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脳卒中になって、人生面白くなってきた~大学院生になってしまった(中編上)~

~愛犬とリハビリして、再生医療受けて、MBAを取って、起業を目指している人の話~

 しばらくすると、大学事務局から連絡が入った。入学式で入学生代表の答辞を行ってほしいという。元々人前で話すことは嫌いだったが、受けることにした。
 入学式当日はかなり緊張していた。本学はだけでなく世界中に生徒がいる為、オンラインでも繋がっていた。 
 副学長(現学長)、生徒会長からの祝辞があり、私の番になった。壇上に上がり5分程お話をし、自席に戻った。まぁ無難に終わったと思っていた。
 翌日事務局から連絡があった。私はスピーチ中、マイクのスイッチを入れ忘れていたらしい。オンラインで参加していた方は、もうただの放送事故。突っ立っている私を見ていただけ。そこで代読とテロップを入れ、ビデオで流してよいかとの連絡であった。事務局には手間をかけさせてしまった。

 授業が開始されると、私の身体は悲鳴を上げた。21時以降起きていることが出来ない身体。ただそんなこと、言っていられない。他の生徒とグループで行う授業もある。もう必死でついていくしかなかった。
 私の体力と後遺症の回復は、この学校に通った2年間が大きなターニングポイントだったと思う。もちろん皆さんに無理をしろというわけではない。再発したら、元も子もない。ただ回復期だの生活期など誰が決めたか訳わからない言葉で、自分の回復の限界を勝手に決めないでもらいたい。それは参考値。自分が決めなければ、回復に限界なんてない。

 1年生の前期。私の人生を左右する授業を選択した。2年で受けるゼミ「事業計画演習」の基礎を教えてくれるという。授業を受ける条件に、「事業計画書を書いたことがある人」とあった。本を1冊読んだだけで書き、周囲をドン引きさせた「自称事業計画書」しか書いたことはなかったが、まぁ何とかなるだろう!
 授業は実践的であった。先生は実績・知識ともにすごい方である。現在は講師を辞めて、海外で事業に専念されている。授業をサポートしてくれる先輩達も、実績・知識ともにすごい方であった。その中の1人三宅さんは現在実際に起業家として活躍されており、頻繁にご相談に乗って頂いている。同期の生徒達も実際に起業していたり、有名企業に勤めていたり、もう凄い人達ばかり。本来一歩引いてしまうのだろうなぁ。アホな私はその様な環境が、楽しくて仕方がなかった。この方達にお会いできたことが、私の大きな、大きな財産。

 この当時考えていたのが、脳卒中などで倒れると自動で救急車を呼ぶシステム。4.5時間以内に、患者をどうしても病院に運びたかった。脳梗塞ならt-PA治療(血栓を点滴で溶かす治療)ができる。病気を根本から無くしてしまえば良いと考えていた。
 良くこの授業で言われていたのが、土地勘のある分野での起業。つまり自分が今まで行ってきた分野で、起業をしないと失敗するよ、ということ。まぁそりゃそうだ。でも私がやりたいことは、それに反していた。正直ことごとくダメ出しされていた(笑)

 先生、先輩、同級生、みんなが暖かかった。決して私の戯言を馬鹿にせず、自分の知識や経験を惜しみもなく与えてくれた。自分もいつかこうなりたいと思った。
 私は結局スマートウォッチが異常を感知して、救急車を直に呼ぶシステムを事業計画書に書いて提出した。システム名は「こぱん」。脳梗塞を経験した方はご存じだと思うが、4.5時間以内に専門的な病院でt-pa療法(血栓溶解療法)を受けられれば、40%近くの方が後遺症を抱えずに帰宅することができる。直接医療につながる環境を作りたかった。ただ実際誰がこんな物作るのだ。私は作り方なんて知らない。正直ドラエモンの世界だな。
 それからしばらくするとAppleが、Applewatchが衝撃を感知すると119番通報をしてくれるサービスをスタートした。もちろん本国アメリカでは、同サービスが以前からあったらしい。私はすぐに購入し、現在も愛用している。無知って本当に恐ろしい。
 ただこの時、考え方は間違っていなかったなと変な自信を持った(笑)。この問題は私が解決する課題ではなくなった。というか作れないし(笑)。

 その講義が終了する際、先輩が飲み会を企画してくれた。先生は海外に在中していたが、帰国に合わせて開催された。先生は講師を辞め、事業に専念するのだという。当時はコロナなどなかった。とても楽しい時間を過ごさせてもらった。
 この時先生に頂いた言葉で、今も心の支えになっていることがある。講義中、起業で1番重要なのは自分の土地勘(専門性)だと教えられた。私は医療従事者でも何でもない。専門知識がない分野での起業は、やはり辞めるべきかお聞きした。
「松本君はやるべき。小脳が4㎝壊死した身体で感じたことなんでしょ。一緒にやってくれる人を探せばいいんだよ」
成功するかどうかは自己責任。ただ諦めてしまったら、そこで終わり。患者側の土地勘に賭けることに決めた。

 SBI大学では、人間学という授業があった。中国古典などを学ぶことで人間の根幹をつくるというもの。簡単に言うと、「小難しいこと使えても道徳的に問題ある人は組織のトップにはなれないよね」ということ。「論語」、「貞観政要」「孫子の兵法」、中国古典ではないが「論語と算盤」、様々な授業を学んだ。
 すごく乱暴にまとめてしまうと、結局人の為にならないことは破綻する。人でもビジネスでも。ただ突然神様の様にはなれないから、常日頃から人の役に立てることを心掛けましょう。そうすれば、いつか自分も上手くいくよ。ということだと勝手にまとめた(笑)
 後は「志」、自分の生きる目的。どんなにバカにされても、声高らかに話せる目標。多分これを持つ為に、私はここに来たのだと思う。

 毎日勉強漬けの日々を送っていた。学校はオンラインとeラーニングが中心であったが、対面授業も行われた。色々な仲間ができ、自分の知らない世界を学んだ。結局人間は1人では生きられない。この頃には多少徹夜をしても、何とか踏ん張れる程に体力は回復していた。ただ朝のリハビリと散歩は、欠かさず行っていた。自分の身体に、過信だけはしない様にしていた。 
 1年生も終盤にかかった2019年12月、中国で良く分からない流行り病が発生した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。この当時は病気1つで、世の中がこんなにも変わるとは思ってもいなかった。

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※本文章は「はてなブログ」で更新したものをまとめたものです。   「はてなブログ」は下記URLより。毎日更新しております!https://copain.hatenablog.com/

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