「キーエンス解剖」に学ぶ”最強の営業”
プロローグ
国内トップ3の時価総額(14.5兆円)、上場企業で屈指の高賃金(社員平均年収2183万円)、メーカーとして脅威の利益率(売上高営業利益率:55.4%)のキーエンスは、なぜ最強企業として君臨できているのでしょうか?
下記参考文献よりベンチマーキングしたので、記載します。
※参考文献
攻めの文化と価値を生む仕組み
自社の工場に設置してある設備・機械が故障したら、修理対応を依頼する相手は、当然購入元のメーカーになるでしょう。しかし、購入元メーカーよりも先に、キーエンスの営業は、「買い替える予定ですか?」と訪問してきます。下記図のように、訪問先の周辺のお困り事も、常に情報収集しているためです。
キーエンスWebサイトから商品カタログをダウンロードすると、1時間後には電話がかかってくる。見積依頼したら即日回答、翌日にはラボでのトライアル試用も提案してくる等、他メーカーでは1週間程度準備に要する業務を、圧倒的なスピード感でこなしてきます。
他メーカーは代理店網での営業が多いのに対して、直販営業であることも大きいでしょう。
キーパーソンの異動動向も定期的に把握します。まぁ、これはどの会社でもやってますね。SanSanなどの名刺管理サービスでも、取り込んだ名刺の人物が異動したら、公開異動情報とマッチングして、お知らせしてくれます。
下記図は、付加価値を創出するキーエンスの仕組みです。顧客接点を増やして潜在ニーズを把握します。「世の中にあるものではまだこれができない」という顧客のニーズを書き込む”ニーズカード”を、毎月1人1件以上提出し、7割が世界初・業界初の新商品を開発します。競合がないため、粗利8割の商品が開発できます。
顧客を知恵のなる木として位置付け、自社を発展させる方法論は下記にも記載しました。
「先回り」の営業ができる理由
顧客説明のロープレ(営業ロールプレイング: 営業で実際に起こり得る場面を想定して新人営業などに疑似体験してもらい、実際にその場面に遭遇したときに適切に対応できるようにする学習方法)も、ベテランであっても週数回実施。
初回提案なのか、2回目なのか、顧客は技術に詳しいのか購買条件を樹にするタイプなのか等、ロープレの設定も詳しく検討してから行います。
実際の製品を利用したデモも多用します。資料で説明よりも、実物で効果を見たほうが、顧客受けはいいということです。
こういったロープレ実施数、顧客へのデモ実施数等がKPI(重要業績評価指標)として記録され、目標値とのGapがあれば原因分析できる仕組みが構築されています。
後輩であっても、先輩に対して「この提案もしたほうがいいのでは?」と、営業方法の改善提案を気軽にできるオープンな文化も醸成されています。
顧客訪問(アポ)も、1日5件以上計画できていないと、外出が許されない、という話もあります。効率性を重視していることを示していると考えます。
訪問報告書(日報)は、1分単位で記入させることで、時間・効率性を意識させていると考えられます。「商談終了から5分以内に書く」ことで、記憶が薄まったり、主観が強まることを防止するとともに、効率性を意識させることにもつながっているのでしょう。
下記のように、KPIの設定・モニタリング・Gapがあった場合の課題分析・是正対応が高速に回されているイメージがあります。結果よりも、プロセス重視であることも、改善の焦点がやり方の改善につながっている部分はあるでしょう。
期待を超え続ける商品部隊
商品企画・開発は、プロダクトアウト発想ではなく、下記図のように顧客価値創出を目指したマーケットインを重視していると考えられます。
表面的に顧客が欲しいというものは創りません。顧客自身も気がついていない潜在需要を発掘し商品企画できている点が、競合を出し抜き、高利益率を達成できている理由なのでしょう。
特定顧客専用の特注品も、需要が広がらないため創りません。顧客のニーズと商品企画のバランスの取り方は、下記にも記載しました。
「10万円のコストをかけてでも、1万円の商品の即納を守る。」という姿勢で、「キーエンスだったらすぐに持ってきてくれる」というブランドイメージを確立しています。
「理詰め」を貫く社風と規律
下記図の、利益還元の仕組みをオープンにして社員が経営参画マインドを持っている、1時間あたりの平均付加価値を見える化して付加価値は低い作業は外注、顧客の役に立つことを指向して自然とお互い協力する文化が醸成されている、等も最強の仕組みを支えていると考えられます。
サマリ:キーエンスの経営の本質
上記まで見てきたように、キーエンスが実践していることは、一見すると当たり前で、やろうと思えば他社が真似もできることです。ただし、一つ毎の業務・ルール・習慣は当たり前であっても、徹底的に必要な水準まで実施する仕組みが、思想・文化・哲学レベルで構築できていると考えられます。
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