熊野とは⑥ 「最大のピンチから再生、新しい熊野」・・神仏分離と世界遺産登録
最大のピンチ
熊野とは①~⑤で紹介したとおり、自然崇拝が信仰の原点である熊野は、日本古来の神道に仏教、修験道と相まって神仏習合の聖地として「熊野詣」「西国三十三所巡礼」と変遷をみながらも多くの人々を集めてきました。
明治時代になると熊野は最大のピンチとなります。
明治政府により神仏習合を廃止するため神仏分離令が発せられるとともに修験道廃止令が布告されました。さらに神社合祀令も出され、仏教、修験道だけでなく、小さな神社や自然信仰の神社が廃止されます。
この時、神社合祀の反対運動に奮闘したので南方熊楠です。南方熊楠によって守られた神社や森、樹木は今も多く残っていますが、奮闘むなしく神社は廃止、樹木は伐採されたところも多くありました。
古来からの自然崇拝に神道、仏教、修験道、陰陽道などが混じり合って成り立っていた熊野は、王子社さえも合祀され、熊野は大きく衰退することになります。
昭和の熊野は、観光的にいえば、熊野三山(熊野速玉大社、熊野本宮大社、熊野那智大社、那智山青岸渡寺)がそれぞれの役割を果たしながら維持され、熊野本宮温泉郷や那智勝浦温泉の温泉、那智の滝などの信仰の起源であるダイナミックな自然があったおかげで引き続きお客さまが訪れていました。また、熊野古道などいにしえの道は、大部分が鉄道、自動車の発展とともに林道や国道などの公道に変化し、古道として残った道は荒れ、地域の皆さんの努力で何とか残っていきます。
よみがえりの聖地「熊野」。よみがえる熊野!!
この2000年以上続いてきた熊野の最大のピンチを救ったのが「世界遺産登録」です。世界遺産に登録されることで、道や神社などの構造物は文化財として保護されるとともに観光地として注目度が飛躍的に上がります。
世界遺産登録が大きなきっかけとなり、温泉などのコンポーネントや小単位の地域ではなく、再び「熊野」としてPRできるようになりました。「バラバラ」「それぞれ」のコンセプトでお客様にきていただいてた熊野が「熊野」として、まさに「熊野とは」を世界に表現できる時が再び到来したのです。それを国内外にプロモーションし、世界的な評価をいただくようになり多くの外国人が来るようになっています。
世界では「KUMANO」がすでに旅のキーワードになっているのです。
世界遺産登録のブームは1年です。以降は「世界遺産だから人が来る」ことはありません!!ただし、世界遺産と聞くと観光地を選ぶのに安心感がありますよね。エルメスとかグッチなどのブランド品と同じ感覚でしょうか。
熊野が持つ魅力・本質で勝負です。その戦略・手法については、ここでは記載しませんが、それは、熊野が持つ魅力(今まで記載してきた熊野とは①~⑤)があってこそのものです。
「ストーリーあふれる熊野の魅力」と「その魅力を伝える戦略・手法」がマッチしたということです。
やっと、いにしえのように熊野を熊野として紹介できるようになったんです。今はその魅力で世界の評価をもらい、国内外から多くの人々が「熊野」にくるようになりましたが、これからのことを考えると新しい魅力も必要ですよね。例えば、夏の熊野本宮。こんな状況です。
・暑いので熊野古道を歩く人は少ない。
・すでに歩いたことがある人が多くなってきた。
・川湯温泉で清流大塔川で川あそびが人気。
夏は、熊野詣や古道歩きではなく、川遊びのファミリーが多いということです。
幸い熊野は広い。その広さは新しい地域の特徴を出すには十分です。
もちろん、それは熊野とマッチすることは必須条件ですが・・
新しい熊野の魅力を創造し頑張っている方がたくさんいます。
新しい魅力が寛容の地「熊野」で融合して、さらに魅力あふれる熊野にしていくことが重要です。
今、熊野の楽しみ方
熊野三山参詣以外のおすすめ熊野の楽しみ方を少し紹介します。
■泉質抜群の温泉
熊野には熊野とは①で紹介したように泉質抜群、湯量豊富、絶景など自慢の温泉だらけ。そのほとんどがかけ流しです。
近代は、この温泉が熊野の観光を支えてきたのです。
・熊野本宮温泉郷(田辺市本宮町)
湯の峰温泉・・世界遺産の温泉「つぼ湯」がある。入浴できる温泉で世界遺産は唯一。江戸時代の温泉番付では東の横綱が草津温泉、西が有馬温泉ですが、熊野の温泉は、勝負を超越した行司として評価されている。90度以上のお湯が湧く希有な温泉で湯筒もあり、ゆで卵やゆで野菜なども楽しめます。
川湯温泉・・清流大塔川を掘れば温泉がでます。夏は清流と水遊びして温泉を。冬は、仙人風呂が有名。
渡瀬温泉・・日本でもトップラスの広さの露天風呂あり。宿は、コーナン系列です。
・熊野川温泉(新宮市熊野川町)・・日帰り温泉。露天の寝湯がいい。
・雲取温泉(新宮市高田)・・ゲルマニウムを含んだ乳白色。
・南紀勝浦温泉(那智勝浦町)・・多くの泉源と忘帰洞など多様なお風呂が
存在する。宿も多く、ホテル浦島がフラッグシップ。磯の湯が抜群!!
