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ノルマ型事業計画から目標型事業計画へ進化させる

多くの会社においては「目標=ノルマ」となっています。

このため、「目標」という言葉を聞くと、嫌なイメージを抱く人も多いのではないでしょうか。

ノルマとは元々ロシア語で、規範・規準の意味で、一定時間内に果たすよう個人や集団に割り当てられる標準作業量を指します。

そこで、

  • 目標:企業や個人が達成したいと考えている状態や状況

  • ノルマ:企業や個人が達成しなければならない状態や状況

と定義すればどうでしょうか?

本来商売は自由意志の原則に基づくものです。

企業理念の実現のために目標として「売上100億円を達成したい」というのは何の問題もありません。けれども、これが会社のノルマとして「売上100億円を達成しなければならない」となると、いろいろな問題が生じます。

ノンフィクションライターの窪田順生氏は「大企業のノルマが、『不正の温床』になる本質的な理由」という記事を7年前に書かれていました。

そして、今回のビッグモーターの件を受けて「なぜ『ビッグモーター』で不正が起きたのか レオパレスや大東建託との共通点」という記事を書かれています。

二つの記事を読んで、私が感じたのは「事業計画もノルマ型から目標型に進化させる必要がある」ということです。

V U C A の時代と言われている昨今のような環境下においては、「今月は売上1億円を達成しなければならない」という計画を立てても、なかなかその通りにはいきません。

けれども、数字は一人歩きするので、「何が何でも売上1億円を達成しなければならない」となれば、少なからず不正が起こる恐れがあります。一方で、計画通り進まないから簡単に諦めてしまうという組織風土であれば、いつまで経っても目標は達成できません。

この辺りのさじ加減が難しいのですが、少なくとも、前述の定義のように売上1億円が

  • 目標:企業や個人が達成したいと考えている状態や状況

  • ノルマ:企業や個人が達成しなければならない状態や状況

のいずれかによって、人の行動も変わってきます。

前者の目標なら自ら達成したいと考えている数字であり、その達成のために、どうすれば良いかという創意工夫につながります。しかしながら、後者のノルマであれば、誰かに強要されている数字であるため、自分の保身のために数字だけなんとか辻褄を合わせようとする気持ちが生まれます。

以前あるベンチャー企業の社長が「事業計画なんか作りたくない」と言っておられました。

なぜなら、投資家から出資してもらうために事業計画を作って、「半年後にはここまで開発が進んで、1年後には売上が5,000万円になります」と書いてしまうと、その数字が達成できなかった時に、投資家からいろいろ文句が出るからです。

この場合、事業計画がいわゆるノルマ型になっているため、「これだけ売上を上げるので、出資してください」というものになっていた訳です。

しかしながら、事業計画はあくまで過去と現在を踏まえて、未来を予測した仮説です。仮説の前提条件が変われば、計画の数字は当然変わります。

けれども、その際に当初に立てた計画が「目標:企業や個人が達成したいと考えている状態や状況」として位置付けられているのであれば、変化した前提条件の下で、最初の仮説がどのように変わるのかをしっかりと説明できれば本来は問題が起きないはずです。

ただ、この点は

・経営者の中には事業計画を資金調達のツールとしてしか考えていない人がいる
・投資家や金融機関などの中にも計画は何がなんでも達成すべきものだと考えている人がいる

ために、なかなか一筋縄ではいきません。

先ほど紹介した記事の中に「ノルマ主義とは計画経済主義」というフレーズがありました。ソ連の計画経済主義が最終的には破綻したように、経済は計画通りにはいかないことを前提に物事を組み立て直さないと、どこかで必ず「無理、無駄、ムラ」が生じます

自らの自由意志に基づいて立てた目標に向けて、それぞれが知恵を絞り、汗をかくような流れができたら、日本の経済もすごく足元にしっかりしたものになります。

強要が大嫌いな私はノルマも大嫌いです。企業も人も事業計画もそろそろノルマの呪縛から解放されるタイミングに入っているのではないでしょうか。

なお、弊社では「人の感情とお金の勘定を整えて、したたかに生き抜く会社をつくる」ことに取り組んでいます。

今月は「お金の勘定を整える」ための切り口として、オンラインで「新規事業の立ち上げに使える事業計画の作り方講座」を開催します。

(内容を一部ご紹介)

・使い捨ての事業計画ではなく、使い続ける事業計画を作る
・ベンチャー企業で2億円の資金調達に成功した4つの要因
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・事業を続けていくための4つの条件とは?
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・自分の生活が第一:事業計画は「下」から作る
・プロゴルファーとアマゴルファーの違い
・三位一体で考える:価格・数量・時間
・9つの打ち手を駆使する
・営業担当者が資金繰りを15%改善した秘密とは?

ノルマ型ではなく、企業や個人が達成したいと考えている状態や状況の実現に向けた「目標型」の事業計画として「お金が回る事業計画」の作り方を分かりやすくお伝えしますので、ぜひご参加ください。

なお、最後にベストセラー「ストーリーとしての競争戦略」の著者楠木建氏の「経営センスの論理」の一節をご紹介します。

ビジネスの根本原則を再認識する必要がある。それは「自由意志」だ。
誰からも頼まれていない、誰からも強制されていない、商売は自分の意志でやるものだ。自由意志はあらゆるビジネスの大前提のはず。これが商売の最後の拠り所になる。

「経営センスの論理」


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