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建設テックのトレンド予測2024

こんにちは。フォトラクションの中島です。

2022年後半に建設テックの未来について上梓したこともあり、最近はあまり考える機会がなかったのですが、1年経ったこともありますしトレンド予測でもしていきたいと思います。

建設業に何かしら関わる方であればわかると思いますが、建設テックは大いに盛り上がっている状況です。

2023年もたくさんのサービスがリリースされたことに加えて、2024年問題や人材不足、資材高騰などもあり生産性向上の機運はますます高まっています。建設テック市場は年次30%以上のペースで成長するという予測もあるぐらいです。

昨年末にビッグサイトで行われた建設DX展に私も現地に足を運び、ほぼすべてのブースを見て回りましたが「昔からサービス提供している企業のブースが増えた」「新しいスタートアップが多く出店している」「新サービスを投入した企業がたくさんある」といった印象を受けました。

建設業の方々は、何を選べば良いのかわからない状況かと思います。トレンドを予測するということは、現状を正しく理解することでもあり、選ぶ側も参考になる記事になっていると思いますので、ぜひ最後までご覧ください。


予測① ニッチ領域のサービス化

建設テックと言っても細分化すると様々です。これは建設業と一言で言っても多種多様な業種や業態が存在するためです。

大規模建築を生業とするゼネコンと、戸建中心の工務店とでは文化も業務の内容は異なります。業種業態の中でもさらに業務も多岐にわたるため、課題もそれぞれです。

サービス内容 = 業種業態 × 課題

例)
・大量の写真をクラウドで簡単に管理できるサービス = ゼネコン × 写真管理に手間がかかる
・協力会社の進捗を確認できるサービス = 工務店 × 協力会社が多くて工事の管理が煩雑

近年では施工管理SaaSが多くリリースされていますが、これもゼネコン向けなのか、専門工事会社向けなのか、工務店向けなのかで内容は異なります。

サービスを提供する側は広く受け入れられて欲しいので「建設業向け」「建設DXサービス」などと表現しますが、実態は特定の業種業態がメインターゲットになっていることは多いです。施工管理には多くの課題があるため、複合的な機能を有したサービスになりSaaSとして展開されています。

そのため、スタートアップなどの新しい会社は、既に存在しているサービスのように見えても業種や課題をずらしてリリースしてくることが予想されます。

例えばですが、同じ写真管理でも業種業態はゼネコン、専門工事会社、内装業者、工務店、プラント、etc…と広がりを持たせることが可能です。マーケットサイズは限定されますが、事業して大きなスケールを考えなければ十分継続するぐらいは問題ないぐらいの大きさはあると思います。

一方で既にグロースフェーズに入ったサービスは、対象となる業種業態に対してどれぐらい課題解決の範囲を広げられるかを考え、新サービスや新機能をリリースしオールインワンソリューションへと進化していくのではないでしょうか。

去年から「業種業態×課題」の細分化が加速し、ニッチ領域のサービス化は増えてきており、2024年はさらに多様になっていくのではないかと予想されます。

予測② 中小企業向け建設ERPの再編が活発化

ERPとは、「Enterprise Resource Planning」の略称で、企業が保有する「ヒト・モノ・カネ・情報」などの資源を、一元的に管理するシステムのことを示します。

建設業だと原価管理や財務会計、営業管理などもこれにあたります。本来は現場管理も含まれるべきかもしれませんが、様々な理由により建設ERPと施工管理SaaSは適切な距離をおいて展開されてきました。

加えて関わる人も自社より協力会社の方が多いこともあり、建設業向けERPパッケージを完全に使いこなせている企業はそれほど多くないのではと思います。

そういった中で、ERPの要素をアンバンドル(分離)させて単機能でクラウド・モバイルに特化させて提供するサービスも増えてきました。

特に原価管理、見積、受発注といったカネに関する業務は、建設業特有の課題が多々あるため、日本だけではなくグローバルでも増えています。

既存の建設ERPパッケージの市場も隠れて大きいことから、今後はアンバンドル化したサービスへの部分リプレイスが始まるとともに、施工管理SaaSとの統合が進んでいく可能性もあります。

