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【選書】最近買った料理本+1冊の購入理由をツラツラと

新刊10月発売予定@絶賛校正中のCOOKBOOK LAB.主宰者が、苦しみから逃れて逃避しようとした先に向かうのはやっぱり書店です。

つい先日も美容院に行った帰りに、あまり入ったことのない書店にふらふらと立ち寄って、料理本ばかりをあっという間に積み上げて、1万5千円分も買ってしまうということをやってしまいました。重かった……いや、これでも途中でふっと我に返った瞬間に、2冊ほど「今度にしよ♪」と棚に戻してきたんですが…(戻したところで大した差はない)。

で、いい機会なので、なぜ自分はこれを手に取り購入に至ったのかという理由をじっくり考えてみようと思い立ちました。

正直なところ、書店で本を選んでいる時には何も考えていないのです。
いえ、正確に言うと、なぜその本に手を伸ばしたのかを説明する言葉を考えることなく脊髄反射的に手を伸ばし、表紙を眺めて奥付を見て、パラパラっとめくって買う買わないを決めています。
行動だけを描写するとそんな簡単な説明になっちゃうんですが、じゃあ「なぜ買うことにしたか」。
つらつら考えてみるに、私は5つの理由に大別されることがわかりました。

料理本を買う時の選択理由5つ

<1> SNSで出版を知っていた新刊の実物に出会い手に取る、買う

<2> SNSで注目していた、あるいはコメントするなど交流があった著者の本を見つけた、買う

<3> へえっと思うタイトル、あるいはテーマ、あるいはデザイン、あるいは著者のバックグラウンドに惹かれて手に取る、買う

<4> 私以外の誰か、主に家族や親しい友人が好きだろうなという本を見つけた、買う

<5> 資料として手元に残しておきたいと思う本を見つけた、買う

<5>は、料理本マニアとして、またCOOKBOOK LAB.主宰者としてどうしても実物を手元に置いておかねば本ですので、必ずしも私が「欲しい」と思ったわけではありません。あくまでも資料。
<1>も資料本に部類する可能性が高いものです。例えば料理レシピ本大賞の入賞作品などがこれにあたります。

<4>も、料理好きの夫の役に立つだろうなという本が主ですが、私は時々、家族以外の人へのプレゼントに洋書を選ぶことがあります。洋書なら相手もたぶん持っていないという推測が成り立つのと、贈った相手がインテリア小物のような使い方をしていただけるので邪魔にならないだろう、と。その人が好きそうな世界観の本を選ぶのはこちらも大変に楽しい作業ですし。あ、もちろん本のプレゼントを喜んでくれるという確信が持てる人だけですよ、ムヤミヤタラに贈っているわけじゃありません!

<2>は言うまでもなく応援理由です。もっとも説明しにくいのが<3>ですね。これは感覚的な理由で「いい!」と直感して買うものですので、言葉にするのは挑戦(大げさ)。

で、今回の約1万5千円分の本は、この理由の5つが微妙に重なり合ったセレクトでありました。

著者やテーマに着目してた本、巷で話題の本

例えば、お弁当本。

MAYAさんはInstagramの投稿から人気になって2017年に処女作『見た目は地味だがじつにウマい!作りたくなるお弁当』(KADOKAWA)を出版、今やお弁当研究家を名乗るまでに。著書もこの本を含めて6冊です。
もともとMAYAさんの処女作のファンでしたが、本書は、純粋に編集者的視点でチョイスしたもの。
なぜって、かがり綴じ本だったからんですよ。
これね、高いんです。料理しながら本を開いて読みながら作業したいのに開かなくて困る、と思ったことは一度や二度ではありませんよね。それは制作費をかければ簡単に解消できることなんですが、やりません。だって本が売れなかったら回収できない制作費なんですよ? しかも料理本は価格が安いので、そもそもが壮大な賭けとなる可能性大。ええ、本書も本体価格は1,300円、版元の利益は6割。そっかり制作費を引いて……って大丈夫か…
もし書店で見つけたらぜひ手にとって、カバーをめくってみてください。なるほどこれがかがり綴じ本かとわかると思います(普通は糊で背を固めて綴じてあります)。
これの購入理由は<5>が強めの<1>です。

次の『フライパンで3品同時に作れる魔法のレシピ 朝8分ほったらかし弁当』(世界文化社)は、最初はアマゾンの勝手チョイスで出てきて注目したもの。かつて『ホットプレート黄金レシピ2』(イカロス出版)を作った時、クッキングシートの使い勝手の良さは知っていました。が、そうか、これはお弁当のおかず作りに使えばもっと楽になるよね、という視点の新しさに注目していました。最近、著者さんとFacebookでお友達にもなったので、店頭で見つけたら買おうと思っていたもののひとつ。
魚焼きグリルにトースター、そして電子レンジと機器類をあれこれ使った調理が出尽くした後に、調理道具としてクッキングシートの登場。十分に目ウロコです。
購入理由は<1><2><3>です。

