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「こんなすごい技があるから本を出したい」と言う前に、考える「べき」こと

出版に関しての悩みや夢、企画等の相談をいろいろいただきます。
ご相談のジャンルはやはり料理関係が多いのですが、それでも各種ジャンルでお話しさせていただくことが多くなりました。
社員編集者時代ならともかく、フリーランスになってもご相談いただけるのは編集者冥利につきます。

一方で、本が売れない時代と言われながらも、やはり紙の本がいちばん、と思う方が多いということにも思いを新たにしています。

ただ、そこで気になるのは、企画の出発点が、

「こういう〇〇があるから本にしたい」
「こんなすごい人がいるから出したい」
「こんなすごい技をまとめたい」

というものがほとんどだということ。

私も本の企画を考える時は、「人始まり」や「料理始まり」でつい考えがちなので、本当によくわかります。
すごい、だから売れるよ! て考えたくなりますもん。

でも、これがいちばん駄目なパターンなんです。
もうもうもう、私は過去にこれでどれだけ失敗しているか!
そうじゃないよね、マーケットありきで作らなきゃ失敗するに決まってるじゃん! と、ある時点から気づいたにも関わらず、やっぱり「このすごい●●(人・物・技・エピソード)」のために本を作ろうとしちゃうんです。

違うのです。
いい加減気づけよ、自分、です。

やはり最初に考えるべきは、お金を出して買ってくれる人が欲していること、困っていること、愛してくれていることが何か、なんです。

「愛していること」というのは、一見主観的で論理的思考とは真逆ですが、けっこう強い欲求です。

嵐ファンの行動を考えれば納得ですよね、嵐が出ている雑誌なら全部買う、みたいなこと。

社員編集者時代にもありましたよ。
月刊誌の表紙がJALの嵐ジェットだったんです。
こんなマニア向け雑誌がええ。見事に数万部が瞬殺完売ですわ(驚異!)。
記者会見の記事から嵐ジェットに乗ったらこんなサービスが、この機体はこんな、CAはこんな、みたいな微に入り細を穿つ記事はうちだけですから、ファンには響いたみたいです。

もっと身近なところで考えてみましょうか。
例えば、「欲しいこと」「困っていること」の解決策としての企画。

わかりやすいところでは、最近のつくりおきがそうでしたね。
共働き家庭が増えて、毎日のごはんづくりが大変になったから「つくりおき」が流行ったわけだし、もっと楽でお金で解決できるならと家事代行サービスがブレイクし、「伝説の家政婦志麻さん」が生まれたわけです。

つまり、「この人の」と思うなら、「この人のスキル提供で困りごとが解決する人がどのくらいいて、そのうちの何人が買ってくれるか」を考えるべき、ということなのです。

マストです。

普段の会話で「〜すべき」という言葉はできるだけ使わないようにしていますが、今回は何度も使っちゃってますね。
だってもうこれだけは、変えようのない事実なんですもん。
ほんと、ソコ。

ただ、中には本当の天才、本当に優れた商品、優れたスキルによって自然に、何もしなくても売れちゃうものもあります。
だから「やってみなきゃわからない」とそこに賭けちゃうわけですが、たいてい失敗する。

後になって冷静に観察してみると、自然発生的に売れたように見えたとしても、当事者はなんらかの考えがあって実行しているし、圧倒的なスキルがあるし、圧倒的に心を揺さぶられる何か、または愛がある。

だからやっぱり理由なく売れてるわけじゃないんですよね。

と考えていくとですよ、手元のこれがあるから本にしよう、したいって考える前にさ、それは一旦おいておいて、他の視点を持って困りごと、助けて欲しいと思っている人をリサーチして、「ん? その困りごとを解決する魔法を持った人がここにいるよ!」、という道をたどるのが正解ってことになります。
そうしたらブレイク必至です!

ま、そんなもんが見つかれば世話ないよ、だけどさ。
だから常に広く高くアンテナ網を張り巡らせて、ただ次の企画を考えるです。
いっぱい人に会って、たくさん本を読んで、耳から目から、時には口(味)から触感からインプットを続けようと思います。

ありがとうございます。新しい本の購入に使わせていただきます。夢の本屋さんに向けてGO! GO!