「オンライン英会話」で英語を話せるようにトレーニング。英語学習に大きな変化をおこすコツを探る。
私は「オンライン英会話」を使って授業をしたり、その効果を研究したりしている大学教員です。2008年ごろから「オンライン英会話」に興味をもち、思いつく限りのいろいろな方法で「オンライン英会話」を使い、調べてきました。
この夏休み、今まで学んだことを「オンライン英会話」を使って英語学習に大きな変化をおこすコツをテーマにまとめてみることにしました。8月末まで20本の記事を書きたいと思っています。「オンライン英会話」をやっている方、やってみたい方にとって参考になれば幸いです。
どうぞよろしく。
「オンライン英会話」のおさらい
インターネットでフィリピンなどの外国人と英語で話す英会話サービス、「オンライン英会話」がじわじわと広がっています。サービス会社が数多く登場し、講師の国籍、カリキュラム、価格、子どもやビジネス向けなどのターゲット別など、選択肢が多様化しています。
一回25分がたった150円から(最低価格帯、数千円のサービスもあります)という衝撃的な価格と、いつでもどこでもマンツーマンという従来は考えられなかった学習方法が評価されているのだと思います。
でも、単なるおしゃべりに終わって効果が実感できない、何を話していいかわからない、カリキュラムが退屈、ノンネイティブの先生の質に不満など、不評も聞きます。
私は過去数年「オンライン英会話」をいろいろと調べたり、大学の授業で学生のトレーニングに使ってきました。そこで学んだ多くのことをまとめておきたいと思い、この記事を書きます。
20回の記事のうち、初回は自己紹介です。次回以降に本題に入ります。
簡単な自己紹介
大学までの私は、外国に出ることを夢見ていたものの、学校の教科としての英語は好きになれませんでした。語学の天才ではなく、記憶力はそこそこ、すぐ三日坊主になる性格の私にとって、語彙と文法中心の英語は好きになれなかったのです。受験科目として合格ラインをクリアするのが精いっぱいでした。
それが、思いがけない転職で、北京でアメリカの会社で働くことになり、たった一人の日本人として毎日英語漬けで仕事をすることになったのは、もう30年も昔です。英語と悪戦苦闘しました。
その苦戦の中で英語とビジネスをちゃんと学びたいと思い、アメリカの大学院でMBAとMAをとりました。友人に恵まれ、英語の苦労はあったけれど、楽しい日々でした。その後、アメリカのIT企業の東京支社に勤めていました。ここでも、アメリカ人とメールのやりとりで仕事をすすめるのに随分と苦労しました。
またも思いがけず転機がおとずれ、仕事をやめて家族とイギリスに住むことになりました。子どもたちはイギリスで幼稚園から大学まですごすことになり、気がつけば在英16年。子どもを通して見たイギリスの教育に感銘し、イギリス人に交じって英語教師の資格CELTAと子ども向けの英語教師の資格CELTYLを取りました。
子どもの手が離れてからは、イギリスの大学院で言語習得の修士号を取り、応用言語学で博士号も取りました。その後、日本に帰って、大学で英語を教えて今に至ります。
こう書くと、さぞかし英語がうまかろうと思われるかもしれませんが、自分としては今でも毎日英語と悪戦苦闘しています。苦闘の中身は変わってきていますが、英語で苦労するのはずっと同じで、英語を勉強し続けています。苦労しているからこそ、英語の先生になろうと思ったのです。
オンライン英会話との出会い
イギリスで英語を教える資格を取って、イギリスでヨーロッパの子どもに英語を教えたりしました。その時、英語を学びながら教室の内外でいろいろな国の子どもと英語で話せる、イギリスの英語教育の当たり前の環境が衝撃的でした。
日本でも、英語を使いながら学べればいいのに、とずっと思っていました。
そんな時、フィリピン人を講師に、オンライン英会話のサービスが始まったことを知りました。イギリスの修士課程で言語習得学を学んでいた2009年ごろに、最初のオンライン英会話のサービスについて調べて発表、その効果をイギリスの大学院仲間と議論したりしました。英語を使いながら学べる革命的な学習法が登場したと思ったのです。
