見出し画像

「光る君へ」メモ 第9回「遠くの国」それはきっと「友の死」

うそでしょ直秀ぇぇぇ

門脇麦、神木隆之介、柳楽優弥、長澤まさみ(×2回)中村獅童、古くは赤井英和、柳葉敏郎や宮沢りえなどなど、数多くのライジングスターが大河ドラマで演じてきた“オリジナルキャラ道”に則って、ご都合主義的もとい気随気儘・神出鬼没に終盤まで物語をかき乱すトリックスターになるんじゃなかったの―――?!
「平清盛」の兎丸(加藤浩次)だって39話まで生きてたぞ!
毎熊克哉が売れっ子すぎて、7話分しかスケジュールを確保できなかったのか‥‥

と、思わず逃避しちゃうほどびっくり。

道長にとってターニングポイントになったよね。
直秀が貴族、とりわけ右大臣家をあからさまに嫌っていても、道長は彼が好きだった。盗人であっても極悪人ではないとも確信していたから救いたかった。

「心づけを渡しただけだ」とまひろに言ったときの得意げな様子。右大臣家のボンが金さえ握らせれば、下級役人は言うことを聞くと思っていたわけだよね。その浅はかさ。

流罪にするのは面倒だけど金は欲しいし実際もらってしまったから、流罪にしたふりをしなければならない。
‥‥という条件下で、役人は「しょせん下賤の者たち、姿が消えても誰も気づかないし困らないだろう」と判断した。

普段からそれくらいのチョロまかしは珍しくなさそうだし、あの役人の慇懃無礼な態度からして、お貴族様に対してもともと反感があったのかも、とも思う。東三条殿で捕縛されたとき「若君がそんなに大事か、おまえらも貴族どもに見下されているじゃないか」と直秀が言ったように、下級役人に面従腹背の者がいてもおかしくない。
「面従」をやめるのは難しいから、「腹背」として役人は直秀たちを殺して捨てたというわけ。身分の低い者がさらに身分の低い者を殺す。ブルーハーツだよね。昔のロックバンドは抵抗精神を歌ってたものだよ。

貴族を嫌い信用せず、身体能力も高く、何より、鳥かごを出て自由に生きるはずだった直秀が、鳥辺野に入るまで役人のことは大して疑いもせず、怒りはもちろん、恐怖すら映し出されることなく、縄につながれたまま声もなく死んでいったのが悲しすぎて。
彼の無念を伝えるのは土を握った手だけ‥‥

直秀たちのあっけない死と、病床の兼家の手厚い看護との差がエグいよね。でもこの差は、いま私たちが生きる現実社会そのものでもあるよね。

慟哭する道長に比べ、まひろのリアクションはちょっと違った。取り乱したり道長に事情を問い詰めたりしなかった。
まひろにとっては二度目だったのもあるかも。
平安時代は、350年だか死罪がなかったといわれている。
(ちなみに350年ぶりに死罪になったのが信西で、『平清盛』では阿部サダヲが演じた)

でも、それはお貴族様や行政手続きの話で、身分の低い者はこうやってたやすく殺されていたのだ。記録にも残らない。まひろは母の一件でそのことを知っていたのだ。
あのときの下手人は道兼、つまり権力者に連なる者だった。まひろは道兼を激しく憎み、父にも反抗したが、長じるにつれて父のやるせなさも理解するようになった。

今回は手を下したのは下級役人。道長はむしろ彼らを救おうとしていた。
だからその後、父の「おまえが男であったなら」をまひろは初めて肯定する。
「男だったら勉学に励んで内裏に入り、世を正します」

そこにはやっぱり怒りがあるんだと思う。道兼がとか右大臣家がとかを超えて、この世、つまり社会のシステムがおかしいのだ、本来正すべきなんだという、静かな確固たる怒り。

‥‥と、まひろは主人公らしくまっすぐに覚醒したわけだが、この事件を経て道長がどうなるのかはまだわからない。
なんたって、直秀の件と並行して、父兼家の陰謀を描いているからね。

そうです、あそこであっさり死ぬ兼家じゃありません。
「これより力の全てをかけて、帝を玉座から引きずり下ろし奉る(キリッ)」
どんな決めゼリフだよ😂

でも、これが権力者ってもんなんだよね。
権力の座を手にするためなら、同僚も子どもたちも騙して何日でも昏睡する演技をし続け、帝を陥れるのも辞さない。
「武者も親兄弟も信じられない」と自嘲し、銭ひと握りで何とかなると思ってる青二才とは覚悟と執念、周到さ、何もかもが違いすぎるの。もちろん全然良くないことやってんだけどね。

「父上すごい」と打ち震えて信奉する道隆、自傷までして愛や自己効力感を求める道兼、父のパワーに呆気にとられる詮子、そして道長。
子どもたち全員の未熟さ(言い換えれば真人間さ)があらわになる回だった。

それにしてもだよ、まひろと道長の濃厚な婚外関係に期待してるとはいったけど、平安大河でこんなハードモードなんて聞いてないやん。

ふたりの間に死の霧が立ち込めている。
道長とまひろにとって、直秀がどんな存在だったかというと結局は「友」というのがしっくりくるのであって、ふたりの初めての共同作業が友の亡骸の埋葬だなんて、そんなん誰が予想しようかー

鳥辺野の土がどんなに柔らかかろうが、大の大人を埋葬できるだけの穴を手で掘るのは難儀なはずで、まあファンタジーな描写なわけだが、夜が明けて日が昇ってくる中、汗だくで作業する演出は胸にきた。
最後は穴に埋めるというより、土をかぶせて覆うような感じになってたよね。

物語の始め、怒りを知らないのんびり三男坊として登場した道長が、あんなにも顔を歪めて泣き叫び、帰路は涙も枯れ言葉も失ったようだった。
いずれ父をしのぐ巨大な権力を手にして藤原北家の全盛期を築く道長にとって、これはひとつのターニングポイントになるのだろうな‥‥
と思って見てたら、予告、予告ー!!!


・親(ちやは)の死、友の死‥‥「おんな城主直虎」やん! まひろと道長≒おとわと政次やん! 

・直秀は、龍(柳楽優弥)かと思いきや、亀(三浦春馬)ポジションだったということか‥‥!

・あっちは戦国、こっちは平安のはずなのにー!とはいうものの、平安時代って、いうて古代なんだよね。荒々しい時代なんよ。

・てか、毎熊さん、去年の大河も獄門エンドじゃなかった?だったよね?
・穆子の嫉妬ネタまで続いている驚き。衛門の反応を見るに、左大臣とチョメチョメ(番組が違うw)してるっぽい相手は別の侍女ってこと?

・安倍晴明と兼家がソウルメイトすぎる。

・まひろと道長、それぞれの従者もこのままいくとソウルメイトになるな。

・「道長様」「三郎でよい」「もう三郎とはもう呼べないわ」
 「送っていく」
 「無用です。土御門殿の近くで誰かに見られたら何を言われるかわからない」
 「何を言われるというのだ」

・↑このときはまだ平和だったよぉ(ノД`)・゜・。

2024.3.5 wrote


この記事が参加している募集

テレビドラマ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?