・湯川温泉(那智勝浦町)・・強烈な掛け流し(出しっぱなしの温泉)の日帰り温泉。
・串本温泉(串本町)・・宿、日帰りバラエティ豊富。
・月野瀬温泉(古座川町)・・一軒宿、日帰りオッケー。
・すさみ温泉(すさみ町)・・海近。絶景を観ながらの温泉施設は新しい。
・日置川温泉(白浜町)・・志原海岸。PH10.1の温泉は圧巻。
・えびね温泉(白浜町)・・日帰り温泉。温泉水購入持ち帰り可能ー飲めますー効能大。硫黄臭がある高アルカリ温泉。
・椿温泉(白浜町)・・かつての湯治場。泉質抜群。美肌の湯
・南紀白浜温泉(白浜町)・・日本三古湯。日本有数のリゾート。ロケーション、泉質などバラエティに富む外湯もある。パンダ、ビーチ、温泉、海産物など若手からファミリーまで楽しめるオールラウンダーな温泉。
IT企業のサテライトオフィスの集積。ワーケーションの聖地。白良浜はワイキキと姉妹ビーチ。
■熊野古道ウオーク
すでに定番で人気。熊野古道の王子や絶景ポイントなどにスタンプを設置しています。
和歌山県
熊野古道紀伊路19カ所、熊野古道中辺路41カ所、熊野古道大辺路13カ所
三重県 熊野古道伊勢路32ヶ所
奈良県 熊野古道小辺路6カ所
田辺市本宮では、サンティアゴデコンポステーラの巡礼道と共通スタンプラリーも実施中です。
*世界遺産に「道」として登録されているのは、熊野古道、高野山参詣道、大峯奥崖道の紀伊山地の参詣道とスペインのサンティアゴコンポステーラの巡礼路の2例だけです。スペインやフランス人には、熊野古道はサンティアゴコンポステーラの日本版。日本の神さまへの祈りの道。といえば、簡単に理解してくれます。
■自然が「神」で遊ぶアクティビティ
神々が棲まう熊野の大地、クリスタルな川と海、真っ青な空、満天の星を楽しむ。
・カヌー(古座川、日置川)
・シーカヤック(串本、太地の海)
・ラフティング、キャニオニング(北山川)
・キャンプ(飛雪の滝、川湯、大島他たくさん)
・筏下り(北山川)
・自然プール(高田川)
・ヨガ(白浜、すさみ、新宮・・)
・トレッキング(古座川、熊野古道・・)
・グランピング(白浜、日置川、大島・・)
・フィッシング(全域)
・星空観察(どこでも満天の星)
・海水浴(白良浜、ブルービーチ那智、玉の浦(私はぶつぶつビーチという笑)、橋杭・・)
・川遊び(古座川、日置川、富田川、安川、大塔川、北山川、赤木川、高田川、太田川など全域)
■WAKAYAMA800 サイクリング王国わかやま
県下全域800kmにブルーラインを引いており安全、安心にサイクリングを楽しめます。旅とサイクリングをコンセプトに
・サイクリストに優しい宿
・サイクルステーション
・パーク&サイクル
・レンタサイクル 等を整備。
また、モバイルスタンプラリーで和歌山県全域を周遊。さらに三重県、奈良県を含む熊野地域のライドは秀逸です。
自転車で、熊野の神を感じながら熊野詣ができますよ。
UCIの国際ロードレースである「TOUR de KUAMNO」(ツールド熊野)は、熊野を舞台に開催されています。
■熊野古道の保全活動「道普請」
世界遺産の道(熊野古道や高野山参詣道)を後生に良好なまま残していく取組。雨や観光客の行き来により道が痛んできます。特にこの地域は雨が多く、土が雨で流されてしまい、荒れていきます。
いにしえから地域のみなさんがこの道を守ってきました。今は、地域のみなさんのほか、企業や学校の子供たちに保全活道「道普請」をしていただいてます。SDGsやCSR、学校の世界遺産教育の場として国内で注目されている取組です。すでに、参加された方は35000人を超えています。
■クマノザクラ
これぞ新しい熊野。日本ではもうないといわれていたサクラの新しい野生種。100年ぶりの新種です。3月中旬~が見頃。多くの人がこの新種のサクラを観に来ます。「coolなkumano」でもう少し詳しく。
海外のお客様は、夏ではない時期に川湯温泉で河原の温泉と清流大塔川を交互に入る。これを一日繰り返していました。こんな熊野の楽しみ方があることに気づかされたのです。海外の人は、固定観念にこだわらず熊野を楽しみますね。
熊野古道を歩き、熊野三山に参拝、極上の温泉でまったり。これに、新しい熊野の魅力を追加することで、せっかくよみがえった熊野がさらに魅力のあるところとなると信じています。
前世の罪を浄め、現世の縁を結び、来世を救済するといわれる熊野の未来を考える時期ではないですかね。
私のおすすめ熊野の絶品!!