もうひとつの『六甲かもめ食堂の野菜が美味しいお弁当』(誠文堂新光社)は出版された当時から注目していて、いつか買おうと思っていながら書いそびれていた本。人気惣菜店の店主のレシピで、ちょっと暗めトーンの表紙カバーに上半分のグリーンとブルーのクロスが印象的で、内容が、というよりジャケ買いです。で、久しぶりに店頭で見つけて手にとって奥付をみたら、209年3月15日の発行から2020年4月1日で6刷になっている、と。ああ、これは、と。
購入理由は<3><1><5>です。

資料? 買っとく? と迷ったけれども名著だよ、な本

<5>の資料という意味では、こちらもそれに類します。

土井善晴さんの『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社)なんて、なんで今さら? 逆に持ってなかったんか? ですよね。そうなんですよ、持ってなかったんですよ。2016年10月の発売当時、書店にあれだけ山のように積まれていたのが逆に私の天の邪鬼スイッチを入れてしまったんです。でも、この本のおかげで世の中の食事の作り手、とくに古い世代の主婦層が「ほっとした」と思います。がんばらなくていいんだ、という強いメッセージを受け取ったはず。だから今でもこうして書店に置かれ、2020年7月25日発行で31刷にもなっているわけで。
あらためて、襟を正して読ませていただきます。
こちらは<5>。

『誰でも1回で味が決まるロジカル調理』(主婦の友社)も同様に、いつか買おうと思って買っていなかったものの典型的な本。一時期料理の世界でも「ロジカル」という言葉が流行りました。料理とは調理科学なのだから、理を押さえれば「誰でも1回で味が決まる」という、これまた強いメッセージ。
ただ、Instagramなどに代表される女性脳的な「世界観重視」の料理というより、いかに毎日間違いなくおいしい料理を作り出すか、ハウツーを教えてくれる本なので、ぱっと手にとってぱっと買う、という類の本ではありません。そこが「いつか」になる理由。素敵本に押されちゃうんですよねぇ…
でも、絶対に必要な知識がここには掲載されていて、そして著者の前田量子さんの情熱を本のあちこちから感じます。
こちらは<2><3><5>。

『みんなが選んだミニCookベストレシピ』(ワニブックス)とは、ほぼ<5>ですが、<3>も含みます。ま、これも編集者的視点のほうが強いかな。最近じゃんじゃん料理本を出しているワニブックスがかつて宝島社が得意としていた分野にも挑み始めたんだという確認。
もうひとつの『味付け黄金比率で基本の料理100』(オレンジページ)本誌から再構成したわかりやすさは、料理初心者はもちろん、考えて料理したくない人の手元にぜひと言いたいもの。同社の本は料理本編集の参考書としても欠かせません。
<5>ですが、少しばかり<3>も、という感じ。

著者ありきで購入を決めた本

そして次がこちら。

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『やせる!きれいになる!ベジたんスープ50』(小学館)は、今年5月に初版発行ですが、7月にすでに3刷という大人気本。これもアマゾンさんからのおすすめで知り、店頭で手にとったもの。A5判のきれいな本です。小学館の女性誌でも活躍しているという著者Atsushiさんのファンがたくさんいる(ヘア&メイクをつける料理家)のはもちろんですが、口コミしやすいワードがちりばめられています。流行りのスープという料理ジャンルに、「野菜(ベジ)」と「たんぱく質(たん)』をかけ合わせて「きれい」に「やせる」ためのレシピ提案、しかも10分以内、と。
私にもっとも遠い世界ですが「むくみ」解消ならやれるか?! てことで<1>と<5>。

『食通が足しげく通う店PAROLEのおかず帖』(KADOKAWA)は、いつか行ってみたいと思いながらもなかなか機会のないPAROLEのプロのレシピが美しいデザインでゆったりとまとまった本。もう80歳に近い著者なので、買っておかなきゃと思いながらも書いそびれていて、やっと実物に出会えました。予想通り、これは「しみじみおいしい」じゃなくて、「しみじみページをめくって味わう本」です。だから<3>。レシピ通り作るかどうかわからないけれど、あちこちに散りばめられた著者と会話するような文章を読みながら、おいしいもののことを考える料理本になりそう。

『手作り燻製ハンドブック』(世界文化社)は実はこれも書いそびれていたもののひとつ。著者と名刺交換をしたこともありますから応援です。燻製なので、夫が大変に喜びそうという理由もあります。だから<2>と<3>と<4>が微妙に入り混じっているんですが、知人の本という理由がいちばん大きいかもしれない。というのは、「手作り燻製」という本のテーマと装丁デザインがマッチしていないんですよ、残念なことに。著者の研究・開発で生まれた「こんなものも燻製に!」の驚きがすごいのに。

