[創作論779] ヒスイラン

翡翠色の花を咲かせるヒスイランのルーツが解明されました。

プヤ属(パイナップル科)は中南米を中心に200種以上が知られる植物で、特にチリに自生する種は花色の多様性が高いことが知られています。
そうした中、研究チームはチリ原産のプヤ属の仲間で、数年に一度、自然界では稀な翡翠色の花を咲かせるヒスイランの花色発現機構を調査してきました。
日本国内においては、2019年に科博 筑波実験植物園において青い花を咲かせる「プヤ・セルレア・ビオラケア」が、2021年に熱川バナナワニ園で淡い黄色の花を咲かせる「プヤ・チレンシス」が開花したことから、今回の研究では、それらの花を採集し、詳細な解析を行うことで、翡翠色の花の謎を探ることにしたようです。
両方の花が分析された結果、新規の成分を含めた16種類の色素成分を単離・同定することに成功したほか、ヒスイランは、両方の花がそれぞれ持っている特徴的な色素成分を併せ持っていることが示されました。
また、これは翡翠色の発色が両種の色素成分をバランス良く生合成することで成り立っていることが判明しました。
翡翠色の花を発色するには、液胞のpHが通常の植物よりも高い必要があることが判明していました。
液胞のpHが高いと、中に含まれるアントシアニンはより青味が強くなり、淡い黄色の発色に関わるフラボノールも色が濃くなります。そこで今回、液胞pHを高くすることが、現地のポリネーター(ミツバチや鳥などの花粉媒介者)の視覚にアピールすることに役立ち、その結果、種として存続できているのではないかと仮説を立てました。
仮説を検証するため、花色素溶液と視覚モデルを併せた新たな解析手法が開発されました。
その結果、翡翠色の花の色素組成を持つ溶液では、pHが高くなることで現地のスズメ目の鳥類のような4色型色覚を持つ鳥類に対して、より鮮やかに映るという結果が得られました。
この研究成果により、翡翠色の花が青い花と淡い黄色い花の種間交雑によって生じたとする仮説を補強する新たな証拠が確認されました。
これは、翡翠色の観賞植物の育種のための手掛かりとなる成果とされています。


素晴らしい研究成果ですね。
皆様も、自然界の不思議をテーマにした創作活動をぜひ行ってみてください。

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