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『大豆田とわ子と三人の元夫』9話 このドラマで初めてセクシーだと思った

「恋愛にはときめきのピークがあるからだよ。だから人は結婚して夫婦になる」

「離婚はめんどくさくて、めんどくさいはすべてに勝つから、夫婦をつなぎとめられる。恋人ならとっくに別れることを夫婦は何度も乗り越える、だから強くなる。ときめきが強さに変わる」

真理だ‥‥! このドラマの数ある名言の中でも指折りの真理だと感嘆した、無類の面倒くさがりの私であるw 

小鳥遊(オダギリジョー)は君を社長から引きずり降ろそうとしている、と言う、3番目の元夫、慎森(岡田将生)。

「それとこれとは別だから」という大豆田とわ子(松たか子)への慎森の断言は、このドラマで指折りの、忘れたくない名言だった。感動しちゃった。

「別じゃない。君は働いて恋をする人なんだから」
「人は働く、人は恋をする。働く君と恋をする君は、別の人じゃない。分けちゃダメなんだ」

働く自分と、恋をする自分。
働く自分と、母親である自分。
恋をする自分と、母親である自分。
線を引いて分けなきゃいけないような気がしてしまう。
ひとたび何か起これば、選ばなきゃいけないような気がする。
でもそうじゃないよね。分けようとするのは、一人の人間を引き裂こうとすること。

仕事とプライベートとをあまりにもキッパリくっきりと分けている小鳥遊が、どこか人格破綻しているように見えるのは、そういうことなんだろう。

でも、このドラマは小鳥遊を断罪はしない。大豆田とわ子は「仕方がない。指紋が合わないように、性格も違うから」と言う。二人は夜の路上で抱擁をかわし、女は男の頬にキスをする。そして別れる。
小鳥遊が10数年もの間ヤングケアラーとして孤独に過ごしたことは、視聴者だけに語られた。大豆田とわ子は知らないままだった。
*

7話の感想でこんなことを書いた。

「大豆田とわ子には「助けて」と言ってほしい」

この回、彼女はこう言った。
「一人はもう嫌なんだよ。限界なんだよ。誰かに頼りたい、守ってもらいたいんだよ」

言わせた慎森はエラい! 八作には無理だっただろう‥‥。てか、岡田将生ももう30代だけど、かわいさを更新してくるなあ~。「森の中で暮らす一匹のクマになりたい」の可愛さよ! 

小鳥遊のことは、「すてきだなと思える、一緒にいて安心できる人だった」と言う大豆田とわ子。
彼女にとってきっと、小鳥遊はときめきの相手だったし、頼れそうな人でもあった。網戸もなおしてくれたしw

それでも結婚しなかったのは、ときめきはあっても愛じゃなかったからかな。きっと、愛って、相手だけじゃなく、自分も好きでいられる状態なんだろうね。

「孤独を埋めてくれるのは、愛されることじゃない。愛することだよ」
とも慎森は言った。「君には愛する人がいる。僕のことじゃない、田中さんだよ」と。

そのときは、大豆田とわ子と一緒に「いやいやいや」と思った。慎森の勘違いでしょ、と。でも最後まで見て、そういうことだったのか‥‥と腑に落ちた気が。これは最終回の感想に詳しく書こうと思う。

*

「もしもあのまま夫婦だったら」と想像を膨らませる大豆田とわ子と田中八作。その長い空想シーンがとてもセクシーに見えて目を瞠った。

思えば、大人の美男美女で賑やかなこのドラマには、セックスの影がまったくなかった。

私はドラマの「セックスの匂わせ」には人一倍敏感で、抱き合って電気が消えるとか、同じベッドで朝を迎える(いわゆる “ 朝チュン ” w)みたいなわかりやすい描写がなくても、「今ここでセックスできる隙間あったよね!」とか、「あっ、この二人、CMの間にセックスしたね、関係性が微妙に変わった!!!」とか、そういう可能性を見逃さない能力を持っている。

(検定試験を作ってほしいくらいだw)
(このスキルは、主に朝ドラを真剣に見ると培われますw)
(詳しく知りたい人は言ってねw)

そんな私が断言しますが、「大豆田とわ子と三人の元夫」には、セックスが入る隙間が全然なかったです。

なのに、“ もしもふたりが夫婦だったら ” という空想シーンがセクシーだったのはなぜだろう? ケンカして仲直りしたり、入院したり、なんてことない夫婦の年月なのに。何なら、私も既婚者なのでああいう日々を送っている。そこにセクシーさは、あまりないw

あのシーンがセクシーだったのは、きっと空想だったからだろう。大豆田とわ子と田中八作にとって、かなわない夢だから。

今でもこの辺にかごめがいる気がするから、復縁はできない。3人でいるのに2人でセックスできないのはわかるよねw でも、「それでいいじゃない」と大豆田とわ子は言う。なんだか、しみじみよかった。あの空想シーンを経ると、復縁を選ばない二人が急に色っぽく見えた。

セクシーって、非日常だ。
でも、日常にもあるのかもしれない。
セックスする・しないにかかわらず。
そう思う。

*
しょーりんさんのことにも触れなければ!
仕事ができる社長・大豆田とわ子に代わって社長になろうとするのが、女性であるしょーりんさんだった。
彼女はちょっとキツい性格だけど、大豆田とわ子と同様に有能な女性で、野心もあり、そしてやはり会社と社員を深く愛しているし、社員に信頼もされている。
その設定と描写がすばらしかった。こういうのが「今」のドラマだよ~。

高橋メアリージュン、好演! 綺麗でおしゃれなだけじゃなくて、なかなかガタイがいいところが、迫力があってすごく良かった。
長くなったので最終回の感想は別で~。


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