早速お試しをしてみてさらに気に入り、それ以来英語のコミュニケーションを勉強したいと相談をされると「オンライン英会話」を強力にお勧めしてきました。英語を使いながら学べる、最強・最善な方法と思っていました。
さて、話しは飛んで、4年程前に日本に帰国して初めて日本で大学教員として英語を教えることになりました。面接のとき、ぜひ「オンライン英会話」を使った授業をしたいと熱心に話したことを覚えています。
すぐに「オンライン英会話」を授業で使うことはできなかったのですが、IT担当の教員と話していて瓢箪から駒、IT予算の実験授業として「オンライン英会話」をやってみることになりました。この時、授業で採用するサービスを決めるために主なオンライン英会話のサービスをひととおり、お試し期間を利用したり一ヵ月だけ会員になって自分でやってみました。
最初の年は履修生10人の授業で、2年目は30人、3年目には60人と、いろいろな英語科目で、段々と規模を拡大して「オンライン英会話」を使った授業を教えました。
一年目には大きな挫折がありました。「オンライン英会話」を全員が一ヵ月自己負担なしで受講できるという夢のようなチャンスができたのに、学生の三分の一がほとんど受講しなかったのです。
私が思うほど「オンライン英会話」は優れた英語の勉強法ではないのか。私の教え方が悪かったのか。授業との連動が不十分だったのか。どう改善したらいいのか。それ以来、アンケートを取ったり、レポートを書いてもらったり、「オンライン英会話」の受講を傍で観察させてもらったり、試行錯誤をしてきました。
もちろん、自分でも「オンライン英会話」を学生と同じタイミングでひと月にわたり毎日受講しました。この時、意識していろいろな国の講師を選び、かたっぱしから「日本人に英語を教える時に何に苦労をしていますか」と英語でインタビューをしました。結果として、アジア、ヨーロッパ、アフリカの10カ国以上の英語講師から、率直な意見を聞けました。教えるという立場が同じなので、会話は弾むし、いろいろな教え方の知恵を授けてもらえて、楽しかったです。
この講師たちの苦労話しを聞いていて「オンライン英会話」講師の実状にも興味が出て、インターネット上の英語の転職サイトや英語掲示板で「オンライン英会話」講師の率直な書き込みを100ページ以上読みふけりました。それまで漠然と感じていた「オンライン英会話」不思議の謎がずいぶんと解けました。
大学の授業で「オンライン英会話」を使うことの評価は英語教育やIT教育の学会で発表し、論文にもしたいと考えています。
ただ、この過程で知ったいろいろな実状やノウハウ、受講のコツは、「オンライン英会話」をやってみたい方にも役に立つのではないかと思って、学術報告とは別に、Noteの記事をまとめることにしました。
ついでに言えば、私の研究テーマはビジネスパーションやプロフェッショナルが英語を使って仕事をする際の課題を聞き取るというものですが、若いビジネスパーソンの多くが「オンライン英会話」で勉強していると言っています。また、会社の研修も従来の社内英会話教室から、「オンライン英会話」に変えたという話しもよく聞きます。研究のインタビューでも「オンライン英会話」をどう使っているか、経験談を聞いてきました。
そんなわけで、この記事は学生だけではなく、ビジネスパースンにも、そしてそれ以外の英語に興味のある方も念頭において、「オンライン英会話」をどう使うといいか、これまでの経験と研究から私の考えていることを紹介します。
これから、8月末までに20回ぐらいを目標に、「オンライン英会話」についていろいろな角度から考えたいと思います。私なりの夏休みのプロジェクトと思い、書く私も楽しみにしています。読んでくださる方のお役にたてればうれしいです。
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