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『れもん、よむもん!』と『ラビット病』 ~しゃにむに好きだったあのころの気持ち

子どものころ、学生のころ、しゃにむに何かが好きだった人。しかも、「一人で」する何かに傾倒していた人は、きっと胸を突かれるような本です。あのころ、なぜあんなに夢中になっていたのか? なぜ、やらずにはいられなかったのか‥‥。忘れかけていた蓋があくような。

思い起こせば、私はこう見えて(?)チームプレイも嫌いではなく、学生時代にはソフトボール部と飲食店のバイトにかなりのリソースを注ぎこんでいました。試合だけでなくヘビーなノックやボール回しも、皿やカトラリーが足りなくなるほどのピークタイムも、どこか快楽的な一体感・高揚感が得られるものでした。10年近く続けた会社員生活も時にそうだったかもしれない。
それらは同時に、貪るように本を読んだ時代でもありました。

この本は、筆者・はるな檸檬ちゃんのコミックエッセイ、読書メモリーズ編。

地方の進学校で早朝から夕方まで授業を受け美大受験のために絵画教室にも通うという、ハードだけど平凡な高校生活を送りながら村上龍や山田詠美を読んでいたことを

「どこかバランスを取る行為だったかもしれません」

と書いてあるのが、すごく腑に落ちました。

 ここではないどこか、自分ではない誰かのことを知りたい。
 世界にはもっと、なにか「本当のこと」がある。

 村上龍が書くような、
 山田詠美が、吉本ばななが書くような
 クールでヘビーな人生を送ることはないとしても、
 そっちの人生にも、きっと「本当の何か」がある
 
そんなふうに感じていた「若い人」の一人だった自分を思い出します。
 
そして、『ラビット病』!

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「いくらセクシーで大人っぽいエイミーの文章にオヨヨとなっても、奔放でわがまま、天涯孤独な日本人の女の子 “ ゆりちゃん ” と、愛情深い家庭で育った黒人の恋人 “ ロバート ” がひたすらイチャイチャする『ラビット病』が一番好きだった」

と書く筆者。
 
バチコーンと頭をはたかれた気分。
私も! 私もそうだった! 
高校生のとき。

なんだかんだいって、
ゆりちゃんロバちゃんみたいに
ふざけて、じゃれあって、背伸びせず、恥ずかしがらず
何もかもさらけ出して愛し合いたいと思ってた。

餃子を「みみ」と言ったり、
意味なく「すあま」や「ばれん」を可愛がったりするばかげた行為に付き合ってくれる人と一緒にいたいと。
すごく懐かしい‥‥。
何十回も読んだはずなのに、もうずっと長いこと、この本のことを忘れてた(でも、本棚にはちゃんとあった!)。
 
それは、
もしかしたら、
無意識のうちにそういう人を伴侶に選んで
一緒にいるのが当たり前になっていたからなのか???
まあ、もはやさほど愛し合っていないような気もするけど(笑)
それにしたって、
つきあってるころから、子がだいぶ育った現在に至るまで
夫に幼児語で話しかけ幼児的にふるまう自分‥‥
ゆりロバの影響が否めない‥‥!

机の上に置きっぱなしのこの本を手に取った息子9歳が
ぱらぱらとめくってあるページを見つけ
「これも、これも、これもうちにある。好きな本がいっぱいのってるから、買ったのか?」
と、たずねてきました。

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かーさんの蔵書をよくご存じで。
でも、筆者のことはまったく知らなかったし、完全にジャケ買いだったのよ。びっくり。
 
檸檬さんの絵と文章が本当にかわいくて、おかしくて、時にクールです。

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