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【宇宙の基礎講座★第1回】 第一線で活躍されている”宇宙ビジネス コンサルタント”大貫美鈴氏による「世界の宇宙ビジネス」について学ぼう

2023年12月13日にコスモ女子は【第一回宇宙の基礎講座】を開催しました。
第一回目は宇宙ビジネスコンサルタントの大貫美鈴氏(以下、大貫氏)を講師にお招きして「グローバル化した宇宙ビジネスが開く新たな市場と投資」をテーマにお話しいただきました。


【プロフィール】
大貫美鈴氏
宇宙ビジネスコンサルタント。清水建設宇宙開発部署、JAXAでの勤務を経てスペースアクセス㈱を設立、宇宙ビジネスコンサルタントとして欧米の宇宙企業のプロジェクトに参画するなど、国内外の商業宇宙開発の推進に取り組む。2020年春から現職で宇宙ファンドの運用や調査に携わっている。経済産業省国立研究開発法人審議会委員、ニュースペース国際戦略研究所理事、国連世界宇宙週間理事ほか。著書に「宇宙ビジネスの衝撃」(ダイヤモンド社)ほか。

成長し続ける世界の宇宙ビジネス

まずは宇宙ビジネスコンサルタントの大貫氏より宇宙ビジネスのこれまでの成長と現状についてお話しいただきました。

大貫氏は現在、宇宙ビジネスコンサルタントとしてスパークス・イノベーション・フォー・フューチャー株式会社(以下、スパークス社)に所属しながら、投資会社の調査や資金の運用などを行っています。
宇宙ビジネスコンサルタントとはベンチャー企業やプロジェクトへの投資などお金に関することだけでなく、投資後の成長を支援したり、また投資をした会社の事業支援などを行う仕事です。
スパークス社の中にある投資会社の一つ、『宇宙フロンティアファンド』は100億近くの資金をトヨタやメガバンクなどから調達しており、すでに14社のベンチャー企業への投資を行っているそうです。

▲ 宇宙フロンティアファンドについて(コスモ女子撮影・編集)

大貫氏が宇宙産業への可能性を感じたのは、まだ民間企業の宇宙開発部門で働いていた頃、民間で初めて有人飛行を成功させたスペースワンシップを目の当たりにした時でした。
今後、このスペースワンシップのように民間企業の参入によって宇宙開発が大きく進むのではないか、と予感したところからだったそうです。
それに欠かせないことが「資金調達」であることを悟った大貫氏は、宇宙ビジネスコンサルタントとしてスペースアクセス株式会社を設立し、今なお商業宇宙開発の推進に精力的に取り組まれています。

国の予算を使える政府とは違い、民間企業は自分たちで資金調達をしたり市場を開拓しなければなりません。
宇宙ビジネスの資金調達額はどのくらいなのかというと、2005年~2020年の15年間で約3倍(25兆円→67兆円)に、さらに今後も伸び続け2040年には150兆円〜405兆円まで伸びると予想されています。
また、この投資先で約8割を占めているのが民間企業で、政府の予算は2割を切っているのが現状です。
この数字を聞いただけでも、民間企業が積極的に宇宙開発に取り組み、宇宙ビジネスが着実に成長していることを感じられます。

世界の宇宙開発に携わっている企業数は現在12,000社に上り、うちベンチャー企業は3,000社、そのベンチャー企業へ投資する投資会社は5,000社以上になります。今では政府に代わり、イーロン・マスクのスペースX社、ジェフ・ベゾスのブルーオリジン社など民間の宇宙企業が宇宙開発を牽引しています。

2030年には宇宙開発を行うベンチャー企業が1万社に増え、10年足らずで3倍以上に膨れ上がるとされています。
ベンチャー企業のほとんどはアメリカの企業ですが、ついで中国、イスラエル、他国も伸びてくると予想されており、大貫氏のスパークス社も宇宙ビジネスを支える中心となる投資会社として活動されています。

なぜ宇宙に投資をするのか?地球と宇宙をつなぐスペーストランスフォーメーションとは?

▲ スペーストランスフォーメーションとは(コスモ女子撮影・編集)

ここ15年で約3倍にも成長し続けている宇宙産業ですが、この宇宙産業の発展に欠かせないのが、スペーストランスフォーメーションです。
スペーストランスフォーメーションとは、「宇宙を開発する」、「宇宙を利用する」、「宇宙活動を通して地球上の様々な課題解決に貢献する」という意味です。
ここからは、大貫氏から「宇宙産業について」と「宇宙を活用してできること」を具体的にお話しいただきました。

【宇宙産業について】

①ロケット打ち上げ
まずはロケットの打ち上げについてですが、昨年2022年では186機、今年は200機以上(サブオービタル機は含まず)のロケットがすでに打ち上げられています。
2週間に2機、世界で見ると1週間に4機以上のペースで打ち上がっている計算になりますが、ロケットはただ単に打ち上げられているのではなく、それぞれに遂行するミッションがあるためそれだけの宇宙事業が動いているということになります。
さらに国別に見ると、トップはアメリカ(100機以上)、ついで中国、ロシアが多くのロケットを打ち上げています。

