「オンライン英会話」を話しっぱなしにしないコツ。経験学習理論を応用する。
「オンライン英会話」で話す練習は本当に英語力向上につながるのか、という質問はよく聞きます。私は英語力向上に大きく貢献すると考えていますが、その向上を確実にするコツは、経験学習理論に学ぶことだと思います。
この記事は、経験からの学びを科学的にモデル化した経験学習理論を紹介し、「オンライン英会話」にどう応用するかを探求します。
英語が話せない、は本当に話せない?
実は多くの方が、英語の先生も含め、実践的な英語会話の練習「だけ」では英語力はつかないと、英語を話すことを中心とした英語学習に懐疑的だと思います。
会話を中心にしたトレーニングばかりで文法の詳しい分析や応用練習をしないと、英語力がつかない。文法や語彙をある程度学んでから英語で話す練習をしないとブロークン英語が身についてしまう。英会話を始めるのは、まず高校までの英語のしっかり復習をしてから。
こういう意見は日本で「英語を話せない」と英語を試さずに拒んでしまう人を縛っている「呪縛」になっていると思います。
まず文法や語彙をやってから会話をするべきと考え、英語の「勉強」に励むだけでやる気がつきて、結局英語を使い始める経験をしないままに終わってしまう方。
せっかく基本的な文法と語彙を中学レベルまで学んでいて聴いて話す力は潜在的にあるのに、自分の英語力は不足している、英語は話せないと思い込み、英語は話せませんと言い切ってしまう方。
英語は言葉です。相手の思いをわかり、自分の思いを伝えることができれば、最初はそれでいい。そんなに難しく考える必要があるのでしょうか。
私は、会話をしながら文法や語彙を学ぶ方が、ずっと効果が高いと考えています。英語は使いながら学ぼうということです。使う気持ちをもたないと、いくら語彙や文法を知っていても、コミュニケーションの手段としては無駄になってしまう。
(英語の知識はテストには役立ちます。でも、テストの点数は英語を学ぶ目的ではなくて、英語のコミュニケーション力をはかる手段というのが本来の考えだと思っています。)
そこで英語を使いながら効果的に学ぶ方法を研究してきました。そして、経験を振り返りその経験からの学びを意識的に次の経験に生かしていく、経験学習理論が重要なことがわかってきました。
経験の重要さ
私が英語の学びと経験学習理論の強い関係に気づいたのは、日本の様々なビジネスパーソンに、彼らの英語で仕事をする苦労とその解決方法を聞き取ったインタビューの分析からでした。
商社、銀行、エンジニア、アカデミア、製造業、インフラ構築、さまざまな領域のビジネスパーソンに経験を聞くと、ほぼ全員が英語を使う実体験から学んだ経験を語り、経験の蓄積こそ重要であり、英語力の飛躍のきっかけだったと語りました。
後に大商社で部門を牽引するような英語でのハードネゴシエーターになった人も、日本の技術を海外に売り込むために海外で英語を駆使するプロジェクトマネージャになった人も、みな、最初は文法も語彙も不足して、英語が話せない自分を励まし、ブロークン英語から始めたそうです。そうやって使い始め、使い続けたから、英語の達人になったのです。
私は彼らの話しを聞いて分析し、コンフォートゾーンからでて英語を使う気持ちが、日本で育った英語学習者には必要だと結論づけました。コンフォートゾーンとは、安心して気持ちよくいられる場所。コンフォートゾーンを出るとは、不安でこわごわでもやってみることです。つまり、日本語しか使いたくない、英語を使いたくない、下手な英語でカッコ悪くていや、という気持ちに負けないことです。
そして一歩前にでて英語を使い始めたら、その経験を英語力の向上に結び付けるように、経験学習理論のモデルを意識することを提案します。
経験学習理論
経験学習論については多くの紹介記事が書かれています。特に、職場のオンザジョップトレーニング領域では深く研究、実施されています。そこでここでは非常に簡単に紹介します。
まず、コルブの経験学習理論のモデル図(下)をみてください。コルブの経験学習理論は経験から学ぶプロセスをモデル化しています。
(コルブの経験学習理論についてWikipediaでは英語記事しかみつけられませんでした。日本語で調べたい方は、コルブ+経験学習で検索するとたくさんの紹介ページが見つけられます。ここに示すモデル図はコルブのオリジナルモデルをこの記事のためにわかりやすく書き直したものです。)
右の上の四角の箱は、英語を使う経験です。その経験を振り返り、うまく使えなかった部分を考るのが、その下の四角の箱です。そして、どうすればよかったか、自分なりに解釈し次にうまくやれる方法を考えるのが左の四角の箱。そして、そのよりよい方法を積極的に次の経験で試してみるのが左上です。
コルブの経験学習理論は、このサイクルを繰り返していくことによって、人は経験から学んでいると説明します。つまり、経験をする、あるいは英語を使うたびに、振り返り、よりよくする方法を考え、その方法を積極的にやってみる、という経験のサイクルを積み重ねていくのです。
このモデルを応用して、大学の授業でも私は英語を話す練習は同じテーマで必ず2回、できれば3回繰りかえすようにしています。最初の出来が50%でも次は70%、3回目に80%満足できるように、経験を振り返り、よりよい方法を考え、新しい経験に生かす機会を作ります。経験学習理論のサイクルを実践することを目指しています。
ここでいう80%という目標は、自分が頭の中に浮かんだイメージをどれだけ思い通りに表現できたか、自分自身でつける主観的評価です。自分の満足度で判断します。
この振り返りの過程で、自分の思いをより納得する英語で伝えるために、新しい語彙や表現を調べて比較し、より細かいニュアンスをあらわす文法を考え使ってみます。
この方法なら、英語を使いながら、英語の語彙、表現、文法実践力を向上させることができます。
オンライン英会話への応用
そして一人で英語のトレーニングをしている方にとって、この経験学習のサイクルを繰り返し、練習する場として「オンライン英会話」が非常に適していると思います。
「オンライン英会話」を毎日受講する方に、毎日テーマや話題を変えるのではなく、講師を変えて同じテーマを2日、できれば3日繰り返すことを提案します。
「オンライン英会話」の前後に一人でこつこつ予習や復習を続けるのは難しいですが、「オンライン英会話」のレッスンそのものを復習と予習にしてしまうのです。
レッスン3回を使って同じ話題について話せば、昨日のレッスンは今日の予習になり、明日のレッスンは今日の復習です。昨日習った新しい語彙や表現、昨日使えなかった文法は、今日意識して全部使ってみるわけです。違う講師を相手にトレーニングをすれば、3日間で違う表現や語彙も教えてもらえて、英語力に幅が生まれます。
世界中で様々な領域で応用されている経験学習理論。英語の学習にも応用し、英語を使う経験を重ねながら継続的に意識して学ぶ努力をする。これが、「オンライン英会話」英会話の経験を通して英語力を向上させるコツだと私は考えています。
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