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販路開拓における「展示」のタイプおよびメリット・デメリット:その②便乗型自主企画展示−既存空間利用型

その①では「見本市」について述べた。続いては、そういったターゲット層の人たちが多数集まる「見本市」に合わせ、自主的にその街の各所で行なわれる展示が増えている。便宜上、「便乗型」と呼ぶことにする。

ミラノの街で行われている「フォーリ・サローネ」は「サローネの外側」という意味の通り、インテリア関係の世界最大級の見本市「サローネ・デル・モービレ」(2018年は約43万人が来場)に合わせて開催される便乗型の典型例である。

この便乗型にも、街の中の中小規模の展示場等で行なうミニ「見本市」のようなものがあるが、これはその①と基本的には同様なので割愛する。

②便乗型自主企画展示−既存空間利用型
名前の通り、見本市主催者から与えられた空間やルールで実施するのではなく、独自に主催・企画する展示会である。
※もちろん大規模見本市の時期に合わせずに開催する展示会も存在する

まずはそういった自主企画展示の中でも「既存空間利用型」と呼ぶタイプをご紹介したい。これは、例えば街中にある教会や宮殿、古いアパートメントや公共の建物等を借りて展示するやり方である。

【メリット】
・自社に合った空間を選べる
・既存の空間が持つ力を利用できるため、什器や空間設計のコストが抑えられる。レセプションも同じ空間で行なうことでコストが抑制できる。
・あまり見向きされないような空間を用いてドラスティックな見せ方を行なった場合、そのギャップから一気に注目されたり、SNS上での認知度が上がる。
・(予約制などのやり方を取らない限り)いわゆる業界人以外の人も多数訪れるため、思わぬ出会いも期待でき、さらに一般の市場の反応を得ることができる。
・街中で実施するため、リアルな現地の市場の状況を感じやすい。

【デメリット】
・立地や空間の良さなどの理由から、人気のある建物等は競争が激しいため、借用コストが上がる。
※安いが良い空間を見つけようとする場合は、そういった探索コストがかかる(時間・手間等)。
・プロモーションや集客イベント等を全て自分で行う必要があり、「見本市」以上にPRコストがかかる。
・ターゲット層以外の人たちも訪問してくるため、対応のための時間・人的コストが生じ、重要な商談をロストすることもある。
・同時期に開催される他の企業等の展示などは距離が離れていることが多いため、新たな出会いのためには時間コストや代わりの人を手配するなどの人的コストがかかる。
・見本市同様、権利関係で競合等に盗まれるリスクは存在する。
・見本市同様、展示が一時的になるため、継続的なビジネスという面でのデメリットがある。

<成功のポイント>
■事前準備がなによりも最重要(見本市とほぼ同じ)

・自社のブランドの方向性を意識し、ぴったりと合う空間を見つける
・取引先・ターゲット層およびメディアにおける事前のプロモーション、特にターゲット層のみへ向けた招待制あるいは予約制のレセプションを行なうといったことが必要。
・(外国の場合は特に)事前の現地におけるパートナーの確保(空間を見つけるため)

■空間および体験設計のセンスとストーリー
・現地を詳しく知る人や会社等との連携による空間選びおよび演出が、見本市以上に必要であり、レセプション、展示空間等を組み合わせた「体験提供」ではセンスとストーリー設計を問われる。
良い空間を選んでも演出がブランドイメージと合わなかったり、残念な演出をしてしまったりすると、逆に批判されかねない。

その③へ続く

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