▲ 2022年に打ち上げられた各国のロケットの数(コスモ女子撮影・編集)

小型衛星機に関しては昨年は2,000衛星以上が打ち上げられており、今年はスペースX社の衛星・スターリンクだけで5,500衛星打ち上げられています。

▲ 2023年の国別の小型衛星を打ち上げた数の一部(コスモ女子撮影・編集)

さらにスペースX社は衛星ライドシェアプログラムを実施しており、一度で143衛星を一気に打ち上げるトランスポーターミッションも遂行しています。
昔は10年に1機を打ち上げるのがやっとだったところから、今では1週間に何衛星も組み立てられるまでに発展しました。


②宇宙旅行
宇宙旅行を目的とした有人飛行も可能になりました。
コロナ禍の2021年7月からサブオービタル機による商業運行が始まり、100kmの成層圏に行き約3分間ほどの無重力を体験できる旅行です。
2021年の1年間で、宇宙へ行った民間人が宇宙飛行士の数を上回ったそうです。
アメリカでは2011年のスペースシャトルの飛行以来、有人機上げていなかったそうなのですが、2020年5月に9年ぶりにNASAの宇宙飛行士がスペースX社の有人機・クルードラゴンに乗って飛び立ったところから、有人飛行が急速に増えきました。

現在は商業用ミッションやハンディキャップの方が搭乗したチャリティミッションなど様々なミッションが行われています。
アメリカだけでなく、ロシアでは宇宙での映画撮影が行われたり、日本では前澤友作氏と平野陽三氏の日本人2名が国内の民間人として始めて宇宙に行ったり、中国では独自の船外宇宙服も開発して船外活動も行なうまでになっているそうです。

このように商業が成長するためには、事業がスケール化(大規模化)されていなければいけないと大貫氏はおっしゃいます。
例えばスケール化されたミッションとしては、スターシップの打ち上げが注目されています。
実現すれば100人が月や火星に行くことができます。
また、小型衛星ロケットの需要も広がると予想されて、無人系では軌道に行く貨物線(スペースX社のカーゴドラゴン)や
それに伴うスペースポートの建設も各国で進んでます。

▲スペースX社のロケット「スターシップ」(コスモ女子撮影・編集)

【宇宙を活用してできること】

①位置情報の活用
一つ目は衛星を使った位置情報や通信の活用です。
前述したミッションのようにコンステレーション(宇宙に大量の小型衛星を飛ばすこと)で、より正確な位置情報を地上に届けたり、次世代の5Gや6Gのような高速通信を届けることができます。
すでにスペースX社のスターリンクが一部の国を除いて、衛星を使った通信サービスの提供や契約を始めています。

また、イギリスの会社ワンウェブがイースペースというコンステレーションを行い、10万衛星を打ち上げる計画を立てていたり、中国では国網(こくもう)がすでに1万3,000衛星の打ち上げに成功しています。
さらに衛星により地球観測が容易になったことで、地球のデータを分析し、地球の課題解決に役立てています。
例えば気象変動を予測して気象問題を解決したり、紛争によるサプライチェーンの問題を予測し経済へのダメージを最小限に抑えたりすることができるそうです。

▲ 小型衛星の活用(コスモ女子撮影・編集)

②宇宙環境の活用
二つ目は宇宙の環境の活用です。
環境の活用では無重力や真空の宇宙空間を利用した創薬の開発が行われ、新たな新薬の開発ができる可能性が広がっています。
また、現在2030年に向けてISS(国際宇宙ステーション)の退役に向けて後継機の開発を進めており、現在3社を競わせる形で後継機の開発に取り組んでいます。

今後はISSに商業宇宙ステーションをつなげたり、商業宇宙ステーションが軌道上に出来上がる計画も立てられているそうです。
さらに軌道上のサービスとしては、ロケットや衛星の燃料補給、修理、組立、移動、宇宙デブリの除去など全てが無人で行える可能性も。
これにより衛星の再利用化やライドシェアによる価格破壊が起き、費用を抑えながら高頻度のロケットや衛星の打ち上げを成功させています。

③宇宙資源の利用
三つ目は宇宙資源の利用です。
宇宙資源の利用のため、現在月面着陸を目指した様々なミッションが遂行されています。
中でも代表的なアルテミス計画では、去年の11月に行われたミッション1で無人でオリオン1の打ち上げに成功し、26日間のミッションを終えて無事に地球に帰ってきました。
2024年11月に行われるミッション2は有人で月の周りを回って帰ってくる計画があったり、ミッション3では人が月面に降り立つ計画があったり、着々と月面着陸に向けてさまざまなミッションが遂行されてます。

