座」や、宇宙に詳しくなくても楽しめる交流会などのイベントを毎月開催!
コスモ女子から発足した、コスモ女子アマチュア無線クラブが人工衛星を2024年に打ち上げる予定です。
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