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マラドーナとガヤ芸人。

リモートワーク19日目。

一般の学生から政治家、ミュージシャンまで、これまでいろんなジャンルの人々を取材してきたけれど、インタビューというのは何度やってみても難しい。

いろんなタイプのインタビュイーがいると思うけれど、僕の場合はアドリブ的なインタビューがとても苦手で、事前の準備の段階をとても大事にしている。

準備には、テーマの設計(どんなメディアで、何を語って欲しいか整理する)、リサーチ(最初にざっくりとネット検索。ウィキペディアとかね。その後、ブログや作品など、本人が発信した文章を読む)、質問事項の設定(話の流れがどう進むが予想できないから、できるだけたくさんのパターンを用意しておく)、イメージ(頭の中で自分が取材対象者と話している姿をイメージする)というお決まりのパターンがあるのだけど、特に大事にしているのは「リサーチの深度」。

今は著名人じゃなくともSNSなどで自分自身を発信している人が多いし、他の誰かのSNS上にその人が紹介されていることも多い。これだけ情報が多い中であまりに詳しくリサーチしすぎると、本人に会う前から「知った気分」になってしまう。おまけに僕は職業柄、散らばった情報を自分なりに分析してある一定の方向性に「編集」するのが癖で、そうなるとどうしたって「…ということですが、それは…だからですよね?」というような、決めつけ型のインタビューになりがちなのだ。

するとたいていの場合、話の展開が窮屈になり、自由な広がりがなくなって、尻すぼみのつまらないインタビューになるのだ。そこで大事になるのが、基本的な情報を事前に知った上で、なるべく「分析をしない」ということと、当日、自分の脳に対してどれだけ「知らないふり」をできるか、の2つポイントだ。

分析しないのは、前述した通り「決めつけ」を避けるため。インタビューでのやりとりの文脈の中に「僕」はいらない。知りたいのは、僕ではなく相手の言葉なのだから。ただし、基本的な情報は知っておく。相手に対する尊敬という意味ももちろんあるけれど、「ああ、なるほど、あのことですね」と適切に相槌をうって、相手がすべて詳細に説明しなくても言いたいことだけをスムーズに話せるようにするためだ。

知らないふりをするのは、話を聞いた時に、できるだけ自然なリアクションをするため。すでに知っていることでも相手が大切にしていることは、できるだけ初めて聞くことのように聞く。「そうなんですね!面白い!」。ベタだけど、それが一番会話を盛り上げるのだ。けれど、実はこれが難しい。小さい子供が誕生日プレゼントを用意していることがどれだけバレバレだったとしても、どれだけうまく驚くことができるか。「ちょっと待ってくださいよー!」という、合いの手上手な売れっ子ガヤ芸人の佇まい。つまり、そんな感じだ。あくまでも、主役は相手なのである。

大事にしている「リサーチの深度」というのは、「情報の深さ」のことじゃなくて、自分の中での事前情報の消化率の話なのである。

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あと、最後にもうひとつ。その立場において、自分自身が曲がりなりにも「プロフェッショナル」であると自覚すること。大御所だったり、自分が大好きな相手だったりするとどうしたって気後れしてしまうものだけれど、それは相手に対して、とても失礼なことだと思う。相手がその職業のプロであるのと同じように、僕らもそこにいる以上「ファン」ではなくて、「取材のプロフェッショナル」なのだから。

ああ、マラドーナに会いたい。

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