▲ ブルーオリジン社のロケット「ブルームーン」(コスモ女子撮影・編集)

これからも伸び続ける宇宙ビジネスと人材の需要

このようにさまざまなスペーストランスフォーメーションがある中で、いま最も注目されているのが月面着陸ミッション「アルテミス計画」です。
月に向けた「アルテミス計画」はこれからの宇宙ビジネスの成長や発展の要となっていますが、実はこれらのミッションは政府と民間企業がお互いに協力しあって前進させています。

アメリカでは10年間に26億ドルの予算を持って、CLPSというNASAが民間企業に観測機器やローバーなどのペイロードの月への輸送を有償で委ねるサービス(米国会社に限る)を行っており、民間企業にタスクオーダーをして宇宙開発を進めています。
CLPSには月周回有人拠点(ゲートウェイ)や貨物船、有人月面着陸機ではスペースX社のスターシップやブルーオリジン社のブルームーンなどがNASAのアルテミス計画の中で選定されて開発が進められています。

他にも月に行くための輸送機だけでなく、宇宙服だったり、ローバーだったり様々な開発のために予算が組まれています。
このように地球全体で月を目指していくために、政府は予算をつけ民間からサービス調達するという、アルテミス・アズア・サービスとして一丸となって開発を進めているのが現状です。
このアルテミス計画には33カ国が署名していて、先進国だけでなく新興国も参加しています。
中国が主導している月面基地計画「国際月面研究ステーション」(ILRS)はアルテミス計画と同様の月面着陸ミッションを掲げており、この計画にも多くの国が参加し月面着陸に向けて様々なミッションに取り組んでいます。

最後に大貫氏からこの先10年間の宇宙ビジネスの展望と人材の需要についてお話しいただきました。
宇宙ビジネスは、フォーブス誌に載っているようなビリオネアたちの投資から始まり、ITジャイアント(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)の参入によって大きな市場を作り上げました。
急成長したきっかけは2015年からベンチャーキャピタルへの投資が始まったことからだそうです。

コロナ禍により、通信や宇宙ステーションのシステム利用などの期待感から宇宙ビジネスへの投資バブルが起こり、2021年に株式上場した会社が多数ありました。
バブルが弾け2022年には一度落ち込みますが、2015年の頃までには戻らず、むしろ今が健全な状態にあり引き続き投資は続いているとのことです。
現在、政府と民間合わせて250ミッションがあり、売上としては100億ドル以上が生み出されると試算されてます。
さらに5年後に20人が月面に移住し、15年後には300人、30年後1,000人が月面に住むと予想されており、これらが2.7兆ドルの売上になると言われています。

▲ 小型衛星の活用(コスモ女子撮影・編集)

さらに宇宙ビジネスの成長に伴い人材の需要が急速に高まっているそうです。
理由としては、商業の宇宙開発への参入がベンチャー企業にとどまらず、異業種企業、中小企業、新興国、地方からの参入など宇宙ビジネスの多様性が広がってきたことにあります。
これにより、新しい投資や市場が生まれたり、新しいユーザー、顧客、宇宙保険などの制度が生まれたり、今まさに人材不足が起こっていて宇宙業界で働けるチャンスが非常に増えてきました。
人材が欲しくてM&Aする企業も出てきているほどだそうです。
宇宙ビジネスの多様化に伴い、理系、文系問わず、今後は宇宙業界のための新たな職業や職種が生まれることでしょう。

▲ 宇宙ビジネスの多様性(コスモ女子撮影・編集)

さいごに

記念すべき宇宙の基礎講座第一回目は大貫美鈴氏より「グローバル化した宇宙ビジネスが開く新たな市場と投資」をテーマにお話しいただきました。
宇宙ビジネスの成長と共に人材の需要が加速し、今後宇宙業界で活躍する人が増えることが期待されてワクワクする時間になりました。
私たちコスモ女子からも宇宙業界で活躍する人材が現れるかもしれない期待を胸に、宇宙業界を盛り上げるべくさらに精力的に活動していきます。

▲記念撮影の様子(コスモ女子撮影・編集)

【宇宙の基礎講座について】
2023年12月より宇宙の基礎講座を開催中です。
今後の開催日とテーマ、申し込みについてはこちら。

2月16日(金):宇宙旅行 (coming soon)
3月13日(水):人工衛星 (coming soon)
4月19日(金):宇宙エンタメ (coming soon)
5月17日(金):ロケット (coming soon)

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◆コスモ女子とは?

「宇宙業界へのキャリアを身近にすること」をテーマにした女性中心の宇宙コミュニティ」です。
勉強会やイベントを毎月開催。
星や天体の楽しみ方から、宇宙旅行・教育・宇宙ビジネスまで幅広いテーマで開催しています。
\世界初!/女性中心のチームでの衛星打ち上げPJを発足中!(2024年度中打ち上げ予定)

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