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「新宿駅は、"渋谷区"にある。」


え?新宿駅なんだから、新宿区じゃないの?


そう思う方が多いのではないでしょうか?
地理に詳しい方は、懐疑的な気持ちでこの記事をご覧になっているかもしれません。


噂によると、「新宿駅は、"渋谷区"にある。」そうです。
これは本当でしょうか?

結論から申し上げますと、この噂は「半分は嘘、半分は本当」です。
間違ってもいないし、正確でもない、一体どういうことでしょうか?

ここからは、新宿区と渋谷区の境界がどこかも含めて詳しく見ていきます。


「新宿駅」の住所

まず、新宿駅の住所を確認します。

【新宿駅(JR東日本)】
東京都新宿区新宿3-38-1

新宿駅は、多くの方が予想されたように新宿区にありました。
渋谷区にはありませんでした!!この話は終わりです!!」で片付けてもいいですが、それではあまりにも面白くありません。

これは、冒頭で結論づけた「半分は嘘」の根拠となるお話です。
新宿駅の住所は確かに新宿区なのに、「半分は本当」とは何でしょうか?
新宿駅の構内に渋谷区の飛び地でもあるんでしょうか?

もう少し、お話を掘り下げます。


「バスタ新宿」の住所

ここで、サムネイル画像にもなっている写真をご覧いただきます。

画像1

こちらは、新宿駅を撮影した写真です。
手前にはWILLER EXPRESSの高速バスが見えますが、その奥に見えている建物は「バスタ新宿」といいます。

バスタ新宿は交通ターミナルの役割を持つビルで、下記の通りに階層ごとで役割が分かれています。

4階 : 高速バスターミナル
3階 : タクシー乗降場
2階 : 新宿駅の改札

写真に写っている高速バスも、これからバスタ新宿の4階へと向かうところでしょう。
ここで、「バスタ新宿」の住所も確認してみます。

【バスタ新宿】
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-55

なんと、バスタ新宿は新宿区ではなく渋谷区でした!

バスタ新宿は、新宿駅の一部です。
つまり、新宿駅は確かに渋谷区にもありました。

これが、冒頭で結論づけた「半分は本当」の根拠となるお話です。

しかし、疑問が残ります。
新宿駅は確かに新宿区でした。
一方で、バスタ新宿は確かに渋谷区でした。
そして、バスタ新宿新宿駅の一部でした。

これをまとめますと、「新宿駅は新宿区でもあり渋谷区でもある」となってしまいませんか?
それなら、どうして新宿駅の住所は渋谷区ではなく新宿区なのでしょうか?

次の節で、この疑問を解消していきます。


新宿駅の住所の決め方

そもそも、駅の住所とはどのようにして決まるのでしょうか?

はっきりとした定義は無いですが、駅長室がある場所をその駅の住所とする場合が多いです。
新宿駅も、これに倣って駅の住所を決めています。

新宿駅の駅長室は、ルミネエストがある東口付近にあるようです。

ここで、新宿駅の住所を再び確認します。

【新宿駅(JR東日本)】
東京都新宿区新宿3-38-1

ルミネエストの住所も「東京都新宿区新宿3-38-1」なので、新宿駅の住所と一致します。

つまり、先ほどの節で最後に投げかけた疑問

それなら、どうして新宿駅の住所は渋谷区ではなく新宿区なのでしょうか?

の答えは、「駅長室が新宿区にあるから」です。

※ここから、一部に推測が入ります。

新宿駅が渋谷区にも侵出している理由は、「新宿駅が大きくなったから」と考えられます。
開業当時の新宿駅は、今のように16番線まではありませんでした。
開業当時は角筈村(つのはずむら)で今と区画等は異なりますが、駅の全域が今でいう新宿区の部分に収まる程度の規模だったはずです。

新宿駅の利用者はどんどん増加していき、今では乗降者数が世界で一番多い駅となりました。
この巨大化の背景には、新しい路線の開通新ホームの増設もあります。
具体的には、埼京線用ホーム特急用ホームの増設です。

埼京線は貨物用に使っていた線路を転用してできた路線なので、もともとは新宿駅にホームを作るためのスペースが確保されていませんでした
なので、中央線や山手線のホームがある横の位置(新宿区側)にはホームを作るスペースがありませんでした。
そこで、少しずらした位置(渋谷区側)にホームを作ることとなったと推測されます。

