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おでんのあるいえ

 あつあつのおでんを召し上がれ。たっぷりと用意してあるから。白こんにゃく、食感がいいよ。ふうふうして食べてほしい。この味噌をつけてみて。焼酎をお湯で割ってみて。出汁昆布なんかいれてみたりして。もちろん、梅でもいいよ。
 外はずっと冷えていて、いつまでも、暖かくなる素振りを見せない。雪まで降ってきた模様。もっとも、雪が降るとかえって暖かくなるというけどね。吹雪かなければ、ということかしら。静かにおちる牡丹雪なんか見ると、無風さが際立って、同時に気分を穏やかにさせるような気がする。
 どんどんおかわりしてほしい。お酒はのんびりちびちびと。お腹が空いていた? それは良かった。
 悲しいことがあってね、なんて、そんな話をしみじみするのも、悪いことじゃない。食事があるのだから、大丈夫、むしろ、その話は溜め込まないほうがいい。落ち込んだら、泣けばいい。ただし、お腹にはちゃんと入れてから話をすること。そうじゃなきゃ、生きる気力をなくしちゃうよ。ちゃんと食べていたらね、大丈夫だから。
 歌を歌うのもいい。歌は流れる、どこまでも。流れのうちに生きればいい。
 それから、ゆっくりと眠るしかない。人間、それっきゃないのよ。夢はまぼろしなんかじゃない。夢のあるうちに生きなさい。

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