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「バズ9割、料理家1割」が稼ぎ出す世界の先とは? noteトークイベント現地参加レポート

7月3日(日)の夜、note主催のトークイベント「こうして私は料理家になった」第2回に、なんと現地参加してきました。

ダメ元で応募したんですけどね、ラッキーなことに「参加権」をいただいてしまい、ホクホクしながら会場に向かいました……なんて平和な話ではぜんぜんなくて、直前まで鶏唐揚げを揚げていて、家を飛び出した時には予定の出発時刻をとうに回り、あまりにヤバさに青ざめながら到着した会場。
登壇者おふたりの紹介のさなかに席に滑り込むという、大変失礼極まりない始まりでした。本当に申し訳ありませんでした。

この人は本当に料理研究家?

そんな青ざめの中で始まったトーク。見上げれば、いつもYou Tubeで見ているリュウジさんご本人が目の前(ますます青ざめた)。

リュウジさん、ハイボールの氷をカラリとさせながら、司会進行を務めるスープ作家有賀薫さんの質問に、軽快にこたえていく。You Tubeで見せるしゃべりまんま。
ああ、本物もやっぱりリュウジさんだ、と妙な感心をしながらiPadを取り出してメモし始めたのですが、アップルペンシルを動かす手が止まらないんです。
しゃべりのすべてが、140字。
無駄のない言葉づかいで、言いたいことをテンポよくズバリと表現される。余計な間がないので、聞きやすい、耳残りしやすい。

ああ、これは料理研究家の先にいっちゃったな、完全に芸能人の域だなと思いながらも、要所要所で、リュウジ語録がポンポン飛び出すものですから、めちゃくちゃおもしろい。現場にいられた役得感を噛み締めました(遅刻したのにすいません)。

メモが止まらないリュウジ語録

今回のトークテーマは、「バズとマネタイズ」
その部分だけに絞っても、90分という時間枠では語りきれない様子がアリアリ。聞いてるこちらも、「もっと聞きたい、突っ込みたい」。「マネタイズの部分だけでも5時間ぐらいしゃべれる!」とリュウジさん。

いや、その前後にも、たくさんの貴重なお話があったんですよ。
でも、あまりにインパクトのあるお話だらけだったので、トークの大部分をはしょって、「バズ」と「マネタイズ」2点を中心に記載していこうと思います。後半には、記載しきれなかった「リュウジ語録」を書き留めておきますが、こっちも長文。
そのくらい充実内容なんですよ。
がんばって読んでください。

ほろ酔いなリュウジさん

バズを作る秘訣とは?

では、「バズ」るためにはどうしているかというと、
「空気を読むこと」
ときっぱり。
時代がどんな投稿を求めているかをしっかり読み取って、投稿する、と。

ただ、空気が読めるようになるためには、TwitterならTwitterに四六時中かじりつかないとわからない。そうして流れてくる投稿を見ていれば、どんな投稿がバズるのかが徐々にわかってくる。
時には、バズった投稿にのっかる(リュウジさんの言い方だと「バズにバズをのせる」)のも必要、と。
な、なるほど、空気を読む、か!

リュウジさんが最初にバズったのは、2017年3月28日にTwitterで投稿した「大根の唐揚げ」。
たった140字でレシピにするには、工程がシンプルで材料が3つか4つ以下、味が想像できるものしかバズらない、また数年前は「アクの強い言葉」で煽る投稿が受けたが飽きられるのも早く、今は違う。
今は画像に寄せたもの、レシピよりも料理の背景や知識といった部分に注目が集まる、と感じているとのこと。
おお、これは大ヒントではありませんか。

料理を広めたいという信念のためにバズらせる

そもそもリュウジさんがバズることにこだわるのは、
「料理することを広めたい」
という使命があるから。
「料理好きじゃない人」「料理が嫌いなのにしなきゃいけない人」に届くためにはバズる必要がある、そのためにどうしたらいいかを常に考えているという。そうした揺るぎない信念で発信を続けるからこそ、人の心を揺さぶるのでしょう。

またリュウジさんは言います。「バズが9割、料理家1割」とも。
「バズるだけなのはインフルエンサー、
僕は料理研究家としての1割の部分に込めている。
1割あれば、そこを見てくれる人が必ずいる」
レシピの実用的価値ではなく、リュウジさんという料理研究家の存在がますます唯一無二になる理由がそこにあるのだと思いました。

そんな料理研究家リュウジさんにとって、料理は表現の手段
「僕は表現者」と言い切ることに私は正直、意外に感じました。
例えば、レストランの料理人の中には唯一無二を求めてアーティスト的な道を進む人はいます。しかし、家庭料理を主戦場にする人では初めてそんな発言を聞いたような気がします。
「表現者」という言葉でリュウジさんへの印象が私の中でガラリと変わりました。

noteライブ。現地にいると大掛かりに行われているのがわかる

マネタイズはYou Tube、料理研究家の地位を上げたい

そんな表現者リュウジさんにとって、マネタイズの正体がYou Tubeであることが残念だと言います。なぜならばYou Tubeとは広告媒体だから。料理自体にお金が集まるのではないからと。
リュウジさんの告白によれば、雑誌とTV出演で得る出演料は、You Tubeのリュウジチャンネルで得る広告案件の1/100の金額だそうです。

