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eスポーツ英会話の最前線 [from 多聴多読マガジン4月号]

取材・文=編集

多聴多読マガジン』4月号から新連載「eスポーツ英会話の最前線」がはじまりました!

近年ますます注目をあびるeスポーツ。
そのeスポーツを英会話学習に活用するにはどうしたらいいの?
をテーマに、さまざまな取材を行う予定です。

第1回目は、早稲田大学教授の森田裕介先生へのインタビューを行いました。まずはアカデミックな観点からeスポーツ英会話を見ていきます。

この記事では、第1回目の内容を少しだけご紹介します。


最近、eスポーツと英会話を組み合わせた新しい英語学習の形が教育現場に取り入れられるようになってきました。

eスポーツを使った英会話学習とはどのようなものなのか。また、どのような効果が期待されているのか。

今回から始まるこの連載では、ゲームを学習に取り入れた教育にも詳しい早稲田大学人間科学学術院の森田裕介教授とともに、eスポーツ英会話の可能性を探っていきます。

森田 裕介 先生のプロフィール


(早稲田大学人間科学学術院)
主な研究プロジェクトは、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)の技術を用いた学習教材の開発、ゲーム学習、ロボットを活用した学習、プログラミング教育、STEM/STEAM教育など。

森田 裕介 先生(早稲田大学人間科学学術院)

通信制高校でeスポーツが授業に取り入れられている理由

―まずは、先生の専門である教育工学や先生の研究について、簡単に教えていただけますか。

森田:教育工学というのは問題解決をする学問であり、学際的な学問分野なんです。

例えば、モチベーションが上がらない子どもたちが、どうやったら学習に対する意欲を上げることができるか

それを考えるときに、ゲーム学習というのは、ひとつのインストラクションデザイン(教授設計)であって、どうやって授業をデザインするかというところにつながっていくんです。

ゲームをそのまま使う場合もあるし、ゲームの要素を使うゲーミフィケーション(*1)もあります。

*1 ゲーミフィケーション
ゲーミフィケーションは、コンピュータゲームのゲームデザイン要素やゲームの原則をゲーム以外の物事に応用すること。例えば、ゲームに出てくる「レベルアップ」や「スコア競争」など、ゲームで利用される要素を盛り込むことで、参加者を楽しく熱中させ、 学習や目標達成へのモチベーションを高める。

最近では、メタバース(*2)を使った授業を高校に行って実践してきましたが、そういった形で新しいテクノロジーをどうやって学習に取り入れるか。その可能性と限界について研究しています。

*2 メタバース
多人数が参加可能で、参加者がその中で自由に行動できる、通信ネットワーク上に作成された仮想空間。仮想空間で、ユーザーは自身の分身となるアバターを使って生活を送る。仮想空間では物の売買、他者とのコミュニケーション、イベントの開催、街の散策などが可能となる


―現在、高校の中でeスポーツをカリキュラムに取り入れているのは通信制高校がほとんどです。一方、全日制高校では導入されているケースがまだありません。このような背景をどうとらえていますか。

森田:ビジネス的な観点から言えば、入学希望者の増加を見込んでというのが通信制高校に導入されている理由のひとつかなと思います。

もうひとつには、生徒に応じた授業が可能なシステムも関係しているでしょう。全日制の高校が合う生徒とそうでない生徒がいるとしたときに、全日制の中で居心地が悪くなって通信制に来られる生徒さんたちがいます。

もちろんその他の理由で来る生徒さんもいます。

通信制高校の多くは自分たちで自由に時間割を組むことができるようになっています。

1日eスポーツだけの授業にすることも可能ですから、eスポーツに興味を持っている生徒であれば、それに専念できる環境になっているわけです。

学習におけるeスポーツやゲームが持つ可能性

―学習にeスポーツやゲームを取り入れることで、どのような効果が期待されるのでしょうか。

森田:学習を進めるのに重要な概念として、「エンゲージメント」があります。

この単語は通常、「婚約」という意味で使われますが、教育の文脈でいうエンゲージメントは「積極的に関与する」ということなんです。

このエンゲージメントには、5種類あると言われています。「感情」、「行動」、「認知」、「協働」、「社会」の5つです。

その中で、ゲームをプレイしようとする「行動的エンゲージメント」に関しては、ゲームを制されている企業の方々が魅力的な仕掛けをものすごくたくさん考えられていて、その結果、多くのユーザーが引き込まれています。

―その仕掛けには、具体的にどのようなものがありますか。

森田:例えば、即時フィードバックとか報酬といったものですね。

一定の数のブロックを消したらスコアが上がるとか、宝箱を見つけて開けたらアイテムが手に入るとか、ゲームによってさまざまな仕掛けが用意されています。

単純ではあるんですけど、非常に本質的な側面があります。

―その他のエンゲージメントについても詳しく教えてください。

森田:行動的エンゲージメントに移る前に、まず興味を持ってもらわなければなりませんよね。

つまり、「これ面白そうだな」とか「プレイしてみようかな」という気持ちを起こさせるのが「感情的エンゲージメント」です。

それから、『VALORANT(*3)』『フォートナイト(*4)』といったeスポーツでも人気のタイトルについては、プレイヤー同士がある目的のために協働していくということがあります。

*3 VALORANT
ライアットゲームズが開発・運営しているファーストパーソン・シューティングゲーム(FPS)。5対5で対戦する競技性の高いタクティカルシューターで、高い精度が要求される銃撃戦と、「エージェント」(キャラクター)固有の特殊能力を組み合わせた、本格派の銃撃戦が特徴。プレイヤーの戦略的選択や柔軟なアイデア、そして一瞬のひらめきから生まれるチャンスがチームを勝利に導く。

*4 フォートナイト
Epic Games が販売・配信する、2017 年に公開されたオンラインゲーム。バトルロイヤルモードでは最大100 人で最後の1 人または1 組になるまで戦う。武器を手に入れて自分または自分のチーム以外のプレイヤーと戦うことになるが、足場や壁などを建設するクラフト要素が大きな特色となっている。

これが、「協働的エンゲージメント」です。

それから、ゲームを離れてプレイヤー同士がコミュニティーを作って情報交換するようになると、「社会的エンゲージメント」になります。

こういったエンゲージメントのための仕掛けがそろっているのがゲームであり、eスポーツであるわけです。



ですから、モチベーションを向上させて継続的に学ぶことができるとしたら、ゲーム学習という領域は非常に素晴らしいコンテンツになるわけです。

ただし、エンターテインメントに寄ってしまうと学習がおろそかになってし
まいますので、そのあたりをどうデザインしていくか、ということが重要になってくるでしょう。

……noteでの掲載はここまで!です。


多くの方が実感していると思いますが、ゲーム学習には、継続して続けたくなる魅力がたくさんあるんですね。

森田先生がアカデミックな観点からも説明してくださいました。

この続きは、『多聴多読マガジン4月号』をチェック!

eスポーツ英会話のメリットとデメリットは?……についても言及しています。

試し読みはこちらからできます



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