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#04 説教オヤジ入ってる女

年齢を重ねて周囲にいる人達がだんだん年下ばかりになってきた頃、人はやけに説教臭くなったりするじゃないですか。私はそんな大人にはなるまいと思っているのですが、30代に入るか入らないかくらいのこの頃には既に説教くさくなってたんじゃん!と恥ずかしくなります。

今はもう誰にも説教なんかしません。ただガンジーのように微笑み、すべてを受け入れるのみです。ただスルー能力スキルが上がっただけかもしれませんけど。


人生の中で、父に教わったことがある。

「人を信じなさい。そうすれば、騙されることはないから」

騙されないために人を信じるのではない。人を信じれば、自分も信じてもらえるのだ、ということである。この言葉は非常に深い。私は、ここから多くのことを学んだ。人は、憎めば憎み返してくるし、微笑めば微笑み返す。まさに、感情のやまびこ状態である。

私は自分に子供が出来たら、この言葉にもう一つ加えて伝えたいことがある。

「誠実でありなさい。そうすれば、恐れることは何もないから」

誠実であることは難しい。時には、傷つくこともある。しかし、誠実であるということで、何に対しても強靭でいられる。難しいことだけれど、私は誠実であろうと、いつも思ってる。

ビクターと私は、ビクターの友達が働くアイリッシュパブでビールを飲んでいた。金曜日の夜ということもあって、おしゃれをした人達で店はにぎわっていた。ソファで酒を飲みながら語り合う人達、カウンターにもたれ掛かって、ビールを片手に大声で騒ぐ人達。私達も空いているソファを見つけて、腰をかけた。

ビクターは私に、"White lie"と"Black lie"のことを教えてくれた。いわゆる、良い嘘と悪い嘘である。人を不快にさせないためにつく嘘は、"White lie"。悪意のある嘘は、"Black lie"。酔っていたこともあって、私は猛烈にそれを反対した。

嘘は嘘だ。良いも悪いもない!
なんのために嘘をつくのか。自分のため?相手のため?正直に話した上で、相手が不愉快に思うのは仕方のないことだ。不快に思うこと自体は、相手の感情の処理次第である。突き詰めて考えると、相手を不快に思わせたくないというのは建前であって、本音を言うと、相手に嫌われたくないだけなのではないかと思えてくる。だとすると、それは自分の都合である。

すると、ビクターは「素直であることはいいことだよね」と言った。

素直と誠実は違う!ドン!
素直は相手のことを考えずに、とにかく自分の気持ちを正直に伝えてしまうことだ。そこにはなんの責任もない。だけど、誠実であるということは、そこに責任が発生する。自分の言っていることに誠実であること、相手に対して誠実であること。状況によっては、とても辛いことがある。それでも、嘘をつくよりはマシなのだ。嘘は相手を混乱させる。今後の信頼もなくなる。例え、それが良い嘘であったとしても。例えそれが、自分に対する嘘であっても。

傷つくことを恐れてはいけない。自分を大事にしすぎて、犠牲心を忘れた人間には、何も残らない。

誠実であるがために負う傷から学ぶことは大きい。
そこから学んで、一回りも二回りも大きな人間になれるのだ。
傷つくことを避けていては、何も学べない。

ドン!

「なんでかわからないけど、レモンが目に入ったみたいだ」

といって、眼鏡の下に指を入れて、ビクターは目を擦りはじめた。
涙がポロ、ポロとこぼれてる。

少し、熱くなりすぎた自分を反省した。

(つづく)


一周回って、今ではこの頃とは少し違う価値観を持ってますけど、まぁ嘘は現実を混乱させますよ。でも今思うことは、何に対しても真正面に生きている人間は、そうでない人たちに卑屈さを感じさせるということです。そうして、卑屈になった人はその原因になる人に対して攻撃的あるいはネガティブになります。真正面さなんて人にアピールしなくてもいいって、この時の私は気がついてないんですよね。なんつうか、その真正面さが息苦しいんだっつうのって気がついてないというか。若さですかねぇ。若さなんでしょうねぇ。

今の私がこの日の私に出会っていたら「うるさい」と理不尽に黙らせていたかもしれません。相手に嘘をつかせてあげられるくらいの余裕は持っておきたいものです。人にはそれぞれ事情があるのですから。

ところで、冒頭の父の言葉ですが、父本人はすっかり忘れています。でも、私は父からのこの言葉が大好きでそれを実践し、人を信じることの大切さを痛感する経験をたくさんしました。人を信じれば、人から信じられる自分なれる。そして今まで自分が感じてきた気持ちを、たった一度の過ちや行き違いで失うこともありません。「今までずっと素敵な人だと思ってたけど、本当は違ってたんだ!」と思うのは自由なのですが、私なら今まで感じてきた気持ちを信じたいなと思います。さらに言えば、人から言われたことより自分で見たこと経験してきたことを信じます。

と書いて今気が付きました。
ああ、だから人の言うことを鵜呑みにしている洋服選びや撮影ではうまくいかないことが多いのでした…。「素敵ー! いいですよ!」とめっちゃ褒めてくれますけど、自分で見た正直な印象のほうが正しいに決まってるじゃん…。

これからは、自分の正直な目にも自信を持ちたいと思います。。。

#信じれば幸せ #これ本当

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