性別を変える。

ついにパートナーが、性別適合手術を受けることとなりました。「何するの?」と多くの人が感じると思います。平たく言うと、今の性別の生殖機能を無くすのがこの手術の一番の目的です。彼の場合だと、戸籍は女性なので、子宮卵巣と胸(乳腺)を取ります。このステップを経ることで、性別を変更することができるようになります。

あまり知られていないかもしれませんが、日本では性別を変更するためには以下の6つの条件をクリアする必要があります。

①二人以上の医師により、GID(性同一性障害)であることが診断されている
②20歳以上である
③現在、婚姻をしていない
④現在、未成年の子がいない
⑤生殖腺がない又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にある
⑥他の性別の性器の部分に近似する外観を備えている
(くわしくは裁判所HPをご覧ください)


今回はタイで手術します。手術そのものは6時間程度で終わる予定です。過去に手術を受けた友人によると、術後しばらくはスマホを触るのも困難なほど体力が無い状態になるそうです。果たして抜糸含め2週間で無事帰国できるのでしょうか。少し心配です。

ちなみに私は手術が終わった後に、パートナーの日常サポートをしにタイに5日ほどいる予定です。まさか一緒に行くはじめての海外が手術旅行になるとは、思ってもみませんでした。笑


私はパンセクシュアルなので相手の性別へのこだわりは、正直ありません。とはいえ、私の性自認は女性です。スカートを履くことも、化粧をすることも、毎月の生理痛に呻きながら耐えることも、なんら違和感を覚えたことはありません。女性だと認識されたが故に、嫌な目にあったことは思い出したくもないほどたくさんありますが、それでも「男性になりたい」や「なぜ女性に生まれてしまったのか」と考えたことはありませんでした。

いや、でも待てよ。もし私が自分の性別に違和感を覚えながら生活するとしたら・・・。

・「○○ちゃん」「△△くん」と否応なしに呼ばれる。
(「呼ばれたくないあだ名」って呼ばれる度に、自分のことも相手のことも嫌いになってしまう力があると個人的に思っています。)
・学校や職場によっては着たくない服装を押し付けられる。
(自分のポリシーに合わないものを纏うなんて針の筵です。想像しただけで地獄絵図。)
・マイノリティな自分はオカシイんじゃないかと思いはじめる。
(ナイーブな問題だからこそ、簡単に相談なんてできませんよね。)

ちょっと考えただけでも、怖くなってしまいました。思春期にそんな経験を、嫌という程してきているであろうトランスジェンダーの人たち。司法統計によると性別変更をした人は、日本で8,000人ほどいるそうです。2004年から法令が施行されています。(ちなみに手術をしていない人もたくさんいるので、実際トランスジェンダーの人はその数倍はいると思われます。)

そんなにいるなんて考えたこともありませんでしたが、パートナーと出会ってから、たくさんのトランスジェンダーの友だちが出来ました。みんな手術を終えている人ばかりだったので、海に一緒にいっても、ラッシュガードを着ているのは私のパートナーだけでした。彼はよく「いいなあ、俺もみんなみたいに脱いで泳ぎたいなあ」と言っていました。(手術をしてない状態だと、いくら(男性)ホルモン注射をしていても、どうしても女性の胸のように丸みを帯びてしまうのでラッシュガードを着ています)

その一言に象徴されるように、小さいことから大きいことまで、彼には日々いろんなストレスがあったと思います。それが少しずつこれからなくなっていくのかと思うと、嬉しいです。

もちろん手術をしたからといって、ストレスフリーになるわけではありません。彼が女性として生まれたことは一生変わりませんし、まだまだ課題はあります。

でも、彼を縛っていた見えない糸が、少しずつ少しずつ解けていくのは確かで。解けていくほどに、信頼関係は深まっていくのも感じています。出会った頃より何倍も、私は彼が大好きです。

いよいよ彼は今日から渡航。手術が終わったあとに私はタイに会いに行くので、しばらくは会えません。次に会うときは、どうかいつものように、笑顔で私を迎え入れてね。

不安や楽しみや緊張が、ないまぜになって不思議な気持ちです。そんな私とは裏腹に、本人は横で安らかな寝息を立てています。幸せそうで何よりです。

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