に対して、『へたキャンごはん なんなら全品ベランダでも楽しめますね〜!』(主婦の友社)は、タイトル通りの勢いのあるキャンプめしのレシピ集。今年の料理本界はYou Tuber料理家大旋風中ですが、本書もタレントでYou Tuberのじゅんいちダビッドソン。レシピは市販品にちょい足しも多いので気軽だし、がんばってキャンプめしやるほどじゃないって人にぴったり。いや、「なんならベンダでも」でやりたいぐらい。秋になったらやろっかなーと思えるハードルの低さがいい。これは夫にも見せてあげようってことで、<1>と<3>と<4>。

3秒で購入を決めた本

以上が約15,000円本の中身なんですが、あれー。こうして書き出してみると、私が心から「買う」ってなった本がないじゃんかー。脊髄反射的に手を伸ばした本はどれだ? 

て考えたら、こっちだ。

料理本じゃない。
これがタイトルにある「+1,980円」の本のこと。「人生を変えた本」というにはちょっと大げさだけれども、「こういう本」を料理本で作れたらなあと思わず熱望してしまうものです。翻訳本で、著者は本好きなデザイナー。仕事で付き合いのあったクライアントの本棚からピックアップした本の背表紙を描き、テーマに沿って選択しまとめて本の紹介をしつつ、世界の本屋さんや図書館の紹介もイラスト&文章まで盛り込んだ本のイラスト・ガイドブックです。
料理本は「キッチンで世界旅行」「料理の極意を教えます」「今日の晩ごはんは何にしよう」「幸せを呼ぶ魔法のお菓子」と「食べることは生きること」の5テーマで紹介されています。

といっても、紹介されている本は翻訳されていないの本も多数なので、日本人の私達にはほとんど役に立たない書籍ガイドブックです。が、まさに本というブツが好きな人にはたまらない一冊じゃないかと思います。
私自身が「これ!」てなったのは、イラストのかわいらしさ、色やデザインがどんぴしゃ好み、本というブツを通した思考の遊び、絵本のような楽しさ、装丁などなど、自由な視点で多彩に楽しめるんです。

本って読むだけじゃもったいないんですよね。とくに料理本はそうで。調理するためのレシピを知るならネットでいいという時代に、イラストの楽しさ、著者が選書した理由を探る楽しさ、書籍の資料本としての楽しさなどが重なり合っています。これならお札2枚出して買う理由があると思います。

それから、タイトルにある15,000円+1,980円の本以外にもこんなの買ってました。

著者は食マナーやプロデューサーとして活動していますが、子どもの頃から口に入れるものに強い興味を持ち続けた結果、「食の哲学」とでも言えるような境地を著したのが本書。
これ、MUJIの店頭で見つけたものですが、手にとって開いて「あ」となって。

見返しが折れた本 200815

見返しがぴーっちりときれいに折れて畳まれていたんです。こんな状態の本は普通返品扱いですが、返品されるぐらいなら私が買う! と妙な正義感を働かせてしまったのは元会社員編集者の性。こんなの返品されてもきても即廃棄です、廃棄。どこかの編集者が命かけて作った本がみすみす廃棄されるのを黙って見てるなんてできない! なんてね。
ただ、そもそも手に取った理由は、奥付。『うんこドリル』で最近も大ヒットを飛ばした文響社がこんな本も出していたんだ、あ、編集者はうんこドリルの人だ、ってなって巻頭を読み始めたのです。編集者自身がまえがきを書いていたから
読んでとても刺激になりました。買おうって思いました。編集者が熱い思いを寄せている本にハズレはないです。『志麻さんのプレミアムな作りおき』(ダイヤモンド社)もそうでしたから。
結果、洗脳されました著者に。「なんとなく」じゃなくて「ちゃんと」食べよう、と。「ちゃんと」の意味はぜひ読んでみてください。

***

そんなこんなで約1万5千円分+アルファをつぎ込んで買った本について書き連ねてきたけれども、なんだこの長さは。
お気づきの通り、「手に取る、買う」のいちばん大切な部分をほとんど書き込んでいません。書いたらこの倍になるのは間違いない。
とはいえ、それはCOOKBOOK LAB.で引き受けたいコンテンツなので、いずれちゃんとまとめていきます。その時まで覚えてるかなー? という不安はありますが、まあでもきっとなんかしら買った理由があるはずなんですよね。

ココまで読んでくさださった方に大感謝です。ありがとうございます。
料理本を読むという、多彩な楽しみ方がお伝えできたら幸いです。


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