インタビュー: コミュニケーションを磨けば、未来と自分を変えられます ~ 「オトコマエ製作所」 鯨井道子 さん
◆ 外見は内面のいちばん外側
―――「オトコマエ製作所」ってユニークなお名前ですね。どんなことをされるのでしょうか?
パートナーが欲しいと思っていらっしゃる男性を対象にしたコンサルティングです。婚活に向けたスタイルチェンジを提案し、伴走しています。
―――スタイルチェンジというと、ルックスですか?
そうですね、見た目も大切です。たとえば結婚相談所に登録されている場合、第一印象はプロフィール写真で決まりますよね。しかも、人は第一印象を3秒で判断すると言われています。
―――確かに、「この人は無理」というのは、頭で考えるより先に一瞬で判断するかもしれません。
そうでしょ。でも、男性ってね、勉強したり資格を取ったりして収入を上げるための投資はできても、「見た目を磨きましょう」というと腰が引けてしまう方が少なくないんです。ですから、心を解きほぐすようなお話から入ることが多いですね。
―――どうやって心を解きほぐすのか、気になります!
お客様によってケースバイケースですが、私は基本的に、外見って内面のいちばん外側だと思っているんです。年を重ねれば重ねるほど、お顔立ちや表情にその方の内面が表れます。
だとしたら、相手に見せるルックスを作っていくのは、自分を知ってもらうためのコミュニケーションのひとつじゃないかしら。そういう非言語のコミュニケーションって、とても大切だと思います。
そんなお話をしたりしますね。
◆ 自信をもって優しさを表現して
―――大手エステサロンの会社に長年お勤めだったとうかがいました。お客様もスタッフも女性中心の世界ですよね。
はい。なので、男性にはちょっと苦手意識がありました。しかも、私は割とがさつな人間で‥‥
―――え? そうなんですか?
実は、そうなんです(笑)。
―――すごく意外です! とても落ち着いて柔らかな印象なので‥‥
よく言われます、第一印象とのギャップがあるって(笑)。
逆にいえば、ルックスは自分が見せたい姿に整えることができるんですよね。それもおもしろいところです。
―――ギャップは魅力にもつながりますよね。すみません、話がそれました(笑)。
いえいえ。
エステ会社に勤めていたころは、同性同士、気兼ねなくストレートな物言いで通じることが多かったんです。でも、男性は違いますね。
―――男性にはプライドもあるだろうし‥‥。
ええ。その裏返しで、とてもデリケート。しっかり寄り添ってさしあげることが大切だとわかりました。
―――婚活中の男性に、どんなアドバイスをされていますか?
女性が結婚相手に何を求めるかは人それぞれだけれど、“ 優しさ ” ってみんなが求めるんじゃないかな?
その点、結婚相談所に登録されている男性は、真面目で優しい方が多くてすばらしいんですが、問題は、その優しさが相手に伝わるかどうか。
―――といいますと?
行動で示さなければ、女性は「この人は私を思ってくれているのかな?」と思ってしまうんです。行動といってもちょっと気を利かせるだけでいいんですよ。私はよく「気は遣うものじゃなくて利かせるもの」と言うんですが。
たとえば、カフェに入るとき、お店のドアを開けて押さえていてくれるとか、席に着いたら「どうぞ」とメニューを渡してくれるとか。
特に、まだ何度かしか会っていない間柄の場合、小さな思いやりを感じるだけで、お相手はホッとしますよね。
―――確かに! ただ、なかなかそういうことをできない男性も多いように思います。恥ずかしいんでしょうか?
