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人間の脳を研究することで、AI技術はさらに発展するかも、というお話

こんにちは:)
株式会社コーピー(Corpy) のインターン生のHAKOです!

弊社では、週に一回、自分の興味のあるトピックについて他のメンバーの前で発表する「スタディーセッション」を行っています。
業務に関係することから関係しないことまで、自由なテーマで発表することで、メンバー全員が視野を広げる、またリモートワーク環境でもお互いのバックグランドや興味関心を共有できる機会になっています。

今回はインターンエンジニアとして働く徳田椋子さんが脳神経学、ニューラルネットワークとAIの関係性について発表しましたので、弊社文化の紹介も兼ねて、内容を簡単に紹介します。

Copry株式会社 椋子さん(エンジニア)

自己紹介

・名前 徳田 椋子
・出身 兵庫
・専門 生命情報学
・役割 主にフロントエンドエンジニアの業務に携わらせていただいていますが、プロジェクトの状況によっては、その他の業務にもチャレンジさせていただくこともあります。

ニューラルネットワークとは?

ーニューラルネットワークー


まず初めにAI技術に詳しくない方向けに、ニューラルネットワークについてお話します。
ニューラルネットワークとは、人間の脳の神経細胞(ニューロン)を数理モデル化した(数学的に表現できるようにした)ものです。

ニューラルネットワークは機械学習やディープラーニングなどを学ぶ際に知っておくべき基本的な仕組みでもあります。

このニューラルネットワークを人間の神経細胞のネットワークと異なり、人工的に作られたという意味で、人口ニューラルネットワーク(Artificial Neural Network)と呼ぶこともあります。人間の脳内にある神経細胞(ニューロン)の動作を模してコンピューターソフトウェアに取り込んだシステムが、私たちの生活の様々な場面で利用されています。

例えば、ニコニコ動画やYoutubeのコメント欄に書かれるコメントの解析にもニューラルネットワークが適用されています。
コメントでは普通の言い回しではない表現や、絵文字なども多数使われており、これらのコメントは、量が膨大な上に、コメントの荒らし誹謗中傷殺害予告など不適切なコメントは早く削除する必要があります。
以前ではこれらのコメントの監視を人力で行っていたけれど、ニューラルネットワークを導入することによって、全体の75%程度のコメントの人力目視を不要にすることに成功しています

一方で、デメリットもあります。(ドキッ)

まず、AIにデータを学習させるのに時間がかかることです。学習時間は使用するコンピュータのリソースに依存するため、高度なAIを作るためには高性能なコンピューターが必要になります。場合によっては、スーパーコンピューターに数か月以上学習させて作られたようなAIも存在します。

また、そのように作られたAIはニューラルネットワークの構造が大規模化、複雑化します。AIを利用する際にも、高度なコンピュータが必要になったり、結果の説明が難しくなったりといったハードルがあります。

最後に、AI研究においては、長年の実験的研究に基づいて採用されたアルゴリズムが多く、解決したい問題ごとに適したモデルがあるが、時として「理由は分からないが、なぜかうまくいった」モデルもあるので、新しくかつ複雑なモデル設計は手探りでしなければならないという側面があります。

ニューラルネットワークとAIの関係性と実用例

これらの背景を元にニューラルネットワークとAIの結びつきについて紹介させていただきます。

ニューラルネットワークは、現代のAI(人工知能)の核となっています。
複雑なニューラルネットワークについては、特別にディープニューラルネットワーク(DNN)と言うことがあります。そして、DNNを利用したAIの学習手法をディープラーニングと呼ばれます
AIの定義は使う人や文脈によって異なりますが、技術者がAIと言う用語を使う際には、ニューラルネットワークやディープラーニングといった技術を指して使われることが多いです。

ディープラーニングを使ったAIシステムを活用している業界として、製造業・外観検査、インフラ保守、化学・化粧、自動車・制御、医療、航空・宇宙、教育関係などの分野で幅広く活用されています。

例えば、みずほ証券の株取引システムがあります。みずほ証券では、ディープラーニングを利用して、ある時刻に株価が上昇するか下落するかを予測する株取引システムを導入しています。2つの指標となる「予測時刻」と「予測時間(どれだけ先を予測するか)」にそれぞれ専用のニューラルネットワークを作っています。

また、運転手の代わりに、より速く正確に周囲の物体を認識するためにニューラルネットワークを使った画像認識システムが使用されております。
例えば、自動車や歩行者、落下物などの障害物を検出し、障害物までの距離を計算するものもあります。

人間の脳の研究がAIの発展につながる?

さて、前置きが長くなってしまいましたが、ここから、徳田さんがスタディーセッションで発表した、脳神経学とAI研究の関連性について見ていきましょう。

下の図は、今回の発表内容が、脳神経学(ニューロサイエンス)と計算機科学(コンピュータサイエンス)にまたがる領域であることを示しています。

弊社は外国人メンバーが多いため、スタディーセッションも英語で行われます

近年、こういった脳神経学と計算機科学にまたがる領域の研究が盛んで、徳田さんが紹介してくれた論文も最新(2022年)のものになっています。この論文を日本語タイトルにすると、
「ディープニューラルネットワークの最適化におけるシナプス結合原理の導入」と言ったところでしょうか?

