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英語学習に推せるコメディ・ドラマ 5選とは?

純ジャパ」でありながら、中1の時に海外ドラマに沼り、現在までに 4000 話以上視聴。海外での長期滞在経験なしに、英語が話せるようになった出口武頼さん。そんな海外ドラマ英語学習の「達人」である出口さんに今回は、英語学習におすすめのコメディを5つ、挙げていただきました。

ママと恋に落ちるまで(How I Met Your Mother)

Story
 2030年、テッドは子供たちに母親との馴れ初めを話します。運命は、親友のマーシャルが恋人のリリーにプロポーズをしたことで動き出しました。負けず嫌いのテッドは、自分も永遠の愛を見つけようと決心します。ある日、テッドはロビンという女の子に一目惚れしますが、これも失敗に終わってしまいます。本作は、テッドが運命の女性である「ママ」と恋に落ちるまでに起こった数々のストーリーを描きあげた愉快なラブコメディです。
 また、同作のスピンオフドラマである「パパと恋に落ちるまで」(How I Met Your Father)がディズニー・プラスで独占配信中。

2005〜2014年/9シーズン’(全208)/約22分

海外ドラマのジャンルのなかでも特に面白く、一話が短いため続けやすいのがシチュエーション・コメディ(シットコム)と呼ばれるジャンルです。そしてその最高峰と筆者が考えるのがこのHow I Met Your Mother。

シットコムの王道として有名なのはFRIENDSという作品でしたが、さすがに古過ぎることと行き当たりばったり的な展開が多いことが視聴を続ける上で問題になります。その点本作は、FRIENDSの後継作品であり、また一話一話の展開が予想できず飽きない作品です。

本作では登場人物がみな自分なりの夢や美学を持っており、彼らが理想に向かって積極的に行動したり思い悩んだりするさまが丁寧に描かれるため、見ているこちらも感情移入してしまいます。そして「ロマンチストのテッドが将来の妻に出会う」までが回想形式で語られるため、一本の長い映画を観ているかのように伏線回収や人間関係の変化を楽しむことができるのです。

また、注目したいのが各エピソードの冒頭と終わりに2030年のテッド(声の出演:Full Houseでダニーを演じたボブ・サゲット)が、その出来事を総括するような一言を子供たちに語るシーンです。Kids, ...という呼びかけから始まる含蓄ある言葉は印象深く、特にイチ押しフレーズに挙げたものは海外ドラマ史上屈指の名言だと思います。

まさにスーラやシニャック(2人とも新印象派の画家)の点描画のように、このドラマを彩るエピソードは全て、少し遠くから振り返ってみて初めて意味を持ちひとつの絵を完成させます。報われずとも運命の愛を追い求めるテッドらの姿に共感し、その激動のラストに感動してしまう、シットコム随一の傑作です。

Kids, every story in a man’s life is like a dot in an impressionist painting.
人生の出来事は全て、印象派絵画の点描のようなものだ。

How I Met Your Mother[2030年のテッド]

フルハウス(Full House)

Story
 サンフランシスコに住むタナー夫妻には10歳のD.J.と5歳のステファニー、生後9カ月のミシェルの3人の娘がいましが、不幸なことに妻のパメラは交通事故で逝去。ダニーは親友のジョーイと義弟のジェシーに協力を要請し、男手だけで子育てすることになります。テレビ局のキャスターとして昼間、ダニーが働いている間は、コメディアンのジョーイと、エルヴィス・プレスリーを崇拝するミュージシャンのジェシーが子どもの面倒をみます。3人の娘に手を焼きつつも、2人は次第に父親らしくなっていきます。
 前作から約30年の時を経ての続編となる「フラーハウス」(5シーズン、全75話)がNetflixで独占配信中。今度は3人の子どものシングルマザーとなったD.J.を、次女のステファニーと親友のキミーが支えます。

1987〜1995年/8シーズン(全192話)/約24分

温かな家族を描くホームコメディでありながら、一家の母親が亡くなったことからストーリーが始まるのは異色です。喪失感を抱えた家族が新たなメンバーを迎え入れ、歌、ダンス、スポーツなど体を張った笑いを展開してくれます。家族の様子をコミカルに描くだけではなく、3人の娘たちが育つのと同様に3人の父親たちも育児に悩み、家族としてともに成長していくさまを感動的につづった名作です。

長く続いたドラマは登場人物の変化も見所の1つですが、本作は特に3人の子供がいるため、彼らの成長が楽しくてついつい続きを見てしまいます。特に初登場時はまだ首も据わっていなかった末っ子のミシェルがだんだん言葉を覚えて舌足らずな英語を喋っていくさまは愛らしく、私たち英語学習者としても見ていて興味深いです。

