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あいさつの魔法

一言で人の気持ちは変わることだってある

そう思った。

実家に帰省して1日目。
今日は家族全員が別行動だった。私は一人で買い物へ行くことにした。お気に入りの服を身にまとい、誰もいない家に「いってきます」を告げる。


玄関を出て、1歩。2歩。3歩。


こんにちは!!!


ビクゥッ!!!


思わず少し飛んでしまった。
こぼれそうな心臓を抑えて、声がする方を振り返る。2軒となりのお家の玄関先に、ピンク色のワンピースを着た2〜3歳くらいの女の子が立っている。

私にしてくれたんだよね?とじっと見つめる。
お父さんが慌てて私に向かって会釈をする。
その間5秒。


咄嗟のことに思うように喉が開かず、私の「こんにちは」は精一杯出したつもりだけど届かなかったかもしれない。


その子にくるっと背を向けて歩き出した。もっと大きな声で言いたかった。


ズキズキ
ちゃんと挨拶を返せなかった後悔で心が痛む。

…いや?心も痛いけど、足の小指めっちゃ痛い。え、足痛いな!?

ポカポカ陽気だから、と実家に置いておいたパンプスを履いて出かけた。久々に履いたので足にフィットしていなかったんだ。


まだ家からは1分程度の距離。戻れる。
でもめんどくさい。
でも、1日中履いてたら靴づれ必至。
ぐぬぬぬ。


一時帰宅。


早急にいつものブーツに履き替えて家を出る。
靴にゆとりができて、ズキズキが少し和らいだ。
だけど出鼻をくじかれて、気分が落ち込んでいた。


もう一度、玄関を出て、1歩。2歩。3歩。


こんにちは!!!


わっ、もう1度言ってくれた!?
心がポッと温かくなった。


今度はちゃんと。


こんにちは!

言えた。大丈夫、今度は伝わった、、と思う。


いってらっしゃーーーい!!


泣いた。心で泣きました。
いってらっしゃいなんて、いつぶりだろう。


毎日会社で「おはようございます」「お疲れ様です」は交わしている。義務的なものではなく、ちゃんと伝えているつもりだった。

だけど、あの「こんにちは」と「いってらっしゃい」には一言にぎゅっと気持ちが込められていた気がする。心に染みるものがあった。


挨拶って大事だね。
なんだか心がシャキッとした。ありがとう。
さっきまでのモヤモヤも心から100%の「いってらっしゃい」に吹き飛ばされていた。


挨拶一言で気持ちが変わることもある、普段何気なく口に出す言葉も気持ちを左右しているのかもしれない。毎日を心地よくする魔法の言葉かもしれない。
魔法って案外身近にあるのかも。


おやすみなさい。






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