「熊野とは」の最後に、私が勝手におすすめする熊野の絶品を簡単に紹介します。
・熊野牛王神符ーくまのごおうしんぷー(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)
最高の権威があるお札。誓約書の初まり。魔除け。熊野詣の人々はこれを求めた。「熊野のお土産のおすすめは?」と聞かれると100%これです。
今は、魔除けや病魔退散に。熊野とは③で詳しく書いてます。
・仲氷店(新宮市)
古座川の水を72時間かけてじっくり凍らせた。頭がキーンとしないキメの細やかさ。一年中美味しいです。
・熊野の香りーMaffably-(新宮市)
熊野のスギ、ヒノキ、クロモジから抽出した100%天然のエッセシャルオイルを軸に展開する。熊野の森で材料を切り、熊野の真ん中にある工場で抽出し、熊野で販売。「熊野」「天然」にこだわるおねえさん2人がすべての工程をやってます。和歌山を代表する6次産業。
熊野の森の木は、熊野カルデラなどの影響かと思いますが同じ種類の木でも成分(熊野には固有種が多い)が違うのです。熊野ならではの商品です。
・グルメ(那智勝浦町)
地元の人が愛する洋食屋さん。仲良しご夫婦でやってます。勝浦に行けば50%の確率でいきます。行けばグリルドチキンが90%。
・ユータウン(那智勝浦町)
世界一美味しい焼きそばと宇宙一美味しいホットケーキ。卵サンドもうまい。昔ながらの純喫茶。
・パンとカフェnagi(串本町)
県外から買いに来る紀伊大島にある有名店。カフェも併設。宅配パンもやってます。
・かげろうカフェ(白浜町)
和歌山で最も有名なお土産の「かげろう」。白浜の入り江にあるカフェです。日替わりの「本日のまかない」は美味しいよぉ。
「生かげろう」はここにしか売っていません。
・松寿司(串本町)
もうこれ以上の寿司はない。串本の海でとれた新鮮な魚貝を堪能してください。「おまかせ」を注文すれば、その日の絶品のネタがでてきます。
・ 尾崎の干物(串本町)
お客さまにお勧め率100%の干物。お店でランチもいただけます。
私は、いつもみりん干し定食を。
・三木食堂(すさみ町)
お店は昭和感満載ですが、すさみのイノブタが楽しめます。私はイノブタクッパFANです。
・かあちゃんの店(新宮市)
元気なおかあちゃんたちがいる、定食とめはり寿司、おまんじゅう、地域の産品などのお店。コロッケは世界一美味しい。
・那智黒すずりー山口光峯堂ー(那智勝浦町)
那智黒のすずり石のお店。今は墨汁をつかうことが多いですが、ここは手彫りのすずり石を試しずりして、納得してから購入してもらっています。対面販売でこだわる逸品です。
一生もんですよ。ここのすずり石は。「伝統」「匠」「誇り」の店。
・丸正酢
那智の伏流水から作られる酢。古式醸造や木桶での酢づくり140年を誇り、世界でも販売されています。バレエティ豊かな商品があり、ちゃんぽんずが一番人気。困ったときはちゃんぽんず!
・清酒「那智の滝」「熊野三山」ー尾崎酒造ー
熊野地域唯一で本州最南端の蔵元。熊野川の伏流水からできる吟醸酒「熊野三山」、那智の滝の霊水を使用した純米酒「くまの那智の滝」、主力商品で熊野の地酒純米酒「太平洋」を作っています。熊野で日本酒といえばこれです。
・みどりやと万清楼と海ゆぅ遊亭
山水館みどりやー熊野本宮温泉郷 川湯温泉
万清楼ー南紀勝浦温泉
天山閣海ゆぅ亭ー南紀白浜温泉
私が熊野にいた4年間に特にお世話になった宿です。泉質抜群のかけ流しの温泉と、宿人が最高です。
以上で「熊野とは」完結です。
マガジン「熊野とは」に熊野とは①~⑥を収納しています。
少し重いプロローグになってしまいましたが、これで完結。
熊野を知っていただいた上で、これから私だけが知る熊野、かっこいい熊野、ガイドブックには載っていない熊野を写真を通じて紹介します。
「coolなkumano」です。よろしくお願いします。
★これまでの記事は各マガジンに収納しています。
こちらもよろしくお願いします。
マガジン「熊野とは」 ↓
マガジン「coolなkumano」 ↓
■撮影許可が必要なところは許可を得て撮影しています。
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