英語表現としては、小さい子供がいる家庭のことなので極端なスラングがなく、発音もゆっくりなのがうれしいところ。逆に子供を叱ったりしつけたりするシーンからは、アメリカの家庭の雰囲気やものの考え方を垣間見ることができます。

一方、お調子者のジョーイはアメリカのアニメキャラクターの物真似などをして子供たちを笑わせますが、現代日本人の私たちには全くわからないのが悲しい点ではあります。つまり、キャラクターやシチュエーションに応じて注目する点を取捨選択することが大事になってくるということでしょう。

We don’t have a lot of room here, but we have a lot of love, a lot of laughs.
家は手狭になったけど、愛と思いやりで満たしていきましょう。

Full House[ベッキー]

モダン・ファミリー(Modern Family)

Story
 物語は、裕福なジェイ・プリチェットと彼の子供たちのクレアとミッチェル、それぞれ3家族の相互関係で展開します。
 まず大黒柱のジェイ・プリチェットは、かなり年下の情熱的な女性のグロリアと再婚し、彼女の連れ子のマニー と3人で生活。主婦のクレアは、不動産業で働くフィルと結婚し、3人の子供を持っています。弁護士のミッチェルとパートナーのキャメロンはベトナム人の赤ちゃん、リリーを養子として受け入れています。
 そんな裕福な老人とラテン系子連れ美女の年の差夫婦典型的なアメリカ人一家、養子を迎えたゲイのカップルという、3つの家族(全員親戚!)がくり広げるドタバタコメディです。多様性に富んだ、超個性的なアメリカン・ファミリーのおかしな日常をテンポよく描いた話題作となります。

2009〜2020年/11シーズン(全250話)/約30分

レギュラーの登場人物が10人ほどと多く、家族を主とした様々な人間関係にまつわる日常的なフレーズを聞くことができます。

1エピソードにつき3家族のメンバーが何人かずつに分かれ、2〜3の場面が入れかわり立ちかわり展開していきます。自宅のプールに落ちるなど体を張った笑いと皮肉やシャレを多用したスピーディーな会話が魅力ですが、本作の最大の特徴は、モキュメンタリー(ドキュメンタリーを模したフィクション)の技法が使われていること。通常のキャラ同士の絡みの合間に、彼らが自宅のソファーに座ってその内心を吐露する独白シーンが挟まれるのです。

会話シーンのあとにすかさずI lied.(あれは嘘だったんだけどね)といった暴露が挟まれるなど、彼らの内面を端的に示すことで一歩進んだ性格描写を可能にしています。

基本的には1話完結のストーリーですが、他のファミリードラマと同様に子供たちの成長や大人を含めた人間関係が緻密に描かれ、見ごたえがあります。特に他作品に比べ、年齢やジェンダーを含めた「モダンな」立場が様々あり、キャラクターに幅があるのが特徴的です。ぜひ自分の推しキャラを見つけ、注目してみてください。

このように本作は、3つの家族の交錯する目線を通して、悩みを抱えつつ理想と現実の間でもがく彼らの姿を見せてくれます。現代的な家族のありようを受け容れる難しさと喜びの両面を描き切った名作だと言えるでしょう。

I’m a cool dad, that’s my thing.
ぼくはイケてる父さんだ。

Modern Family[フィル]

ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則(The Big Bang Theory)

Story
 二十代の仲良しオタクコンビ、レナードとシェルドンは、カリフォルニア工科大学の物理学者。彼らはカリフォルニア州パサデナにあるアパートに、ルームメイトとして同じ部屋に住んでいます。2人合わせたIQが360というほど頭脳明晰で、2人とも博士号を得るほど賢いのですが、世間から妙にズレていて友人もみんな変わり者。加えて外見もイマイチなので女性から言い寄られる気配もありません。そんな2人の向かいの部屋にある日、陽気なブロンドのセクシー美女、ペニーが引っ越してきたという「オタク・ミーツ・ブロンド」から物語が始まります。

2007〜2019年/12シーズン(全279話)/約22分

IQは異様に高いけれど、恋愛偏差値は絶望的に低い。そんな若き科学者たちが研究や恋愛に没頭する様子を笑えるネタで彩った長寿ドラマ。

アクションシーンは多くなく、科学者の彼らがアパートや大学、ときにはアメコミの店で集まって話をするシーンが主となっています。なにしろ頭が良いため、彼らの会話はテンポが速く語彙が高度なことが多く、くだらない会話でも英語学習の上では興味深く聞くことができます。