これに関してはさらに苦言を呈します。
「TVや雑誌は依頼の時点で切り口(テーマ)が決まっていますが、僕が提出したものがテーマからあまりに逸脱しているならばわかりますが、そうではないのに『変えて』と言われることがある。これはひどいと思う。僕は僕の料理を否定されたらやらない。変えるならば2倍のギャラをくださいと、かなり初期の頃から言っています」

料理研究家を名乗りだした当初は、経験になるからと無料の仕事も引き受けたこともあったそうですが、「絶対にやらないで」と強く主張。ただでやってくださいと言ってくるような会社は、料理研究家の仕事を理解していないから、僕の経験が役に立つならすべて教えるから、地位向上を求めていきましょう、とも。

「僕は料理研究家の地位を上げたいんです。
技術に対してお金を払ってもらえる社会にしたいんです。
僕が稼いでいないと、料理研究家になり手がいなくなる」
と、危機感をつのらせます。

リュウジさんのこれまでの著書を読むと、決してただの料理好きお兄さんがお酒を飲みながら自由に料理してるのではないのだとはわかります。
まえがき、あとがき、途中のコラムなどの端々に感じます。
例えばこんな言葉も。

つまりこの本は、台所に立つすべての人の最強の味方なんです

『人生でいちばん美味しい!リュウジ式至高のレシピ』(ライツ社)

リュウジさんの著書については、少し前にこちらの記事でけっこう掘り下げました。この時の記事は半年も前に書いたものですが、トークイベントを体験した後でも、ポイントはハズしていないと思います。
読んでいただければ嬉しいです。

事前に取材して臨んだという司会進行の有賀薫さん

まだまだあるよ、読んでおいて!

その他リュウジさんのお話をざっくり記載しておきますね。正確な言葉ではありませんので、ぜひアーカイブで確認してください。リュウジさんの情熱をまるごと受け取っていただくのが一番かと思います。

アーカイブ(YouTube)はこちら

イベント告知記事はこちら


●ホテルマン時代、お客様には一言の情報を添えて料理を出していた。「これは10時間煮込んで…」といった道筋(ストーリー)を添えると注目度が高まるから。食べ手に「10時間の味」を探してもらえる、それが重要。

●レストランは3か月で辞めた。でも、仕組みを学ばせてもらった。すべてがマニュアル化されていてすごいと思った。マニュアルがあるからぶれない味、ぶれない店作りができていた。それがために「自分の料理」は作れないのだと悟った。

●料理人は一皿に魂を込めて作っている。看板商品と決めた味は決してぶらさない。毎日同じものを魂を込めて作り続ける。すごいと思う。僕にはできないことだ、だからめっちゃリスペクト。

●3年前にバズったとしても今はバズらない。今の空気を読む、それが大事。

●生活は変えていない。いや正直に言うと、年収300万円時代から比べたら600万円の生活にはなったと思う。けれどそこまで。生活者の目線を忘れてはいけない。スーパーでの毎日のリサーチが欠かせない。

●YouTuberとして何百万人×1円で稼いでいるようなもの。これだけが稼ぐ手段ではない。数十人に対する料理教室でやるのもいいと思う。

●You Tube、Twitterで(料理研究家を)いちばん見ているのは僕だと思う。いろいろな人がいるし、すごい料理だと思うことも多い。リスペクトしている。


会終了後の記念撮影。
左から、note株式会社の志村優衣さん、リュウジさん、有賀薫さん


以上が90分で語られた内容のほんの一部です。
最終的に、このトークイベントを視聴したオンライン参加者は1万3千人になったというから驚きます。関心の高さが伺われます。
それもSNS総フォロワー数約670万人という発信力と、リュウジさんの代名詞である「バス」を起こす仕組み、「マネタイズ」について本人の口から語られたという超弩級トピックスによるものでしょう。
稼いでる金額は間違いなく日本一だと思いますが、これほど耳目を集める料理研究家は、今、たぶんいないと思います。


とはいえ、リュウジさんが言うように、料理研究家の地位向上はぜひ果たしたいもの。
その発言には、司会進行を務めたスープ作家の有賀薫さんも大きく頷いていらっしゃいました。
未だ半身を出版業界に置いている身としてはめちゃくちゃ耳の痛いお話ではありましたが、でもね、言われても仕方がないかなという部分も。
構造的な問題も孕むので単純ではないのですが、でも、技術に対して対価を払うという当たり前のことを当たり前にしたいと私自身も強く思います。

次回開催は8月30日(火)!

さて、有賀薫さん司会の「こうして私は料理家になった」、次回は8月30日(火)に、印度カリー子さんを迎えての開催だまだまそうです。
noteイベントの発表を待ちましょう!

リュウジさんの最新刊(6月30日発売)


有賀薫さんの、料理レシピ本大賞2022エッセイ部門1次選考通過作品



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COOKBOOK LAB./綛谷久美(元編集長)
ありがとうございます。新しい本の購入に使わせていただきます。夢の本屋さんに向けてGO! GO!