そうですね、自信がある方は、自分からどんどんアクションできるというのはあるようですねぇ。
―――自信をつけるにはどうしたらいいんでしょう。
誰かに感謝されるとか褒められるとか、自分でも「ちょっと変わったな」と感じること。それが最初の一歩になります。
ご自身でそれを経験することが大切ですね。その一歩目をサポートするのが私の仕事です。
時には、「ちょっと失礼します」と言って、その場でパパッと髪の分け目を変えたり、ラフに整えて差し上げることもありますよ。実力行使(笑)。それだけでずいぶん印象が変わるんです。iphoneで撮ってお見せすると、ご自分でも「おっ」と思われるみたい(笑)。
―――最初の一歩って、そんな小さなことだったりするんですね。
髪型や身に着けるもので気持ちが変わるのは男性も同じなんですね。不愛想だった方も、お買い物に同行して、眼鏡を変え、髪型を変え、お洋服を買って‥‥ そうやっていつもと違う自分に出会うにつれ、だんだん表情が明るくなって、別れ際には「じゃあまた」なんて手を振ってくださったりします。とてもうれしい瞬間です。
◆ 人生を変えるお手伝い
―――TBCにはどれくらいお勤めだったんですか?
25年です。
―――25年! す、すごい!
勤めているときはそんな感覚はまったくありませんでしたが、みなさん驚かれますね(笑)。フリーになって、人材育成にかかわるお仕事のご依頼をたくさんいただくようになり、25年の価値を実感するようになりました。
―――ということは、TBCにお勤めのときから人材育成を?
店長、それから本社でマネジメントをしていました。
「人の人生は変わる」「私たちが変えてあげられる」と心から思っていましたね。
お客様の髪型が変わり、髪の色が変わり、メイクや服装が変わって、どんどん綺麗になっていく様子を目の当たりにする仕事ですから。
―――想像するだけで胸がときめきます。
社員も同じです。消極的だった社員がいきいきと楽しそうにお客様に接するようになる姿をたくさん見てきました。
コンプレックスがなくなり、目標をもつと、人って本当に輝くんですね。
―――そういう意味では、男性も同じでしょうか?
男性も同じですよ! 「オトコマエ製作所」でコンサルティングを始めて、男性が変わっていく姿に感動しています。
髪型を変える、外見を整える、相手を思う気持ちを表現する‥‥そうすることで、結婚相談所に登録してもなかなか「会う」ところまでいかなかったお客様が、女性と会えるようになるんです。
「結婚が決まりました」と報告をいただいたときは、涙が出るくらいうれしいですね。
―――まさに「人生を変える」お手伝いですね。
◆ 誠実に、そしてニュートラルに
―――長年、人の人生を変えるほどのお仕事をしてこられていますね。人とのかかわり方で大切にしていることはありますか?
「誠実に、そしてニュートラルに」ということです。
一生懸命になりすぎて私の自我を押しつけないように。お相手を追い込みすぎたり、依存させてしまったりすると、お互いに不幸になります。適切な距離感をもって、尊重し合いながらかかわることが大切ですね。
―――もしかして、過去に苦い経験がおありですか?
鬱になったことがあります。人間関係も原因のひとつでした。自律神経が乱れて眠れなくなり、何か月か家からまったく出られませんでした。
―――そうだったんですね。どのように回復していかれたのでしょうか?
まず、見守ってくれる人がいたこと。タイミングを見て、お仕事をくださる人がいたこと。そして、セッションを受けて、「過去にとらわれるのではなく、一歩踏み出して現状を変えよう」と思えるようになったこと。
―――いろいろな人に助けられたんですね。
そのとおりです。人は人に傷つき、人に癒されるんですね。
コーチングやカウンセリングに関心を深めていったのもそのころからです。
日本ではまだまだネガティブなイメージもあると思いますが、治療費が高い海外では、“未病”を防ぐために日ごろからいろいろなことが習慣づいています。ジムで体を鍛えたり、サプリメントを摂取したり。カウンセリングもそのひとつなんです。
―――では、今も習慣的にセッションを受けられているんですか?
はい。もう10年近くになりますね。特に悩みがなくても、1~2か月に一度予約をとって受けています。
―――悩みがなくても?