クラウドやモバイルへのシフトが大手ゼネコン中心に広がってきた中で、中小企業向けの建設ERPは遅れてきたものの、今後は活性化し更なるビッグマーケットになっていくことが予想されます。

スタートアップ含め、どの企業が何をリリースするのか、そしてそれらのサービスがどのようなポジションを得て統廃合していくのかは注目です。

予測③ 建設生産データベースの整備が本格的に始まる

2013年ごろから建設業ではiPadなどのスマートデバイスの普及が大きく進む中で、各社クラウドへの移行を進めてきました。

その勢いもあって、施工管理を中心にSaaSが躍進し、建設テックもBIM以来の盛り上がりを見せることになりました。

多くのSaaSがリリースし導入が促進される中で、建設業もサービスベンダーも複数の機能を連携させることにより、さらなる生産性向上を考え始めます。

連携にはAPIと呼ばれる仕組みが活用され、簡単に実施できる前提のもと進みますが、これが思ったよりもコストがかかることがわかってきました。

API自体は当然ながら開発する必要がありますし、接続する側も接続のための開発が必要となります。運用もAPIの仕様が変わるごとに追従しなければいけません。

グローバルでどのような企業にも使われるSaaSであればまだしも、国内かつ建設業に特化したSaaSは事前にAPIを用意しておいて勝手に連携してもらうといったことは発生しません。

その結果、個社対応が必要となりクリティカルな部分だけAPIを開発して連携するといったSIerよりの形態が主流です。他業界のことはわかりませんが、建設業以外でも業界特化型、いわゆるVertical SaaSは似たような状況になっているのではないでしょうか(国内に絞るとHorizotal SaaSも同じなような気はしています)。

そこで、次に起こり得るのが建設生産データベースの整備です。建物は多く要素で成り立っていることから、どのようにデジタル化するのかといった基準が割と曖昧のまま進んでいます。

例えば名刺管理ソフトであれば、名刺という情報は「名前」「住所」「メールアドレス」など、どこが開発してもある程度は同じデータ構造になるかと思います。

しかし、建設業の場合は付加情報も多くあり、実現したいことに合わせてデータ管理をするのが実情です。そのため開発者によって正解がそれぞれあるという状況で進んでいます。

例)写真管理において考慮すべきデータ

BIMは設計データベースとして推進されてきましたが、これの生産版のイメージです。建設生産データベースの標準化がある程度進んでいくと、API連携が今よりも簡単にはなります。それ以上にサービスを開発する工数も下がり今以上に、建設テックのサービスが生まれ産業の課題が解決されていくのではないでしょうか。

このあたり説明すると長くなるため、データベース化が進んだ時のメリットはぜひ私の著書を読んでみてください(宣伝失礼)。

他業界でも実例がなく私の言語化不足もあり、データベースのイメージを伝えられず悩んでいたのですが、恐らく似たようなことをHRの業界で実現されようとしているサービスが出てきたのでご紹介しておきます。

あとがき

2024年問題がスタートする年ということで、建設テックは今後ますます重要視されることが予想できます。

トレンドとしては幅広いサービスが出てくると予想できますが、建設業の皆様は選定が大変になるかと思います。とは言え、クラウドが中心となってきた中で、ミニマムで導入するのであれば失敗しても損失は最小限に抑えられます。

ぜひ、多くのサービスを見て試し、失敗もしながら建設テック市場を成長させるお気持ちで取り組んでいただけると、より良いサービスが益々生まれて行き、産業も潤っていくのではないでしょうか。

フォトラクションも引き続き建設テックを牽引できるよう頑張っていきたいと思います。本記事に少しでも興味を持っていただき、中島と話してみたいという方はお気軽にX(Twitter)でご連絡ください(全員に返信は難しいため予めご了承ください)。

また、全方面で積極採用中です。中島はいいけどフォトラクションに興味あるよという方は、ぜひご応募いただけると嬉しいです。

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