熊野は水の国?!-coolなkumano5-
熊野信仰の起源である自然崇拝は、人々を圧倒する大地の営みを神として信仰してきました。その根源をなすのが水なのです。
熊野は、日本で最も雨が多いところ。雨が、大地に降り注ぎ、森を潤し、川になり、海に注ぎ、蒸発して、雲になって、また雨が降る。その繰り返しによって熊野の圧倒的な大地が形作られていきました。
熊野の川は、急流で澱むまもなく流れていきます。さらに土壌がほとんどが火成岩であるため粒子が大きく(沈殿しやすい)、表面積も大きい(浄化作用)ので水は清らかなのです。(私は専門家ではないですが、そう思っています。)
生命の根源である水への信仰。
熊野の三社は水を信仰してます。
・熊野那智大社の那智の滝は、滝自体が神さま。
・熊野速玉大社の主祭神である速玉大神は水の動きを神格化したもの。
・熊野本宮大社の旧社地「大斎原」に神が祀られたのは大斎原が常に水(熊野川、音無川、岩田川)に囲まれた浄化された清浄な場所であるということ。
熊野の森に降り注いだ雨は、源流から小さな川や滝に
■熊野の森
熊野の森は今、残念ながら他の地域と同様にスギ、ヒノキの人工林がほとんどになってしまっています。
私が知るこの森は、本当に数少ない天然林の森。熊野らしい森。
■植魚の滝
植魚の滝は、私の中ではナンバー1の滝です。(那智の滝は神さまなので別格。順位はつけられません。) 岩に囲まれていてなかなか姿を見せてくれません。その姿を観れば「おぉぉぉぉぉぉぉ!」て必ず言います。もう最高の滝ですよ。増水していなければ行けます。長靴で・・。ヒル対策をして。
植魚の滝がある古座川は滝の宝庫でもあり和歌山県内有数のクリスタルリバー。熊野カルデラ(詳しくは熊野とは①で)の申し子である古座川弧状岩脈に沿って奇岩の中を流れます。岩と清流が織りなす風景は、水の国にふさわしいものです。古座川も滝も改めて特集します。
■桑ノ木の滝
高田川の支流を登ればこんな優美な滝があります。植魚の滝と同様に「おぉぉぉぉぉぉぉ!」て言います。滝裏の岩には梵字がほられているとかいないとか。増水していなければ比較的簡単に行けます。
■安川渓谷
日置川水系の安川もクリスタルリバー。この滝もそばまで行けますが、滝壺は深く、壷のような形になっているようなので観るだけにしてください。
■百間山渓谷
紀州の箱庭と呼ばれた百間山渓谷。まさしく水の楽園です。大きな岩と滝、水の風景は必ず癒してくれます。トレッキングコースです。
清く澄み渡った小さな水の集団はさらに集まり支流に
■北山川(熊野川水系)とその支流
北山川(熊野川水系)とその支流は、北山川の蛇行しまくりの形をみればわかるように岩盤の中を縫うように流れています。そのためかすぐ澄むし、私的には支流の四の川、立合川は熊野(=和歌山)で最も綺麗な川と思っています。
■小川(古座川水系)
滝の拝があるのは、古座川水系の小川。小川は上流にダムがないので澄むのが早く極上です。滝の拝では、魚類のクライマーである坊主ハゼの滝登りを観ることができます(7月)。鮎もウヨウヨ。古座川は自転車、カヌーのアミューズメントです。
■高田川(熊野川水系)
桑ノ木の滝の下流には、「高田川自然プール」が出現します。
ここは安全に川水浴が楽しめます。冷たいですがさらっとして気持ちいいですよ。
■赤木川(熊野川水系)
熊野の深部(大雲取)から流れています。那智の滝の裏側です。
赤木川は北山川、高田川と同じく熊野川水系です。和田川などを集め熊野川に注いでいます。川を登っていけば熊野古道大雲取越の小口の集落で民宿や自然の家があります。川沿いはツールド熊野のコースで(R5はこのコースではない)自転車で走るには気持ちよく、夏はこの清流で泳いでください。
下流には、川の恵みに感謝し時に暴れる川を治めるため、川を神としてお祀りしているところもあります。
岩、川、樹木、山・・熊野信仰の起源は自然が神さま。この谷はいろいろありますよ。
■大塔川(熊野川水系)
安川と同じく大塔山を源流とする屈指のクリスタルリバーです。河原を掘れば温泉が出る川湯温泉があり、温泉と清流の交互入浴はすでにここでは昔からの楽しみ方です。(最近サウナブームで流行っていますが・・)
夏はこの川と温泉が熊野の観光を牽引しています。
冬には、仙人風呂が出現します。清流が流れる河原から温泉が湧く川湯温泉ならではです。特に朝風呂か夜風呂が最高ですよー
■太田川
那智の色川を源流に持つ太田川は、流域は小さく短い川ですがもちろん清流です。その清流で作られる太田米は格別です。
余談ですが、下流に「八尺鏡野(やたがの)」という地名があります。三種の神器のひとつで伊勢神宮にある「八咫鏡」はここでつくられた。と思うのは不自然ですか?近所に銅山跡もあります。その当時は銅鏡ですし。一緒に作ったと言われるあとの2つの鏡は和歌山市の日前宮にあると言います。三種の神器なので明らかにはできないとは思いますが。
そうでなければ、なぜこの地名になったのでしょうか???知りたい・・
熊野を永遠に
ここで紹介した北山川、太田川を除くクリスタルリバーは、ブナ林の南限であり照葉樹林が多く残っている大塔山(1122m)周辺(大塔山、法師山、百間山)を源としています。母なる山々です。
支流はやがて本川に入り、それぞれ熊野川、古座川、日置川となり太平洋に注ぎます。三重県には、清流で全国的に有名な銚子川もあります。
熊野川と古座川は、そのうち特集します。たぶん笑
熊野の水は神の地に相応しい輝きがあります。
水は万物の根源として人だけでなく森羅万象に恵みと潤いをもたらしますが、時に荒れ狂い甚大な被害をおよぼします。大斎原にあった熊野本宮大社は明治22年の大洪水により被害を受け現在の社殿に遷座しました。大斎原に神さまが鎮座して約1900年もの間こんなことがなかったんです。山の保水力がなくなったからでしょう。人災ですね。
枯れたことがない那智の滝も山の保水力をこれ以上減らすことはできません。
私たちは、熊野にあるこの清らかな水を後生にそのまま残すことが大命題で、それが、自然が神さまの熊野が永遠に「熊野」であることになると思っています。
熊野は水の国でもあるのです!!
これまでの記事は各マガジンに収納しています。こちらもよろしくお願いします。
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次号は「不思議・・那智七石」と思っています。
■撮影許可が必要なところは許可を得て撮影しています。
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