ええ。他愛ない話のようでも、その空間で今の気持ちを吐き出すことで解放されるんです。語ることで、自分の思考のチューニングになるんですよ。その時間をもてたから、鬱から前に踏み出すまでの時間も短縮できたのだと思っています。
◆ 男性だって時には「つらい」と言っていい
今回の仕事を始めてから、あらためてコーチングの勉強をしています。
―――これまですでにたくさんの時間と費用を費やしてこられたのに、あらためてお勉強を?
男性のお客様と向き合うためでもありますが、そもそも学びに終わりはないですね。茶道や華道と同じように、ずっと続く「道」なのだと思います。自分にとっての「道」に出会えたのが私の幸せですね。
―――終わりのない道なんですね‥‥。その情熱の源は何なのでしょうか?
やっぱり、ご縁があってかかわる方たちに、常に「よかった」と思っていただきたいからですね。私自身がセッションに救われてきたので。
今は婚活をされている方がメインですが、ゆくゆくは、外見を整えるような非言語コミュニケーションから、心のチューニングまで、どんな方にもサービスをご提供できるようになるのが夢ですね。
今後、こういったことは、男性にもスキルアップのひとつとして定着していくんじゃないでしょうか。
―――男性向けの化粧品やエステもたくさんありますものね。
ええ。それに、「男だから弱音を吐いちゃいけない」というような時代じゃないと思うんです。男性だって、「強くなければ」と中途半端に肩ひじ張らずに、つらい、苦しいと言える場所があってもいいんじゃないかしら。
―――とても共感します!
苦労がない人はいませんよね。誰もがいろんなことを抱えながら生きている。時には胸にたまったものを言葉にして、ふっと楽になっていただきたいですね。それは思考のチューニングのために必要なプロセスでもありますから。
男性も、そうやって素直な自分と向き合うことで、本当の意味で強く魅力的になれるんじゃないでしょうか。
◆ 「今よりちょっとマシな自分」をめざして一歩目を
「過去と他人は変えられない、変えられるのは未来と自分」という言葉があります。心理統計学を学んだときのテキストに書いてあった言葉です。いいなと思ってずっと覚えています。
―――きっと、誰にでも、いくつになってもあてはまることですね。
でも、大人になると、変わることって、とても大変に思えてしまいますよね。自分の習慣の中で生きているほうが楽。
―――「今さら変われるんだろうか?」と不安や疑念もあるし、変わることに対する恐れもあると思います。
そうですよね。だから、急に別人になろうとしなくてもいい。「今よりちょっとマシになる」くらいのイメージで始めていただければと思います。
―――わ、なんか急に軽くなりました。
そうでしょう? 最初の一歩がいちばん大変。一歩目、二歩目を踏み出せたら、変化していく自分が楽しくなって、どんどん進んでいける人が多いんですよ。
―――変化を楽しむ! そこまでいけたら最高ですね。
今は自分に自信がない方も大丈夫! 私もポンコツな人生歩んできましたから(笑)。
―――えっ、ポンコツ! ほんとですか?!(笑)
本当ですよ~(笑)。
―――鯨井さんもそうなんですね。ちょっとホッとしました(笑)。
それはよかった。どうぞ安心してご相談くださいね。
いろんな経験をして、この年になったから、わかることやお話できることがたくさんあります。若いころのポンコツネタを、今は世のため人のために役立てていますね(笑)。
―――過去がどうであれ、「未来と自分は変えられる」ですね!
そのとおりです!
ちょっと髪型を変えるだけで見え方が変わり、ちょっと言葉遣いを変えるだけで余裕がもてるようになる。小さな積み重ねでゴールに近づいていきます。
いっしょに一歩目を踏み出していきましょう!
(おわり。)
◆編集後記
35歳以上の男性が大変身! こんなうれしいサービスがあるのですね。
「人は変われます」。美容の世界でたくさんの人を見てきた鯨井さんの言葉には確信がこもっています。人の痛みや苦しみがわかる方でもあります。そして、突然「ポンコツ」のような言葉で笑わせてくれるお茶目な面も。
インタビューを通じて、なんだか癒されるのと同時に、「私も変わりたい! 変われる!」と明るい気分になりました。
(イノウエ エミ)
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