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『飛ぶ教室』 エーリヒ・ケストナー

12月になりましたね。クリスマスの前後にぴったりの本です。贈り物にも。
媚びず、見くびらず、上から目線でもない、少年少女のための本当の物語です🎄

ケストナーの小説には、親を亡くした子や捨てられた子、貧しい子が頻出します。この「飛ぶ教室」もそう。その境遇は子どもにとって、笑い飛ばしたり、簡単にバネにできるものではない。ケストナーは彼らの悲しみや、生きることの厳しさを描きます。

「子どもの涙がおとなの涙よりちいさいなんてことはない」というのが彼の持論。ここが本当に大切なところだと思うのです。この子たちの親に近い年齢の私は、読みながら何度も涙します。

それでも、子どもたちには生命力がある。そして、貧しかったりそうでなかったり、体の大きい子も小さい子も、それぞれに凹凸を抱えていても、子どもたちは一緒に育つことができるし友だちにもなれる。そのことを、ケストナーは心から信じているのだと思います。だから、全体のトーンは明るく、生命力や冒険心、ユーモアにあふれています。

第二次大戦のころにドイツで大変人気のあった作家です。精神の自由を重んじた作風は、むろんナチスに敵視されました。つまり、それだけすばらしいことを書いています。

この本にも、いくつもの警句があります。

『平和をみだすことがなされたら、それをした者だけでなく、止めなかった者にも責任はある』
『ぼくがこれから言うことを、よくよく心にとめておいてほしい。
 かしこさを ともなわない勇気は乱暴でしかないし、勇気をともなわないかしこさは、屁のようなものなんだよ!』

『世界の歴史には、かしこくない人びとが勇気をもち、かしこい人びとが臆病だった時代がいくらでもあった。これはただしいことではなかった。
 勇気ある人びとがかしこく、かしこい人びとが勇気をもつようになってはじめて、人類も進歩したなと実感されるだろう。』

ドイツ版の『君たちはどう生きるか』といってもいいかと。以下、私が別ブログに書いた感想です。

本当に同じころに書かれているんだよね。ケストナーも、『君たちは…』の吉野源三郎も、台頭する全体主義に強い危機感を持ち、作品に反映していた。作品は当時から多くの人に読まれた。

それでも戦争は止められなかった、これが私たちが得ている教訓だと思っています。

寄宿学校にやってくる、涙と笑いのクリスマス。子どもだけでなく大人も読みたい本です🎄

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