その最たる例が人気キャラクターのシェルドンで、天才肌だが高慢で自己中心的、しかしどこか憎めない性格がセリフの端々にあらわれています。また、彼らの専門である物理学・エンジニアリングの話は、文系の筆者では日本語でも全くわからない難解さです。こうした専門用語の出てくる作品は、やはり意地を張らずに日本語字幕で見ることをおすすめします。

作品全体の傾向として興味深いのは、アメリカ社会における無意識の思い込みです。例えば「ブロンド美女は頭が良くない」、「ユダヤ系の母親は束縛が強い」といった偏見に真っ向からネタをぶつけていきます。そもそも「SF映画やアメコミ・オタクでコミュニケーションが下手な理系男子」が主人公のグループですが、それらのいじり方の解像度が大変高く、キャラクターの性格付けになじむほどに面白さが増してきます。良し悪しは別として、間違いなく現実に存在するアメリカ的価値観を自然に知ることができるのも本作の良いところの1つでしょう。

理系男子の仲良し4人組があり余る知恵を絞って未知の分野・恋愛に挑んでいくさまがかわいらしい、唯一無二の友情ドラマです。

I’m not crazy, my mother got me tested.
ぼくは狂ってないよ、昔母さんに検査させられたけどね。

The Big Bang Theory[シェルドン]

ブルックリン・ナイン-ナイン(Brooklyn Nine-Nine)

Story
 ニューヨークの架空の警察署「ニューヨーク警察99分署」を舞台にした、日本ではあまりなじみがない刑事もののドタバタ・コメディ。堅物で規則厳守の署長レイモンド・ホルトと、正義感が強くて優秀だがお調子者で子どもっぽい刑事ジェイク・ペラルタを中心に、警察署内・街中・仲間内で起こる様々な事件やトラブルを描きます。2人の他にも、ジェイクと事件の解決数を争う異様に負けず嫌いのエイミー、武闘派で気が気が強くプライドも高い黒髪ハード美女のローザ、運動神経が悪くいじられキャラのボイルなど、どこか憎めない個性派の刑事たちが毎回、ゆる〜い笑いを展開します。

2013〜2021/8シーズン(全153話)/約20分

架空の警察署を舞台に、個性豊かな刑事たちが暴れまわる暴走特急ポリスコメディ。とにかく面白い作品が見たいときにおすすめです。

99分署のオフィス内で刑事たちが軽妙な会話を展開するパートと、街中で実際に捜査に当たるアクション・パートとの緩急があるため、全く飽きずに観ることができます。銃などを使ったアクションやナンセンス・不条理なネタもありますが、全てのエピソードが猟奇的なまでに笑えるので癖になってしまうこと請け合いです。

一方でシーズンを重ねるにつれ、アメリカの警察を扱った作品であることが大きな意味を持ってきます。特に、ホルトがアフリカンアメリカンでありゲイで既婚者で、更に警察署の署長であり続けることは大変な困難を伴うことが明らかにされます。そのように仲間がピンチに陥った際は、普段は軽口を叩きあう99分署の面々も一致団結し、根拠のない自信と不思議な運の強さで、みなで難局を乗り越えていきます。

英語表現の上で特に注目したいのは、お堅い敏腕署長ホルトと優秀だがお調子者過ぎる刑事のジェイクとの掛け合いです。彼らは趣味から英語の語彙まで両極端であり、例えばジェイクが単純にtired(疲れた)と言うような場面でホルトはfatigue(倦怠感がある)というような、フランス語由来で硬い言葉遣いをしがちなのです。その落差が見どころともなっているため、まず注目していただきたいのが2人のやりとりです。

The only puzzle he hasn’t solved is how to grow up.
彼に解けない謎は大人になることだけです。

Brooklyn Nine-Nine[テリー]

→次は中級編、「英語学習に推せる恋愛ドラマ 5選とは?」へと続く。

出口武頼(でぐち・ぶらい)
1999 年、東京生まれ。中学 1 年から海外ドラマのみ で英語を学習し、現在までに 4000 話以上視聴。海外 長期滞在経験なしに、高校在学時に GTEC と TEAP のスピーキングテストで満点取得。高校 2 年次に都 立高校生英語スピーチコンテスト選抜大会で優勝、3 年次には東京都の国際教育研究協議会主催の英語弁 論大会で審査員特別賞を受賞、TOEIC860 点取得。 2018 年度センター試験英語 200 点満点取得、現役 で東京藝術大学美術学部芸術学科に進学する。2019 年、『海外ドラマで面白いほど英語が話せる超勉強法』 (KADOKAWA) を上梓。東京藝術大学大学院在学の 現在も海外ドラマ視聴を継続中。専門は日本仏像史。


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