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累計110万部を越えたリュウジお兄さんの本はなぜ売れるのか

料理本マニアの綛谷です。
リュウジ@料理のお兄さんの『リュウジ式至高のレシピ』の売れ行きが止まらないんです。
本書は2021年12月18日にCOOKBOOK LAB.とSNSで紹介しましてね、この時は5刷が決定したと版元のライツ社が伝えていたんですが、この記事を書くために確かめたら1月20日に6刷3万部増刷が決まったとありました。累計14万部。すごい。

本が売れているからか、SNSで見られているから本が売れるのか、どちらにしても1月末現在、You Tube登録者は262万人、Twitterフォロワーはもうすぐ205万人、Instagramも128万人越え。
著書累計も110万部を越えた模様。
アイドルの写真集でもカレンダーでもなく、料理レシピ書だというのにこの勢い。
リュウジさんの周りだけ出版不況はありません。

台所に立つ人へのエール

でもね、その理由もわかるんです。SNSを上手に使ってるということだけではなくて、とりわけこの『至高のレシピ』という本の魅力は、料理する人へのやさしい眼差しが詰まっていて思わず泣けちゃうんです。

本書をちゃんと読んでみるとですよ、実は料理についてはいろいろ言われている通り。「時短」や「簡単」「手順はできるだけ少なく」を徹底的に研究し尽くした上ではずせない工程を示し、塩分濃度は控えめでもおいしい、体にやさしいように配慮している他の料理研究家たちのレシピのほうが優れていると思うものも多いんです。
例えばリュウジお兄さん、本書ではけっこう鍋、フライパンを使います。こっちで焼いて、取り出して今度は鍋に移して、とか、こっちで茹でたやつを火入れ中のフライパンに入れて、とか。正直、「洗い物増えていいんですか」なレシピです。

それでも読者から絶大な信頼を寄せられている理由は、「台所に立つ人の最強の味方」として「いいんだよ」「大丈夫だよ」という目線が本全体にあふれているからだと思います。やさしいんですよ、この人。
料理の技術じゃないところにファンは反応しているんですですよね。
#ライツ #note #wrl

2018年デビュー、現在までに著書18冊

あらためて「料理のお兄さん」ことリュウジさんの足跡をおさらいしてみましょう。
(公式サイトはこちら
著者としてのデビュー作は2018年2月に出た『やみつきバズレシピ』(扶桑社)。

「バスレシピ」という言葉はリュウジさんの料理の代名詞となりました。また、本書はデビュー作にも関わらず「料理レシピ本大賞2018」でいきなり入賞。そこから快進撃が始まります。

翌年も、です。2019年1月に出た『クタクタでも速攻つくれる!バズレシピ 太らないおかず編』で「料理レシピ本大賞2019」に入賞。


さらに2019年11月に出た『リュウジ式 悪魔のレシピ』(ライツ社)では、「料理レシピ本大賞2020」でとうとう大賞を受賞します。

その勢いのまま、2020年は監修・レシピ提供を含めて5冊、2021年は『リュウジ式至高のレシピ』など5冊というハイスピードで出版していますので、レシピ本は16冊、監修・レシピ提供が2冊、漫画1冊というラインナップが揃いました。
版元だけで追ってみると、「バズレシピシリーズ」を出す扶桑社がいちばん多く、KADOKAWA3冊、ライツ社2冊、そして主婦の友社、宝島社、飛鳥新社と続きます。

読者の「ほしい」に徹底的に応じたレシピ集

今、私の手元には、リュウジさん本は7冊あります。
どれも「バズレシピ」「爆速」「面倒なし」といったキャッチーな言葉にあふれていることからもわかる通りの誌面。「今日食べたいものを今日作る!」がテーマであり、好きなものを好きな時に、作る人が大満足できる1人分レシピが提案されていますので、受け取る側がわかりやすい。
また、一人暮らしに配慮した「節約」やコンビニ、冷凍食品、インスタント食品、缶詰をレンジで作る、フライパンひとつで作るなど、「読者ターゲットは私?」感がすごい。

また、普段のYou Tubeで呑みながらラフに作る姿から想像される通り、「アルコール大好き人」が求めるしっかり味のレシピが多いので、家呑み需要はくまなくカバー。でもそんな中でも「低糖質レシピ」が紛れ込んでいたりします。
「失敗なし」や「太らない」「いちばんウマい」など、普段あまり料理をしない人でも「やってみようかな」と思えるキラーワードも多数使われ、それに応じたレシピが量産されています。

こうして表紙を並べてみると、全体に派手ですね。そしてリュウジさんという人は器用で、どんな求めにも応じようとするサービス精神にあふれた料理研究家なんだということがわかります。
言い換えれば、自分に求められるものがよくわかっていということ。最強のマーケッターだと言えるでしょう。

出版不況でもリュウジさんのレシピ本が売れる理由

You Tube、Instagram、Twitterといった現在の主流SNS、古くはブログなどから現れた料理研究家は多数います。
山本ゆりさんのように著書累計700万部とか、彼ごはんのSHIORIさんがオンライン料理教室で生徒さんもうすぐ1万人とか、もうおばけみたいな結果を出してる人たちもいます。
その一方で、著書を出せたけれど2冊目、3冊目と続かなかった人も少なくありません。フォロワーや登録者の数がないと出版社と話をすることもできないのが原状ですが、たとえ出版できたとしても、料理研究家として長く続けていけるかどうかはやはりファンの数だけではないようです。

「20万人も登録者がいるのに本は売れなかった」
そんな冷酷な判定を押されてしまうのが現実。

もちろん本が売れなかった理由は、料理研究家側の問題だけではありません。「これは明らかに編集が悪い」とか「ターゲットに応じたテーマが絞りきれていない」とか「書店営業や販促が足りない」といった版元側の事情や、「デザインが…画像が…文章が伝わりにくい」など、編集者や制作側の問題であるケースも多数見られます。
(私も編集者の端くれなのでめちゃくちゃそのあたりは敏感)

大事なことなのでもう一度言いますが、本が売れなかった理由は料理研究家のせいばかりではないです。
売れるかどうかは複合的な理由にかかってきます。

そん中でも、こんなにさまざまな版元や制作者と一緒にやっていても、どの本もきっちり結果を出しているリュウジさん。
もはやレシピではなく、彼のマーケティング能力から学ぶべきではないかと思っています。
大酔っぱらいしながら楽しそうに料理するリュウジさんの姿の後ろには、料理しようと台所に立つ人へのリスペクトがあります。そこを見誤っちゃいけないと思います。
リュウジさんが次に出すのはどんな本なのか、あるい他メディアなのかどうなのか。応援していきたいと思います。





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