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「光る君へ」メモ 第8回「招かれざる者」あきらめながら大人になって

今回は特に、史実(ネタバレ)を知っている人と知らない人では見方がずいぶん違う回だったかなと。以下、いちおネタバレ回避で。

道長からの熱烈な恋文を焼き捨てて、思いを断ち切った(つもりの)まひろ。人は何かをあきらめることで大人への階段をのぼっていくんだなあ、と思わせるシーンがいくつかあった。

たとえばそれは、「父上は学問を究め、学問で身を立てたいだけ」「まつりごとでの争いは父上には似合わない」と、父親を的確に理解し、いたわりある態度をとる姿。

道兼の来訪にみずから琵琶を弾き、母のことを尋ねられても色をなさなかった。「道兼を許すことはないが、あの男に気持ちを振り回されるのは嫌」大人の言動だと思う。
大人でもこれができないこと、けっこうありますよね。

代筆屋に始まり、ビルドゥングスロマン的なおもしろみも続いていて、今回は赤染衛門のセリフがすごく良かったですよね。
「人妻であろうとも、心の中はおのれだけのものですもの。
そういう自在さがあればこそ、人はいきいきと生きられるのです」
このときちゃんと、驚いたような表情をしているまひろを映すのが良い
女は身分が高くても低くても男に翻弄されるものとばかり思っていたけれど、そんなふうに主体性をもつこともできるんだ‥‥と、瞠目したような表情。

直秀とのやりとりも、先々まで心に残るシーンになりそう。
「都のおえら方はここが一番だとふんぞり返っているが、しょせん都は山に囲まれた鳥籠だ」
何の保障もない暮らしだが、どこででも自由に生きていける直秀。
まひろの固定観念に風穴を空ける存在だ。

このようにいろいろな人と出会い、いろいろな価値観に触れながら年齢を重ね、そのすべてが源氏物語に結実していくわけだよねー!

それにしても
「おまえも一緒に来るか?」と少し緊張した面持ちで聞き、まひろが思わず「行っちゃおうかな‥‥」と言ったにもかかわらず「行かねぇよな」と微笑する直秀ー! 少女マンガのキャラすぎる。

直秀、このやりとりの前に「人はいずれ別れるさだめだ。驚くことはない」と言っていた。定住しない人生を送ってきたと思われる彼、その経験から得た人生観なのだろう。

道長との「別れ」を選んだ痛みを抱えたまひろには、これも目からウロコの感覚だったかもしれない。けれど、別れを当然として生きてきたはずの直秀の「行かねぇよな」と微笑する横顔は、かすかな痛みも孕んでいるようで‥‥


・確かに前回、打毬のときの衛門は、ふだんの落ち着きからは意外なくらいはしゃいでいたのが印象的だった。細かい脚本演出。

・衛門が直秀にときめいてたってことは、直秀はふつうにイケメン設定ってことでOKですね! 「直秀かっけーな」と思いながら見てるのは私たち(たち?)だけじゃないってことですね?

・左大臣が衛門と二人で話した内容をポロッとこぼし、正妻の穆子が顔をしかめるシーンも細かい。夫が正妻の侍女とねんごろになることがあると示唆してる。

・「穆子」って「むつこ」と読むんですね。難読‥‥

・倫子の「道長にポーッ」顔、再び。本当にマンガのような「ポーッ」顔でほれぼれする。

・てか道長。詮子も兼家も倫子と結婚させるつもりで、当の倫子も乗り気で、ほとんど完全に外堀埋まっとるな。

・父に忯子の物の怪がとり憑いているのを怖れて大きな壺を撫でまわしている道隆。新興宗教が売りつける壺を思わせる、おもしろい描写だったw

・「地獄に落ちるな、右大臣は」 道兼の腕の傷を見て顔を歪め、吐き捨てる花山天皇がまともに見えてきますね。インモラルなセックスがお好きと見える花山さんですが、双方の合意があればそれは“プレイ”なので。

・「おれは本当に父上の子なのかな」弟の惟規がなにげに言ったセリフが妙に気になった。そんな設定織り込んでるの? “不義の子”は源氏物語を貫く罪‥‥

・次回予告、手をつないで走る道長・まひろ二人の絵が伊勢物語ー!きゅんー!

2024.3.2 wrote


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