私たちの脳細胞を接続するシナプスの動きを、AIの学習にも取り入れるとどうなるか、という難しそうですな内容ですが、徳田さんが分かりやすく説明してくれました。

脳神経学(ニューロサイエンス)を計算機科学(コンピュータサイエンス)に応用する


まず、下の図が人間の脳の働きについての説明です。
人間の脳では、presynaptic neuron(シナプス前細胞)とpostsynaptic neuron(シナプス後細胞)をsynapse(シナプス)が接続することで、電気信号を伝達します。
これをニューラルネットワークに適用すると、presynaptic node(シナプス前ノード)、postsynaptic node(シナプス後ノード)をsynapse(シナプス)が繋いでいると解釈できます。

人間の脳の働きとニューラルネットワークは似ている


AIの学習(トレーニング)中、ニューラルネットワークは二つの形で変化します。
1. それぞれのシナプス結合の「強さ」が変わります。
2. ノード同士の「繋がり方」(組み合わせ)が変わります。

AI学習中のニューラルネットワークの変化・調整


人間の脳神経の組織についてもう少し詳しく説明すると、シナプス後細胞にはDendrite(樹状突起)と呼ばれる部分があり、その中の隆起部をSpine(スパイン)と呼びます。
このスパインが、シナプス前細胞とシナプス後細胞の信号を伝達する役割を担っています。

シナプス結合の詳細さて、このようなシナプスの信号伝達の中で非常に重要な性質が二つあります。

1. 非線形結合:各信号を非線形な(足し算や引き算の組み合わせで表現できない)状態で結合します。

2. 恒常性メカニズム:それぞれのシナプスの強さは、樹状突起の恒常性(内部環境の安定性)を保つために、個別に変化します。

脳神経学では、シナプス結合の変化のしやすさ(シナプス可塑性)は、シナプス結合の重みの分布とシナプス強度の局所的な制御に影響を受けることが知られていますが、計算機科学におけるニューラルネットワークの学習では、こういった複雑性は多くの場合無視されています。

つまりニューラルネットワークは、人間の脳の動きを模したものではありますが、あくまで部分的にしかその働きを表現できていないことになります。

詳細な説明は割愛しますが、これらの複雑性を数学的に表現し、ニューラルネットワークの学習に取り入れると、どうなるか……というのが徳田さんが紹介してくれた論文の結果になります。

シナプス結合の原理を取り入れたGRAPESという手法でAIを学習させた結果

上のグラフで「With GRAPES」と書かれているのが、この手法でトレーニングしたAIの精度です。(横軸は学習回数)

With GRAPESと書かれたグラフの方が、少ない学習回数で高い精度を達成できていることが分かります。
つまり少ない計算機資源でより良いAIを作れる、ということになります。

人間の脳を解明するとことでより良いAIモデルが?

このように、脳の働きを解明することで、よりAIモデルを開発できるのではということで、脳科学(ニューロサイエンス)の専門家が計算機科学(コンピュータサイエンス)であるAIの研究にも貢献するという学際的な動きがあります。

今回のスタディーセッションのご紹介はここまでですが、このようにコンピュータサイエンスの専門家以外もAI技術に注目していているというのは興味深いですね。
生命情報学を専攻している徳田さんも、AIソフトウェアを開発している弊社で活躍しています!

質問コーナー!

最後に質問コーナーを設けさせて頂きました!(ワクワク)

Q: Copryに入ってよかった点はなんですか?


椋子さん :
エンジニアとしてだけでなく、人として尊敬する方々と出会えたことです。
Corpyで働かれている方は皆さん本当に優しく素敵で、日々一緒にお仕事をする中で、皆さんと出会えてよかったと感じます。 

HAKO :
本当に僕もそう思います!様々なバックグラウンドのある方々と一緒に働けて多様性が学べるとても良い職場だと思います。

Q: 今まで1番やりがいのあった仕事とは?

椋子さん :
フロントエンドエンジニアとして画像のアノテーション機能を実装しているのですが、それが今実際のプロジェクトで使用され始めていて、そのフィードバックを頂いたときにやりがいを感じています。

HAKO :
自分の研究分野が実際に使われるのって達成感だったり、満足感を感じますよね!

Q: どのようなエンジニアと一緒に働きたいですか?
コミュニケーションを大切にする方継続的に学ぶ意欲がある方です。私が一緒に働きたいと言うのは恐れ多いですが、Corpyでそのような方々と一緒に働かせていただく中で、これらのことが大切であると感じていています

HAKO :
リモートワークでの働き方に変化した今、従業員同士のコミュニケーションツールがオンラインだと、コミュニケーションの大切さを再認識できますよね。
丁寧でとても謙虚な姿勢が見られるご回答ありがとうございます!


今回の記事で読者の皆様に少しでも神経科学とAIの関係性に興味を持って頂けると幸いです!

また、AI技術の研究開発スタートアップとして、弊社は「先端 AI 技術で人命を救い,平等を拡張する」というミッションのもと、高い信頼性が要求されるミッション/セーフティクリティカル領域に AI を導入するためのソリューションの開発に取り組んでいます。

是非興味を持って頂いた方は、こちらよりご応募下さい!

                                                                                                       執筆:HAKO


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