※一部推測、ここまで。

ここまでの話をまとめますと、下記の通りになります。

新宿駅の所在地は、新宿区である
・新宿駅に併設するバスタ新宿の所在地は、渋谷区である
・新宿駅を拡張するにつれて、渋谷区側にもホームや改札が作られた
・新宿駅の駅長室は渋谷区ではなく新宿区なので、駅の住所も新宿区になる


つまり、「新宿駅は、"渋谷区"にある。」を、

「新宿駅の駅長室が"渋谷区"にある」と解釈すればになります。
「新宿駅の一部が"渋谷区"にある」と解釈すれば本当になります。

これが、「半分は嘘、半分は本当」と表現した理由でした。


ここで話を終わりにしても良いですが、みなさんがこれを会社の先輩などに共有する場面を考えてみます。

「先輩!!新宿駅は新宿区ですけど、バスタ新宿は渋谷区らしいですよ!」
「へー、そうなんだ!じゃ、新宿区と渋谷区の境界線もこの辺にあるの?」
「多分そうだと思いますけど、どこら辺が境界かは分からないですね…
「そっか…」

これでは、お互いにとって少し可哀想かもしれませんね。
でも、ご安心ください。

次の節で、新宿区と渋谷区の境界線がどこにあるかをお伝えします。
※区全域では流石に大変なので、新宿駅周辺の話に限ります。


新宿区と渋谷区の境界

新宿駅周辺に限れば、新宿駅と渋谷区の境界は甲州街道です。
厳密に言えば、甲州街道からちょっと南寄りの部分です。

こちらは、バスタ新宿の2階にある新宿駅の甲州街道改札付近です。
前を通る道路が甲州街道で、奥に見える新宿駅はJR線の南改札小田急線の南口付近です。
ちなみに、サムネイル画像の写真は左側に見える橋付近から撮影しました。

肝心の境界線ですが、このストリートビューが撮影された位置から2歩ほど甲州街道寄りに進んだ辺りにあります。
その地点でのストリートビューはありませんので、甲州街道とバスタ新宿の中間地点辺りに境界線があるとご理解いただければと思います。

もう1か所、境界線が通る場所を紹介します。

こちらは、新宿駅の5・6番ホームです。
先ほどお話した、駅の拡張によって増設された特急用ホームがここです。
成田エクスプレスや伊豆方面へ向かう踊り子などがご利用いただけます。

画面に見えている点字ブロックも、新宿区と渋谷区の境界線です。
ストリートビュー視点で、点字ブロックの新宿区渋谷区です。
画面左側(新宿区側)に見える通路は、南改札・東南改札方面(バスタ新宿が無い方面)に通じる地下通路です。

5・6番ホームを発着する列車は必ずこの点字ブロックの右側に停車します。
つまり、成田エクスプレスなどの特急は新宿駅に到着しても列車全体が渋谷区に停車していることになります。
5・6番ホーム発着の列車をご利用の際は、「この列車は渋谷区に停車してるんだな」と思っていただけると楽しいかもしれません。

バスタ新宿の出入口付近新宿駅5・6番ホームにある地下通路の出入口付近の2か所を境界線としてご紹介しました。
境界線上で反復横跳びをすれば、高速で両区を行き来できますね!

※実際に反復横跳びをしたことによって発生した事象に対しての責任は負いかねます。

良ければ、他にも分かりやすい境界線の目印を探してみてください!


最後に

このお話をまとめますと、

新宿駅の住所は新宿区だが、駅の一部は渋谷区にも属している

ということになります。
駅長室が新宿区にあるので、ホームや改札の一部が渋谷区にあっても住所は新宿区でした。

なぜ、渋谷区側にもホームや改札が作られたかと言いますと、

駅を拡張するに際に、スペースの都合上で渋谷区側の土地を使ったから

である可能性が高いというお話でした。
つまり、駅を拡張するにつれて甲州街道の南側にもホームや改札が作られるようになったということです。

新宿区と渋谷区の境界線がある位置も、共有させていただきました。
成田エクスプレス踊り子など、5・6番ホームから発着する特急をご利用の際には意識してみてください。


最後までご覧いただきまして、ありがとうございました!
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