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おばあちゃんにパワーをもらった日

其日、仕事だったのに夜中頭痛が酷く、3時過ぎまで眠れなかった。
目を閉じていたら、次に起きたのは8時過ぎ。
到底、会社には間に合わない。
急いで向かいながら連絡をすると、大事を取って本日は休んでいいとのこと。

あと10分で会社に着くところだったのに拍子抜けしてしまう。
そうだ! 会社の隣駅にある実家に顔出しにいこう! そう思い付いたら急に心が弾んできた。

母に連絡をして、何かほしいものはあるか聞いてみた。
まだ9時を過ぎたところだ。
地元のおいしいケーキ屋さんがチラッと浮かんだが、オープンする前に実家に着いてしまう。
そんなことを考えていたら、「アイスが食べたい。」と返事が返ってきた。
サッパリしたのより、こってりしたアイスが食べたいらしい。

コンビニに寄って「こってり」を多い割合でバリエーションに飛んだアイスを購入。
実家に行くと、母と父がリビングにいた。
「一か月振りくらいだね」と嬉しそうな顔で言ってくれたのは父だ。
「なかなか来ないから~」などと母も呟いている。
昼過ぎに妹も起きてきて、お喋りを楽しんだ。

17時を過ぎて、おばあちゃんの夜ご飯の支度が始まる。
前回実家へ行ったときも本当はおばあちゃんに会いたかったが、ホームステイで会うことができなかった。

父が何やらおばあちゃんの部屋に行き話している。
「…顔見ていくか?」と所々聞こえ、おばあちゃんが押し車を引いてやってきた。
そして嬉しそうに「久しぶり。元気か?」と言った。
目が笑っている。
「元気かなと思ってたんだよ。この前、お前のことを話してたんだ。」
と、私のことを気にかけてくれていたみたいで嬉しい。

おばあちゃんは92歳。
耳が遠いので、所々会話が成り立たないところもあるが、分かりやすい言葉を選んでゆっくり話すと何とか通じる。

「また会おうね」と力強く言って手を差し出してきた。
私の左手と、骨と皮だけになった生暖かい手がぎゅっと触れる。
ごはんを手にこぼしたのかな、その手は少しだけべたべたしていた。
もちろん、全然嫌な感じではない。

そのまま父が「ほら、部屋に戻るよ」と促し押し車と共に父に付き添われたおばあちゃんは、自分の部屋に戻っていった。

私はおばあちゃんから元気をもらった気がした。
手を洗いたくなくて、アルコール消毒もしたくないからスーパーにも寄らず真っすぐ家に帰った。
実家からマンションまでの道のりを、左手をグーパーしながらおばあちゃんの感触を忘れないようにした。
この温度をいつまでも思い出せるようにしていたい。

父が「おばあちゃんも後1、2年かな」と言った。
高齢だし、肺に水が溜まっているがもう手術などできないのだ。
だから、実家に帰るときはこれが最後になるかもしれないと覚悟して会うことにしてる。
いつもおばあちゃんの笑顔を頭に焼き付けて帰る。

別々に暮らしているから死に目に遭えない可能性もある。
だから、できるだけ多く、一回でも多く、おばあちゃんに会いに行く。



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